2018年7月16日と9月24日、ツインリンクもてぎの南コースでホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催された。いつもの動態確認テストはレーサーなどが多かったが、今回は20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックメイキングなモデルが走行を披露。本稿では自転車イメージのミニバイクとして大成功した「ロードパル(1976)」を紹介する。
ソフィア・ローレンのCM「ラッタッタ」で大ブームに
1958年のスーパーカブC100で原付バイクの決定版を打ち出したホンダであったが、1970年代になるとその効果も一巡し、軽自動車の普及や暴走族の問題、高校生への3ない運動が兆しを見せるなど、2輪市場への不安要素が影を落とすようになっていた。そこで、1972年に2輪車の新たな需要を開拓する企画がスタートし、翌年、NC(ニューサイクル)計画が発動した。この時ターゲットになったのが、主婦層を中心とする女性ユーザー。1972年、女性の免許証保有比率が20%近くもありながら、10人に1人も2輪に乗っていない状況から、女性をターゲットに開発されたシャリイが大きな成果を収めたことから、さらにそれを推し進めることがテーマとなっていた。
NC計画で打ち出されたのは「自転車イメージのバイク」で、従来のカブの変形にはない新たなシンプルで軽量な二輪車を追求。「バイクのとっつきにくいイメージを排除した、軽快で親近感が持てる乗りもの。自転車に乗れる人なら誰でも生活の足として手軽に扱える、操作性と取りまわし性に優れた、社会に役立つ乗りもの」というコンセプトを具現化し、1976年2月にロードパルは発売された。これには、ホンダで初めて営業部門が初期段階からチームに加わって製品イメージの構築や販促活動に取り組んでおり、大胆にもハリウッドでも活躍していたイタリアの女優、ソフィア・ローレンを起用したCMが放送されることになった。CM内で「ラッタッタ」と歌われるフレーズから、ラッタッタ=スクーターを含むファミリーバイクの代名詞にもなり、ロードパルの成功に大きく貢献したのだ。
女性を取り込み市場は急拡大、HY戦争に進展
ロードパルは、当時5万9800円という低価格で発売するために、初年度12万台、翌年は36万台という販売計画が策定された。その計画通り、女性ユーザーという新しい需要の開拓によって、2輪車の国内市場は飛躍的に拡大。1976年の2輪車市場は前年の113万台から130万台へ躍進した。さらに、ライバルのヤマハも’77年にパッソルを発売。女性をターゲットにしたステップスルーの利便性に加え、ファッション性の高いスクータースタイルが脚光を浴び、自転車の延長線上にある実用本位のロードパルに対抗するようになってきたのだ。このようにホンダとヤマハからほぼ同時期に新しいコンセプトを打ち出した女性向けの新製品が出揃うことにより、’77年には162万台、’78年には198万台へと2輪車市場は50㏄が牽引役となって急成長。この爆発的ブームのシェア争いがHY戦争(’79年~’83年)に進展していったのだ。
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