マシン・オブ・ザ・イヤー2018
ホンダコレクションホール20周年特集④

ホンダ初代スーパーカブC100が走行、インプレッションも収録

2018年7月16日、ツインリンクもてぎの南コースでホンダコレクションホール開館20周年記念イベントが開催された。いつもの動態確認テストはレーサーなどが多かったが、今回は20周年記念ということで市販製品特別走行が実施され、ホンダの黎明期から現在までのエポックメイキングなモデルが走行を披露した。

生産累計1億台、60周年の原点モデル

初代スーパーカブはホンダ創業の本田宗一郎氏と藤澤武夫氏が直接開発の先頭に立ったモデル。それに続く東南アジアのドリーム、WAVEなどを含む歴代スーパーカブシリーズは創業者の目指した「人々の生活に役立つ喜びの提供」とうい製品コンセプトを受け継ぎ、幅広い年齢層に使い勝手の良いモビリティを目指して、誕生以来60年に渡り時代や地域ごとの要望を取り込み成長した。スーパーカブはそのブレない本質を堅持しながらも進化を続け、2017年10月に世界生産累計1億台に達したのだ。

1956年、本田氏と藤澤氏の二人は、多くの人達に気軽に乗ってもらえる新しい商品の構想を念頭に欧州にリサーチに向かった。欧州の街角での二人の会話は「これか? これなのか?」と問う本田氏に対して「違う、違うこんなじゃない」と否定する藤澤氏。あちこち見て回った挙句に「どこにもないじゃないか」という本田氏に対して、藤澤氏は「ないから作ってくれと言っているんじゃないか」と返す。当時の社報ではそれから創造、クリエイトの世界に入ってようやく実を結んだとある。

左は当時欧州の街角で見られた思われるモペッドの画像。右はそれらの中でスーパーカブのヒントになったであろう個別の要素。これらは新型スーパーカブC125の製品説明会で使われた資料で、現在の開発チームが改めて初代スーパーカブC100をリサーチした時に作成したものだ。

パッケージングこそスーパーカブのオリジナリティ

では、初代スーパーカブでのクリエイトとは何か? 60年後の今、新型スーパーカブC125の開発チームは「車体パッケージング」と結論付けた。ライダー、燃料タンク、エンジンなどの重量物を車体中心付近にほぼ縦一列に集中配列することで得れらる軽快な車体取り回し性。17インチタイヤによる荒れた路面でも安定した操縦性能。高さを抑えたエンジンによる低重心とそれを搭載するスペース効率に優れた低床バックボーンフレーム。これによる乗り降りしやすさや雨風や泥はねによる乗員への影響を軽減するレッグシールドなどの優れた居住性、クラッチ操作を不要としたミッションなどによるイージーオペレーション、高性能で信頼性と経済性に優れた4ストロークエンジンの採用など。

これらが無駄なく組み合わされたことで、モーターサイクルのような機動性とスクーターのような乗り降りしやすさを兼ね備えた、つまり運動性能と扱いやすさの双方を高度にバランスさせたホンダオリジナルの車体パッケージングが完成した。これこそがこれまで誰も超えられていない技術者、本田宗一郎氏=スーパーカブの独創だと言う。

【HONDA スーパーカブC100(右) 1958年製】左は、現在のホンダ開発者がその精神を新たに紐解いて開発したスーパーカブC125だ。本田宗一郎氏は創業期より世界一でなければ日本一とは言えない」という信念の下「世界的視野」で物作りに取り組むと繰り返し述べていた。それが未踏の生産1億台に結びついたと言えよう。■空冷4ストローク単気筒OHV 49cc 4.5ps/9500rpm 車重55kg(乾燥重量)

【インプレッション】初代は小柄だが野性的

カブF型の6年後、‘58年に登場したのが初代スーパーカブ・C100型だ。「100」と言っても排気量は49ccで、これは当時のホンダ車の型番が、100番台=50cc、90番台=125cc、70番台=250ccを指していたゆえの命名方法(後に変更)。スカートでも乗れる底床フレームに大型のレッグシールド、自動遠心クラッチにより右手だけで操縦可能な操作系など、今に繋がるカブの基本構造は、そのほぼ全てがC100で採用されたものだ。試乗したのは‘60年式。エンジンは空冷のOHVで、‘58年の初期型ならアルミ製のシリンダーヘッドが鉄製となるなど、各部に若干の仕様変更を経たモデル。やはり数分程度の試乗だったが、印象的なのはこぢんまりとしたライポジと野太いサウンドだ。

シートとハンドルの距離が以降のモデルより近く、グリップやレバーも細身のC100はまたがると小柄で華奢(車重も以降のモデルより約15kg軽い)。しかしエンジンを始動すると、改造モンキーにも通じるような、けっこう元気な排気音を発するのだ。キュルキュルというかドゥルドゥルというか、OHC車とは異なるメカノイズも特徴的。小柄だが中々ワイルドで、英語で「猛獣の子供」を意味するCUBとは言い得て妙、などと感じ入ってしまう。ライポジを除けば、C100の操縦感覚はスーパーカブそのものだ。現行カブとさほど変わらぬ感覚で扱えるこのバイクが、カブF型から6年後の製品とはにわかには信じ難い。数値だけなら最高出力は4.5psと、現行型カブ50の3.7psを大きく上回るのだ。とはいえ、排気が2サイクルのように白煙混じりなのはご愛嬌。これは排気バルブにシールを持たない構造ゆえで、後のOHC車では改良されている。 ※テスター:マツ(ヤングマシン)

レッグシールドから車体後部へ繋がるS字ライン、タイヤに被る前後のサイクルフェンダーなど、普遍的なカブスタイルはここで確立。初期の尾灯は「ワシ鼻」と呼ばれる形状。速度計は100km/hまで(公称最高速度は70km/h)。

※次回のホンダコレクションホール開館20周年記念 市販製品特別走行は9月24日に実施される。
取材協力:本田技研工業/ホンダモーターサイクルジャパン
撮影:長谷川徹/真弓悟史/編集部

いち

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本誌編集長。雑誌は生き残りタイアップ全盛期だというのに、ひとり次期型ネタを嗅ぎまわって反感を買う現代のスクープ魔王。
■1972年生まれ
■愛車:BMW R100GS(1988)

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