YM最新50cc研究

ホンダ製2018新型JOG(ジョグ) vs ヤマハ製JOG比較インプレッション

9代目となるヤマハ・ジョグの’18モデルは、なんとかつてのライバルであるホンダがOEM供給することに! 新旧でどう違うか比べてみた。 ※ヤングマシン2018年10月号(8月24日発売)より

完熟文化の50ccに決定的な違いはなかった

’16年10月に突如発表され世間をアッと驚かせたヤマハとホンダの業務提携。その内容は、今後ヤマハの原付一種スクーターをホンダがOEM供給するというものだった。それに基づいていよいよ登場したのが’18年型ヤマハ・ジョグというわけ。ちなみに新ジョグはホンダ・タクトがベースとなっており、生産もホンダ熊本工場。台湾ヤマハで生産されてきた従来型ジョグから価格的には約4000円ほどリーズナブルになった。今回は、この新旧ジョグを一緒に並べてチェック。違いはどこか探してみた。ま、結論から言うと50 ㏄スクーターとしての使い勝手は、ほぼ互角。長い年月をかけて50㏄文化は築かれてきただけあって、完成度はホンダ・ヤマハとメーカー間の垣根を超えた域に達している。その手軽さは不変のものだった。

【YAMAHA JOG 2018年型国内仕様 価格:16万7400円(デラックス:18万360円)】ホンダが生産するヤマハ・ジョグ。ベースはホンダのタクトでヘッドライトカバー、フロントカバー、メーターの文字盤以外は、ほぼ共通。タクトにはアイドリングストップ機構なしの廉価版となるベーシックも設定され、そちらがジョグではSTDに相当する。
【YAMAHA JOG DELUXE 2017年型国内仕様 価格:18万4680円(STD:17万1720円)】従来のヤマハ生産ジョグ。写真はキャストホイールにディスクブレーキを装備したデラックス。

ヤマハとホンダの業務提携で実現

ホンダがヤマハに原付一種をOEM供給することになった背景には、もはや縮小する一方の原付一種国内市場の現状にある。販売台数は約198万台あった1980年に比べ、2017年は17万6000台と10分の1。さらにご存じのように50㏄は日本特有のカテゴリーとなってしまい世界的には110~125㏄が主流。もはや50㏄を作るのは厳しいが、免許制度もあり完全に無くすのも厳しい。互いに苦肉の策の業務提携なのだ。新ジョグのエンジンにはホンダの刻印も。

フロント部分にはしっかりジョグらしいデザインを継承した新型(左)。一方、エンジンの刻印は”HONDA”のままという潔さで、無用にコストを上昇させない気遣いが見て取れる。
写真はSTDの新ジョグ。スラントノーズのフロントカバーやシャープな灯火類など、デザインはしっかり“ジョグ”に仕上がっている。テールまわりなどはタクトと共通だ。705mmの低シート高と約6㎏軽い車重でひと回り小さく感じるが、全長自体は1cm減となる。
テールまわりの丸さ感が特徴的な先代ジョグ。このモデルからジョグは4ストとなった。写真はディスクブレーキ装備の上級仕様デラックスだ。この旧デラックスと旧STDのシート高は725mmと同じで、他に低シート高700mmのプチも存在する。いずれも店頭在庫がまだ購入可能。

【インプレッション】日常域で軽快さを増した新ジョグ

エンジンはどちらもマイルドながら加速も十分で、2スト時代のベーシックスクーターと似た感触で乗れる。パワーや特性は同じエンジンと思えるくらい似ていた。クローズドで最高速も試してみたが、どちらもリミッターストップが効く60㎞/hまでしっかりと出る。新型は車重が5~6kgほど軽くなっているのと、タイヤのトレッドが90サイズから80サイズへと細身になっているので、乗り出しの軽快感がやや勝る印象。逆に速度を上げていくと、旧型の方が若干安定した感じを受ける。新型の方が全長は10㎜短いがホイールベースとしては逆に20mm伸びており、そこでバランスを取っているという感じだ。旧デラックスはディスクブレーキとなるが、新型の前後連動ドラムブレーキも制動力としては遜色なく、思いのほかよく止まるのには驚いた。

足つき性は、シート高が約20mmほど低い新型の方が跨った瞬間こそやや小ぶりな印象を受けるが、ホイールベースでは伸びているので、走り出すと違いは外見ほど感じない。足着き性についてもどちらも踵までべったりだ。旧型はオプションのサイドスタンド装着用ステーが用意されていたが、新型にはないのがちょっと残念なところだ。

どちらも、もたつかず鋭すぎずで、流れの速い幹線道路でなければチョイ乗りするのに十分な性能。旧型でもかなり軽快だが、比べてみると新型はより軽さを感じる。新型にディスクブレーキ車の設定はないが、ドラムブレーキでもしっかり効いてくれた。
※[ ]内はJOGデラックス、( )内はタクトベーシック。

【YM倉庫発掘団】あの頃はアツかった! JOG & DJ・1 & Dio

ヤマハ・ジョグと言えば、50㏄スクーターの覇権をホンダと争い第2次HY戦争とまで言われた人気車種。中年以下のライダーでは、ジョグかその対抗馬としてホンダが投入したDJ・1、もしくはDioのどれかにお世話になった割合が高いだろう。この入り口からヤマハ派、ホンダ派(もちろんスズキ派も、ここでは割愛)に分かれるなんてケースもよくあった。だが、それも昔。今では50㏄スクーターの灯を消さないために2つのメーカーが協力する時代なのだ。

スクーターレース全盛期の’87年。鈴鹿サーキットでは197台が争う2時間耐久などが盛大に行われ、原付少年たちを楽しませてくれた。
HY戦争が終結直後に登場したのが初代ジョグ(右、’83年)。Fフェンダー一体型のポップなイメージとカラーリングで若い世代の人気を集めた。2年後ホンダが対抗馬として出したDJ・1(左、’85年)の車名は「Disc Jockey」などが由来とされたが「打倒ジョグ」の略だという都市伝説も囁かれた。
ホンダはDJ・1に代わる若者向け機種として、タクトで好評を得たメットイン機能を搭載したDio(左、’88年)を発売。瞬く間にヒットとなる。ジョグもメットイン機能を採用した3代目(右、’89年)を投入。初代では4.5㎰だった出力も6.8㎰にアップしており、以後この2機種は切磋琢磨を続けていく。
4代目の時期は自主規制いっぱいの7.2㎰を出すスーパージョグZRなども登場。DioもスーパーDio、ライブDioへと進化していき、やはり7.2㎰のZXなどが発売されて賑やかだった。写真は右が’91年のジョグ、左が’94年のDio。
21世紀に入り、Dioは’01から4スト化(左)。ジョグは2ストのままリモコンキー装備のCV50型となり路線が分かれたが、従来型となる’07のCE50型(右)から4ストとなった。また生産も’03から台湾ヤマハで行われるようになっていた。

ニュース提供:ヤングマシン2018年10月号(8月24日発売)
撮影:長谷川徹
文:宮田健一