‘75年に登場した初代GL1000以来、累計で79万5000台が販売されたホンダの最上級モデル・ゴールドウイング。40年以上変わらぬそのコンセプトは「バイクの王様」という、非常にシンプルでわかりやすいものだった。しかし、先の東京モーターショーで発表された6代目はそのコンセプトを大幅に見直している。新型ゴールドウイングはいかなる変化を遂げたのか、開発者の声を基に、注目点を3回に分けてお伝えしよう。
さらなる“重厚長大化”の否定
従来までのゴールドウイングは、初代から先代となる5代目まで、モデルチェンジのたびに排気量を上げ装備を充実させる、「より大きく豪華に」という進化を辿ってきた。6代目となる新型はこの路線と決別し“軽量コンパクト化”という、歴代ゴールドウイングでも初となるテーマを掲げていることが特徴だ。豪華さや巨体が生む立派さが「扱いにくさ」や「退屈さ」につながっていないか……という自問の末、走りの質感は保ちつつも、よりスポーティな走行性能やイージーな取り回し性を追求すべきと方向性を定め、それらを獲得するための手段として、車体の小型軽量化を追求しているのだ。
とはいえ、そもそも歴代ゴールドウイングは豪華さや快適さを求めて進化してきただけに、6代目の方向性には当初迷いもあったという。しかし、メイン市場のアメリカでユーザー調査を行うと、5代目(‘01年発売) 開発当時に感じていた「デカくて豪華」を美徳とする彼らの価値観が変化し、取り回しの厳しさや重量の重さに不満があることもわかってきた。開発責任者の中西豊さんは「私たちがイメージしていた『大きくて豪華がいい!』というゴールドウイング像が、ちょっと違うんだな……と感じるようになった」と語る。現ユーザーの年齢層が上昇し、若いユーザーを取り込んでいくためにも、より純粋なバイクの魅力、スポーティさ強調する必要性もあったという。
その一例がウインドプロテクションだ。従来路線なら完璧な防風性能を追求しただろうが、「それならクルマに乗ればいい。バイクなのだから、気持ちいい風の当て方があるはずだ」と考え方を変えた。小さく軽くといっても剥ぎ取ってチープにするのではない。快適さや上質さはキープしつつ、クルマの領域に差し掛かっていた?快適さを、バイクの魅力側に引き戻したと言えばいいだろうか。重量も従来モデル比で41kg(新型エアバッグDCT車と従来型エアバッグ車の比較)も削減されている。
しかしゴールドウイング唯一無二の特徴・水平対向6気筒というエンジンレイアウトは踏襲されている。これも4気筒化など、小型軽量化を目的に様々な案が検討されたというが、フラット6の上質極まる回転感は他に代えがたい魅力だという判断だ。また、軽量化が最重要項目なのだから、車体や駆動系により高い強度(=重量)が必要な大排気量化はありえない。2→4バルブとし、ユニカムの採用などエンジンを完全新設計しながら排気量とエンジンレイアウトを引き継いだのは、このような考え方によるものだ。
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