東京モーターショー出品車紹介

Z900RS続編・詳細取材レポート

伝説の名車900スーパーフォア=Z1を現代の技術で再現したZ900RSが、東京モーターショーでついに正式発表! 日本のファンのみならず、世界中が注目している期待の1台。みんな気になっていた、その姿をここに紹介しよう。

カワサキのZ900RS、ついに正式発表!

ヤングマシン本誌でも永らくスクープし続けてきたカワサキZ900RS。いよいよその全貌が明らかになった。コンセプトとしては、Z1をモチーフにカワサキらしい風格と美しさ・質感を持つデザイン、そしてそのクラシカルなデザインと最新テクノロジーのクロスオーバー、徹底的にこだわったエキゾーストサウンド、リラックスライポジでコントローラブルな乗り味、Zのある生活をより濃密にする純正アパレルやアクセサリなど、走るだけでなく所有する喜びまで含めた「五感で楽しめるモーターサイクル」を目指している……と、文字で並べるとちょっと長い欲張り設定? でも、実車を前にすると、ただ乗って走るだけでなく、本当になんだか自分のバイクライフまで変えてくれそうな魅力にあふれている。

そのこだわり抜いた姿は「Timeless」=時代を超えて価値を共有できるデザイン、「High Quality」=材質・質感に対する徹底的なこだわり、「Functional Beauty」=機能美の3つがキーワード。誰もがZ1と分かるスタイルに、現代的なLEDの灯火類、細部に至るまで高い質感を誇るパーツなどが組み合わされて実現した。ライポジは長距離ランもこなすリラックス系を基本としつつ、ここ一番のスポーツ走行にも対応する絶妙な設定となっている。フレームは、鋼管トレリスタイプでZ900RS専用に設計されたものだ。国内では火の玉カラーのキャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジとメタリックスパークブラック(写真下)の2色設定となっている。
「Timeless」の最たるものがZ1を彷彿とさせるティアドロップ型の燃料タンク。実はシート下まで伸びており容量17Lを確保しているが、外見からはまったくそうとは気づかせない。表面処理の美しさにもこだわり、火の玉カラーは水転写デカールにより表面の凹凸も減らすなど、非常に滑らかな手触りを実現したという。
伝統のスタイルと現代の技術を融合させた丸型LEDヘッドライト。ユニットはφ170mmでレンズ内部は6室に分かれており4室がロービーム、2室がハイビームとなる。ハイビーム室にあるポジションランプがハイビーム消灯時でも常にヘッドライト全体が点灯して見えるように設置されている。
やはりZ1をイメージさせるテールカウルと楕円型テールランプ。多数のLEDをドット的に点灯させるのではなく、ひとつの大光量LEDバルブを面発光させて、レトロな雰囲気と被視認性を確保している。ウインカーも前後LED。シートレールには荷掛けフックも用意されている。
砲弾型ケースに収められたメーターはレトロな雰囲気にこだわったアナログタイプのスピード&タコメーターを採用する。しかし、その間には最新のデジタルディスプレイを搭載。国内仕様はETC2.0車載器を標準装備とし、そのインジケーターもメーター内にビルトインされている。
エンジンはストリートファイター系のZ900をベースとする948ccの水冷4ストDOHC4バルブ並列4気筒。シリンダーには新たにフィンが彫られ、Zらしさを演出。FIスロットルボディはダウンドラフトタイプを使用し、吸気エアファンネルやエアクリーナーもZ900RS専用となっている。最高出力は111ps/8500rpm、最大トルクは10.0kg-m/6500rpmを発揮。これに2モードのKTRC=カワサキ・トラクション・コントロールや、アシスト&スリッパークラッチといった現代的装備も備わっている。
質感にこだわったメガホンタイプのステンレス鋼製ショートタイプマフラーは、エキパイからサイレンサーまですべてバフ仕上げ。外観を崩す排気デバイスやエキパイ部のバイパスを廃すことで外観の美しさにも徹底的にこだわっている。また、カワサキ初となる排気系のサウンドチューニングを実施。低く厚みのある迫力サウンドも実現させた。なお、開発中は2本出しや4本出しマフラーも検討されていた模様。最終的には軽さを優先して1本出しに決まったということだ。
ユーザーからはワイヤースポークで出して欲しい」という声が最も多かったというホイールだが、最終的に整備性などの観点からキャストスポークを採用することに。しかし、ワイヤースポークをモチーフとした新設計の10本タイプとしたうえ、火の玉カラーの方はさらに切削加工も施すなどで、レトロなフィーリングを手に入れた。タイヤサイズはF= 120/70ZR17、R=180/55ZR17と一般的なサイズだ。

サスペンションはフロントにインナーパイプ径φ41mmの倒立フォーク、リヤにはSSにも使われる先進のホリゾンタルバックリンク式クッションを採用。調整機構は、フロントがフルアジャスタブル、リヤがプリロードおよび伸び側減衰に備えられている。ブレーキはフロントが外径300mmのセミフローティングダブルディスク&ラジアルマウント対向4ポットキャリパー、リヤが外径250mmシングルディスク+ピンスライド1ポットキャリパーだ。もちろんABSは標準装備。

シート高は800mm。段差が減ってさらにオリジナルZの雰囲気に近くなるハイシートは純正オプションで35mm高くなる。ちなみに輸出仕様ではハイシートが標準でローシートがオプションと、逆になる。

デザインスケッチ→モックアップ→最終市販仕様までの開発の流れ。Z1っぽかったり、ゼファーっぽかったり、集合から2本出しに戻ったり。随時、スタイルのバランスが見直されているのが分かる。

ターゲットは、ベテランだけでなくエントリーレベルまで年齢問わず幅広い層のライダー。そのため乗り味は「硬派」というよりも、リラックスして走りが楽しめる軽快でコントローラブルなものとなっている。フルフェイスヘルメットで乗るもよし、クラシックなジェットヘルメットで乗るもよし。オリジナルZの空気感をそのスタイルから味わいつつ、走りや機能的には現代的という新しいZワールドが、ここから始まる予感だ。国内発売は’17年12月1日(金)。税込み車両価格は火の玉カラーのキャンディトーンブラウン×キャンディトーンオレンジが132万8400円、メタリックスパークブラックが129万6000円となっている。