あまりのパワーにダウンフォースが必須のNinjaH2Rの2019年モデルは、’17~’18モデルから塗装とブレーキを変更。ところが、あまり知られていないのが’17モデルからのウイングの改良。モトGPでも普及した(しすぎた?!)ようにハイパワースポーツバイクにはもはや必須の装備とも言えるが、ここにカワサキならではのテクノロジーがあることを紹介しよう。
10Rにつけようという案もあった?!
モトGPでウイリー抑止のために各社争って装着していたウイング。これが2016年限りで禁止となったのは記憶に新しい。一方、航空宇宙カンパニーを擁するカワサキが、進化型のウイングをH2Rに装着していることはあまり知られていない。モトGPに勝るとも劣らない310psを叩き出すH2Rは、2015年のデビュー時からアッパーとミドルにウイングを装着しており、後輪に働くトラクションコントロールだけでは、対処しきれないフロントのグリップや接地感を確保している。
モトGPでは、例えばRC213Vは空気を当てる板状のウイングを使用していた。この場合、ウイリーを抑えるのに効果を発揮するものの空気抵抗の上昇もかなりのものと推測される。要は、電子制御でウイリーを抑えるよりパワーで前に進む方を選択しているのだろう。一方、H2Rのウイングは翼断面によるダウンフォースを利用している。これは、飛行機の翼を上下逆さまにして取り付けているような形で、下に引っ張るダウンフォースを発生させているのだ。また、H2Rのアッパーウイングも当て板に見えるのは、ウイリーをした時でもダウンフォースを発生させ続けるために迎え角を取っているいるためだ。
’17~H2Rはさらに戦闘機の技術を投入!
と、ここまでは’15モデルからのH2Rと共通の話題。そして、’17~モデルで上側のウイングが進化を果たした。新型はストレークとドッグツースという戦闘機などに使われる技術を採用しており、写真を見ると形状がかなり異なっているのが分かる。効果は、ウイング先端のエッジから渦を発生させて翼にからみつかせるもので、’15モデルより大きな姿勢の変化にも対応し、安定してダウンフォース発生させるという。また、ライダーに当たる風も低減するのだ。バンク中の接地感やコーナー脱出の加速も向上するなど、エンジンの電子制御ではフォローしきれない効果を発揮することから「10Rにもつけよう」という案も実際にあったようだ。
2019H2R■全長2070 全幅850 全高1160 軸距1450 シート高830(各mm) 車重216kg(装備)■水冷並列4気筒DOHC4バルブ 998cc 310 ㎰ /14000rpm 16.8 ㎏ -m/12500rpm ■燃料タンク容量17L■タイヤF=120/600R17 R=190/650R17 ※公道走行不可