ハーレーダビッドソンでロードレースに参戦する猛者たちがいる。ハイパワー/高性能な現行モデルらがしのぎを削る筑波ツーリスト・トロフィー in APRIL(2024年4月6日)で、水冷Vツインエンジンを心臓部とするハーレー2台がサーキットで躍動した。
●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ)●写真:赤松孝 ●外部リンク:ライダーズサロン横浜
HARLEY-DAVIDSON HAKATA PAN AMERICA B.O.T.T. WCT
ドゥカティ パニガーレやKTM RC8といった高性能スーパースポーツツインモデルたちがエントリーするバトルオブザツインズ・WCT(水冷)クラスに、アドベンチャーツーリング「パンアメリカ1250」をロードレーサー仕様に仕立て参戦するのは、ハーレーダビッドソン博多の武田隆司店長だ。
自らXR1200にてサーキットを走り、表彰台の真ん中に立ち続ける百戦練磨のエキスパートライダーであるが、今回はライダーに敏腕レーサーとして知られる西田敏郎選手を起用し、アメリカで人気急上昇中のスーパーフーリガンレーサーのごとく、豪快な走りで筑波サーキットに駆けつけたファンらを魅了した。
ライバルより大柄なマシンは、サーキット向けに前後17インチ化されている。軽量高剛性のマルケジーニY字10本スポークの鍛造アルミホイールはアルマイト仕上げで、ピレリのハイグリップタイヤ・ディアブロスーパーコルサを履く。
倒立フォークはスクリーミンイーグルのオーリンズ・カートリッジ式にグレードアップし、ブレーキはマスターシリンダーを含めてブレンボ製としている。
ノーマルのラジアルマウントキャリパーにレース用パッドを組み込み、サンスターの320mmフローティングディスクをセット。小ぶりなガソリンタンクはスポーツスターS用でよく似合う。
ワンオフのアルミ製シートフレームに備えるテールカウルは、空冷スポーツスターでもお馴染みのSTORZ(ストーツ)を流用した。このスタイリッシュさを真似したいというユーザーは少なくないだろう。
チタンのジョイント管で連結したサイレンサーはSCプロジェクトで、シェルにもチタンニウムが採用され、カーボンのエンドキャップがアグレッシブなデザインをより強く強調している。
リヤサスペンションはアラゴスタモノショックのワンオフで、ストローク量をはじめ各種設定を最適化。ドライブチェーンは530→520化し、スプロケットはフロント19/ドリブン38丁で、筑波サーキット2000では2/3/4速を使って走る。
結果的には3ラップ目に、クラッチのトラブルによってリタイヤとなってしまったが、1分02.720のラップタイムでクラス2位を走って見せるなどポテンシャルの高さを知らしめた。
走行後、西田選手に話を聞くと「今回は残念な結果でしたが、まだ(このマシンにとっては)初レース。今後は大いに期待できますよ」と、限界性能はまだもっと高いと好感触を得た様子だ。
武田店長も「実際にレースを見ていた人は、ハーレーもやるなぁと思ってくれたはず。ノーマルのままだったクラッチを強化し、次戦に挑みたい」と、うつむくことはない。ハーレーでサーキットを走り、強力なライバルを相手にレースでも勝って見せるという姿勢は、我々ハーレー乗りにとっては嬉しくあり、憧れでもある。今後も目が離せない!
全米で人気急上昇中! スーパーフーリガンレース
HARLEY-DAVIDSON JAPAN X350 NT2(Normal Twin 1)
アンダー400cc、つまり普通二輪免許で乗れるハーレーと話題になっているX350。そのメディア向け発表会で、プロダクトチャンピオンとしてプレゼンテーションを行ったのが、ハーレーダビッドソンジャパンの宮中洋樹さんだ。
その姿はサーキットにあった。筑波ツーリスト・トロフィーNT2クラスにX350でエントリー。4ストローク2気筒250cc以下で行われるこのクラスは、近年ニューモデルが続々と登場したことでさらなる盛り上がりを見せている激戦区で、地方選手権で開催されるJP250クラスも該当するため、争いは熾烈になるばかり。
そのJP250・筑波ロードレース選手権にて2023年、栄えある年間チャンピオンに輝いたのが宮中さんである。プライベートで所属するライダーズサロン横浜(RSY)は、Moto3世界選手権へフル参戦中の佐々木歩夢選手も輩出している名門チーム。社会人ライダーとしてロードレースに打ち込む宮中さんは、X350の日本導入が決まった時点で、サーキットでの走行をイメージしていた。
「走行会など、ノーマルのままでも十分に楽しめます。より多くの人に、X350でスポーツライディングを楽しんでいただきたい。そんな思いで今回レースにエントリーしました」と宮中さんは言う。
軽量な車体にピックアップに優れ、元気よく回るパラレルツインエンジンを搭載するX350。前後17インチの足まわりがセットされ、タイヤの選択肢が多いのも大きな優位点だと教えてくれる。
レースへ向けたセットアップで、まず最初に着手したのがリヤサスペンションだ。よりストロークの長い中国仕様の純正ノーマルショックに換装することで、サス長が12mm延長され、バンク角を稼ぐなどしている。
フロントフォークはダンピングの弱さを克服するため、通常のサスペンションオイルではなく、粘度の高い15W50のエンジンオイルを入れて減衰力を高めた。
そしてフロントに荷重したいため、ライザーを逆にし、低いハンドルバーをセット。ノーマルからバックステップ気味のフットペグは高さを5cm上げ、前傾姿勢のライディングポジションを獲得している。
ノーマルシートは段差があり、着座点が限定されてしまう。積極的に前後へ動くには窮屈であったことから、ハンドメイドでシートをつくりなおした。
シッティングポイントを後方へ移したいため、クッションや表皮をすべて剥がし、ベースにスポンジを張って、尾てい骨をホールドするためのストッパーを後部座席の上に増設。前後移動もこれでしやすい。
排気系はO2センサー以降からエキゾーストパイプを切断し、エキゾーストパイプ&サイレンサーをワンオフでチームが製作してくれた。4気筒エンジン用の半分を用いて、オールステンレス製にしている。
X350でのロードレース参戦は、これが世界初だろう。中免で乗れるハーレーは、サーキットでも注目の的であった。
そしてさすがはタイトルホルダー、宮中さんは軽快な走りで順調にラップを重ね、強力なライバルと互角に闘い抜いた。X350やX500で、サーキットでのスポーツライディングを楽しむライダーが増えることを願って、パラレルツインエンジンの咆哮をフルスロットルで奏でたのだ。
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