ハーレーのヒストリーを振り返る:1957 FLHハイドラグライドポリス〈センバモータース コレクション 第7回〉

ハーレーダビッドソン FLHハイドラグライドポリス

どんなに時間が経とうが、その輝きを失わないものがある。モーターサイクルに対する確固たる信念と溢れる情熱でつくられたハーレーダビッドソンもそのひとつだ。アメリカの工業製品が高性能と洗練されたデザインで世界を席捲した1930~60年代に生産されたモデルは、旧き佳き時代の象徴として人々を魅了してやまない。大阪のセンバモータースに保管されている貴重なコレクションの一部を6回に渡って紹介したが、反響の多さから再度連載を復活することに。今回登場するモデルは、パンヘッドを積む1957年製ハイドラグライド。翌年よりスイングアームとリヤサスペンションを備えるデュオグライドへ変わっていくことから、リジッドフレームのラストイヤーモデルとなる。白で統一された外装を見てもわかるとおり、ポリス仕様だ。


●文:ウィズハーレー編集部(青木タカオ) ●写真:藤村ノゾミ ●外部リンク:センバモータース

リジッドフレーム最終年のパンヘッドは、博物館で保管されていたリアルポリス!

この車両は、アメリカ・ミズーリ州セントルイス警察で使われていた正真正銘のポリスバイクで、走行距離は1万4000マイル(2万2400km)でしかない。詳細な経緯は不明だが、たいへん貴重であることが認められ、地元の権威ある博物館にて27年間にも渡って大切に保管されていた。

アメリカの歴史を語る上で重要なマザーロード=ルート66はシカゴとロサンゼルスをつなぐが、全長3755kmのなかで最大の都市のひとつがセントルイス。雄大なミシシッピ川にかかるチェーンオブロックブリッジを渡る旅人のクルマやモーターサイクルを、このポリスバイクが誘導したり取り締まったりしたのかもしれないと思うと、その価値と歴史への浪漫をいっそう強く感じてならない。

ペイントを含め、すべてが当時のまま。ハンドルバーには暗い夜間でも書類などが見れるよう電灯が仕込まれ、薄い金属板で組まれた真四角のボックスが車体の両サイドに備わっている。

未舗装路がまだ少なくなかったはずで、リヤフェンダーはパンクしたタイヤもすぐに修理できるように、エンド部が持ち上げられるヒンジが付く。上面にはメッキの施されたキャリアもオリジナルコンディションで残ったままだから、コアなファンでなくとも、ミュージアムコンディションのレア度に息をのむ。

創業75周年、大阪の老舗ヴィンテージハーレー専門店・センバモータースの手によって、今ここにある。

フロントサスペンションを1949年以降、スプリンガーフォークから現代的な油圧式テレスコピックフォークへ刷新したハイドラグライド。さらなるハイスピード化が求められ、1958年にはリヤショックを備えるデュオグライドへ、1965年にはセルスターターつきのエレクトラグライドへと進化が加速する。1957年式はリジッドフレームの最終イヤー。美しいフレームワークが見るものを魅了する。

塗装/シート表皮/装備品…、すべてがオリジナルコンディションのポリス仕様は実際の警察車両で、ミズーリ州のDale’s ミュージアムで30年近く保管されていた。

キャブレターは1967年式のショベルヘッドで、ティロットソンに変わるまでリンカート製だ。

1948年以降、エンジンはパンヘッドで、フットクラッチ&ハンドシフトで操作を行う。シーソー式のクラッチは前に踏んで繋がり、後ろに踏み込むと切れる。

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