
GPZ900Rニンジャのカスタムにおいて、エンジンチューニングによって増加した発熱量に対応するためにラジエターを大型化するのは、水冷エンジンモディファイの常套手段である。特にこのモデルは、1100ccエンジンを積んだハイパワーモデル。せっかくビッグラジエターを装着するなら、さらなる放熱効果アップのため、ガンコート塗装を利用してさらなる性能を引き出したい。
●文/写真:モトメカニック編集部 ●外部リンク:カーベック
ビッグラジエターにガンコート塗装でオーバーヒートを防ぐ
史上最高の暑さと言われた2023年の夏。カスタム車のオーバーヒートを防ぐには、冷却水(LLC)の適切なメンテナンスが必須だが、冷却効果を上げるために有効なのが、ビッグラジエターを装着すること。
ラジエター面積を増やせば、LLCが通るチューブとフィンも増えて、放熱面積が拡大する。排気量が大きく出力が向上するほど、エンジンの発熱量は増加し、そうしたバイクほどラジエターが大きいのを見れば、効果は明らかだ。
今回登場するGPZ900Rカスタムは、純正エンジンをGPZ1100用エンジンに積み替えており、ラウンドタイプのビッグラジエターが装着されている。それでも、市街地走行でちょっとした渋滞につかまるだけで水温計の針は見る間に上昇し、一度上がった水温はなかなか低下しない。こうした状況の改善手段として最適なのが、ラジエターのガンコート塗装である。
エンジンやブレーキパーツの塗装に使われることが多いガンコートは、そもそも放熱性の高さが3大特長のひとつで(残り2つは耐溶剤性と表面硬度の高さ)、アルミの地肌よりガンコート塗装面の方が放熱性が向上する。
ラジエターをガンコート塗装したことで、渋滞路でも水温計の針は中央で安定し、たとえ渋滞路で水温が上昇しても、走行風が当たると短時間で低下するようになった。高品位なサテンブラックによってエンジンまわりが引き締まるのも、カスタム車にとっては重要なポイント。せっかくビッグラジエターで冷却性能アップを図るなら、放熱効果をさらに引き上げるガンコートの併用を推奨したい。
ニンジャ系エンジン特有の冷却系統のサビに要注意
GPZ900Rにも純正オイルクーラーがあるが、容量が小さく、エンジンの1100cc化に合わせてアフターマーケットパーツに交換済み。今回はオイルクーラーもガンコートで塗装する。
ウォーターポンプよりさらに低い位置にあるドレンボルトを取り外して、LLCを排出。オーナーは定期的に交換しているとのことで、濁りのない透明なグリーンのLLCが出てきた。
リザーブタンクのLLCも大半はグリーンだが、ホースニップルより下の底部には茶褐色の水が沈殿していた。ラジエターキャップにつながるホースより下なので吸い出されることはないが、怪しいサイン?
車体からラジエターを取り外して内部に残ったLLCを排出すると、初めのうちはグリーンだったが、途中から茶褐色に! エンジン側のドレンボルトから出たLLCはクリアだったのに!?
GPZ900RやこのGPZ1100は、鋳鉄スリーブに冷却水が触れる構造で、そのサビがエンジン内部に循環するのが特徴(持病!?)とされている。ウォーターポンプも鬼門だが、覗いたところ大丈夫だ。
ラジエターのロアホース側から水道水を流し込むと、アッパー側から茶褐色の水が出た!! ロアホースの取り出し部分はサイドタンクの中間ぐらいの位置にあるので、その下にサビが溜まっていたのか?
オーナーはLLCをドレンボルトから抜き、ラジエターキャップから注入して交換していたが、その際にサビ水は出たことはなかったそう。十分に洗浄して、乾燥後にサンドブラストで下地処理を行う。
下地が整ったビッグラジエター。右のタンク(車体左側)のホース取り出し口は、下端からかなり上にある。ここより下にあるLLCが、タンク部分で上がってホースから出て行くのだろうか?
サビ水はLLCより比重が重く、実はずっと溜まっていたのかもしれない? そんな推理はさておき、ガンコートを塗装するスプレーガンの口径はφ 0.4~ 0.6mm が指定で、薄く繰り返し塗り重ねる。
自動車板金で一般的なφ1.0mmクラスのガンより吐出量は少ないが、ガンを速く動かして薄く重ね塗りしていくのがガンコート塗装のコツ。薄塗りなので、狭いフィンの隙間も塗膜が厚くなりにくい。
このエンジンシリーズでは、シリンダー背面の冷却水パイプも弱点のひとつ。内部のサビはなかったのでガンコートで塗装。金属素材への密着性が高いので、下塗りなしで直接塗装できる。
ラジエターロアホースとウォーターポンプをつなぐパイプの内面はまったく錆びておらず、茶褐色水はラジエター本体内部だけにあったようだ。外したパイプはせっかくなのでガンコートでリフレッシュ。
本来の目的はビッグラジエターの放熱効率アップだが、沈殿したサビ水にラジエターの有効面積とは!?を考えさせられた。ガンコートの性能に間違いはないので、これだけのパーツをペイントした。
硬化剤のない一液タイプで希釈用シンナーも不要だが、性能を発揮させるには170℃で1時間以上の焼付乾燥が必要なガンコート。乾燥後の塗膜は薄くて硬いので、フィンも曲がりにくくなる。
ラジエターキャップを観察すると、LLCにサビが混ざっていたのは明白。キャップシールの変形は気密性不良によるオーバーヒートの原因になるため、当たり面が潰れている時は交換しておこう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
バイクいじりの専門誌『モトメカニック』のお買い求めはこちら↓
モトメカニックの最新記事
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
単気筒1ボディと4連キャブでは洗浄段取りに違いあり。 超音波洗浄が可能なら、完璧に近い仕上がりに!! いつかそのうち乗るつもり…という「いつか」が数ヶ月から数年になり、もうダメか…となるのが長期放置車[…]
ギボシ端子取り付けのポイントをおさらい バイクいじりのレベルやセンスは、その人が手がけた作業の跡を見れば一目瞭然。電気工作なら配線同士をつなぎ合わせる際、芯線をねじってビニールテープでグルグル巻きにし[…]
バイクとの親和性はスマホを圧倒的に上回る AKEEYOが販売する「AIO-6LTE」は、太陽光の下でもはっきり見える視認性の高い大型6インチのIpsモニター、Wi-FiとBluetoothによるスマホ[…]
販売終了が続く絶版車用純正部品を信頼のMADE IN JAPANで復刻 長期間不動状態だったバイクを再始動する際、キャブレターやガソリンタンクの状態もさることながら、クラッチの張り付きも懸念事項のひと[…]
最新の関連記事(メンテナンス&レストア)
PROGRIP専用の信頼接着剤 デイトナ(Daytona)の「グリップボンド PROGRIP 耐振ゲルタイプ専用 12g 93129」は、PROGRIP用に設計された専用接着剤です。容量は12gで、初[…]
単気筒1ボディと4連キャブでは洗浄段取りに違いあり。 超音波洗浄が可能なら、完璧に近い仕上がりに!! いつかそのうち乗るつもり…という「いつか」が数ヶ月から数年になり、もうダメか…となるのが長期放置車[…]
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
ギボシ端子取り付けのポイントをおさらい バイクいじりのレベルやセンスは、その人が手がけた作業の跡を見れば一目瞭然。電気工作なら配線同士をつなぎ合わせる際、芯線をねじってビニールテープでグルグル巻きにし[…]
販売終了が続く絶版車用純正部品を信頼のMADE IN JAPANで復刻 長期間不動状態だったバイクを再始動する際、キャブレターやガソリンタンクの状態もさることながら、クラッチの張り付きも懸念事項のひと[…]
最新の関連記事(カスタム&パーツ)
世界に羽ばたくカスタムビルダー「CUSTOM WORKS ZON」 ZONは、吉澤雄一氏と植田良和氏によって2003年に設立されたカスタムファクトリーだ。彼らの真骨頂は、他に類を見ない高いデザイン力と[…]
ジムニーノマドJC74W ドレスアップパーツ最新情報 人気のロトパックスやラック取り付けのポイント アウトドアシーンには欠かせないギアとして注目されているのが、プロトが正規輸入代理店をしているROTO[…]
最小限のカスタムでクルーザーをアドベンチャーマシン化 1200ccという大排気量の水平対向エンジンを心臓部に持つBMWのヘリテイジモデル、R12シリーズ。その新しいバリエーションとして2025年5月に[…]
世界中のビルダーがボンネビルをカスタム 今回開催されたバイクカスタムの世界規模コンペティションには、世界各地から8チームが参加。その中からファイナリストに選出されたのは、ブラジル、フランス、イタリア、[…]
MT車/DCT車どちらでも使用できる このマフラーは、2025年の最新型式(8BL-SC87)と、2021年から2024年の旧型式(8BL-SC83)の両方に対応し、MT車/DCT車どちらでも使用でき[…]
人気記事ランキング(全体)
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
コンパクトで使いやすいワイヤーロック ヘンリービギンズの「デイトナ ワイヤーロック DLK120」は、質量約90gの軽量設計で、ツーリング時の携行に適したポータブルロックです。ダイヤルロック式のため鍵[…]
日本仕様が出れば車名はスーパーフォアになるか ホンダの名車CB400スーパーフォアが生産終了になって今年ではや3年目。入れ替わるようにカワサキから直列4気筒を搭載する「Ninja ZX-4R」が登場し[…]
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
50レプリカのフルサイズからミニバイクレースを経てデフォルメフルサイズへ! VR46カラーのTZR50……実はヨーロッパで1997年から2012年まで生産されていたイタリアのミナレリ製エンジンで、現地[…]
最新の投稿記事(全体)
ツーリングスポットに事欠かない南伊豆 南伊豆を存分に走り抜けたいなら、「県道16号下田石廊崎松崎線」は欠かせない。伊豆半島最南端の石廊崎へ続くこの道は、海岸線沿いの豪快な絶景海道。漁村が点在する東部の[…]
世界に羽ばたくカスタムビルダー「CUSTOM WORKS ZON」 ZONは、吉澤雄一氏と植田良和氏によって2003年に設立されたカスタムファクトリーだ。彼らの真骨頂は、他に類を見ない高いデザイン力と[…]
軽さと安全性を両立した定番モデル プーマセーフティー「ライダー2.0 ロー」は、JSAA A種認定を取得した先芯合成樹脂を装備し、衝撃吸収機能を備えたメンズ用安全靴です。Amazonレビューは4.0([…]
コンパクトで携帯性に優れた携帯灰皿 「プルプラ クリップオンケース」は、ヒートスティック(加熱式タバコ)専用の携帯灰皿です。商品重量は約10gと非常に軽く、ポケットやバッグの隙間でも邪魔になりません。[…]
トレリスフレーム+ユニトラックサスペンションの本格派 カワサキは欧州で、15psを発揮する水冷125cc単気筒エンジンをスチール製トレリスフレームに搭載し、前後17インチホイールを履かせたフルサイズス[…]
- 1
- 2