
“走行できる”のと“調子良く走れる”は、同じようでいてまったく異なる。調子の良さを経験していなければ、何が悪いのかも分からない。今回使用する車両は’92年式カワサキZR250バリオス。オーナーからは「ほんの少し前までは問題なく走行していた」と申し送りがあった。まずは古いエンジンオイルを交換してみよう。
●写真/文:モトメカニック編集部 ●外部リンク:エーゼット(エンジンオイル) デイトナ(オイルフィルター)
レーサーレプリカ由来の高回転型エンジンはエンジンオイルのメンテナンスが重要
率直に言えば、中古車で“安くて良い物”はよほどの奇跡でもないかぎりあり得ない。『モトメカニック』読者のようなサンデーメカニックなら、直す楽しみのために手を出すのはアリだが、安心して乗りたいのなら、販売前の整備にコストをかけた車両を選ぶ方が無難である。とはいえ懐事情や気の迷いで、行ってはいけない方に入り込んでしまうのもバイク人生のあるあるだ。
1991年に登場したカワサキバリオスは、最近の20代の若いライダーの中で人気の絶版車らしく、この車両のオーナーもそんなひとり。セパレートハンドルと集合マフラーでカスタムしてあるが、見るからに基本的なコンディションがイマイチ。そこでもっともベーシックなメンテナンス=エンジンオイル/オイルフィルター交換を行なった。
オイルドレンボルトを緩める際に気になったのは、オイルパン周辺にまんべんなく滲んだオイル痕。単に洗車不足なのかオイルパンガスケットのへたりによるものかは、パーツクリーナーできれいに清掃して観察することに。
もうひとつ気になるのは、尋常ではないトルクで締め付けられたカートリッジタイプのオイルフィルター。フィルター座面のガスケットを潰して密着させることは重要だが、過剰なトルクを加えるのは百害あって一利なし。こうしたちょっとした部分からも、素性の善し悪しが推測できるので、簡単なオイル交換でも意識を集中することが重要だ。
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エンジンオイル/フィルター交換の手順
オイルドレンボルトを緩める際の工具は、メガネレンチかソケットレンチが必須。メンテナンス不良車の中には、ボルトがなめかかって丸くなっているものもある。そんな時はソケットを叩き込んで緩める。
頭がなめかかっていたドレンボルトを外すと、ツバに対して明らかに外径が小さい銅製ガスケットが入っていた。新たに使用するガスケットは、表面がコーティングされたデイトナ製。外径は21mm。
オイルフィルター着脱に使用するカップレンチは14面タイプで、ホンダ/ヤマハ/カワサキ用が2面幅64mm で、スズキ用が66.5mm。異様なほど大きいトルクで締まっていたのでメガネレンチで緩める。
フィルター内部のオイルで床面を汚さないよう、オイルドレンパンを移動させてから取り外す。レンチがフィルターに食い込んだら、レンチ中心の穴にドライバーを差し込んで叩き抜く。
クランクケースのフィルターガスケット座面に傷や凹みがないことを確認しながら、ウエスで汚れを拭き取る。社外品の集合マフラーのおかげなのか、オイルフィルター周辺の見晴らしはとても良い。
クランクケースに接触して捻れないよう、ガスケットにオイルやシリコングリスを薄く塗布しておく。クランクケース底面に装着するフィルターは、内部にオイルを注いでから取り付けても良い。
オイルフィルター取り付け時にカップレンチで締め付ける必要はない。ガスケットが潰れればシール性が確保されるので、手でグイッと締め付けて緩まなければOK。手で回せない場合は工具を使う。
フィルター取り外し時にクランクケース周辺に付着したオイルをパーツクリーナーで清掃しておく。垂れたままでも機能面で問題はないが、汚れが付着したままだと漏れや滲みと判別できなくなるからだ。
フィラーキャップはマイナス溝が刻まれたタイプ。通常のドライバーだと溝の内側に傷を付けてしまうので、ダートフリークのタイミングプラグレンチで取り外した。取り付けは手締めでOK。
フィラーキャップ内側のパッキンがエンジンの熱で経年劣化して潰れるとオイル滲みの原因になるので、新品に交換する。デイトナからカワサキ純正互換のフィラーキャップパッキンが販売されている。
バリオスのエンジンオイル量はフィルター未交換時が2.1L、フィルター交換時が2.55L。一度に全量を入れず、2L程度入れたところでエンジンを始動してフィルターにオイルを回す。
エンジンを止めてオイル確認窓の油面が上がってきたら、上限と下限の中間ぐらいになるまでオイルを注ぎ足して作業終了。
交換後、エンジンを始動させ、アクセルをあおる。最高出力を1万5000回転で発生する超高回転型エンジンにとって、4000回転はアイドリングのようなもの。オイルとフィルター交換によって、エンジンのスムースさが格段にアップした。
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