
熊本のHSR九州で開催される鉄馬に向けて制作された、ロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650レーサー。春の鉄馬で2位表彰台に上がることができ、大満足。秋開催もある鉄馬だが、コンチネンタルGT650が参加できるACT18クラス(エアクールドツイン18インチ以上の意味)の開催はないのだ…。無念、残念な気持ちと「せっかくなら秋にもレース参戦したいよね」ということで、筑波サーキットで9月24日に開催されるMAX10に参戦することにした!
●文:ミリオーレ編集部(小川勤) ●写真:柴田直行 小川勤 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム
小川勤(おがわ・つとむ)/1974年生まれ。1996年にえい出版社に入社。2013年に同社発刊の2輪専門誌『ライダースクラブ』の編集長に就任し、様々なバイク誌の編集長を兼任。2020年に退社。以後、2輪メディア立ち上げに関わり、現在はフリーランスとして2輪媒体を中心に執筆を行っている。またイベントレースも好きで、鈴鹿4耐/菅生6耐/もて耐などにも多く参戦。現在もサーキット走行会の先導も務める。
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鉄馬後にHSRで練習。来年までレースをしないのはもったいないよね…
HSRで4月29日(土)〜30日(日)に開催された『鉄馬フェスティバル with ベータチタニウム』の開催から約2カ月半後の7月16日、僕は再びHSRを訪れた。鉄馬走行会というイベントでHSRを走り込み、ロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650レーサーをさらに仕上げようと思ったのだ。
絶好の天候だったものの、真夏の炎天下は空冷エンジンのコンチネンタルGT650レーサーにはかなり厳しい環境。3周ほどでエンジンが熱ダレしてしまう。周りの空冷エンジンの皆さんも同様。タイムアップは難しそうだが、走り込んでHSRに慣れることに集中する。ちょっとしたトラブルも出せたため、マシンは少しだけ進化。次戦に向けての手応えを掴むことができた。
しかし、色々な方と話をしていて「年に1回のレース参戦は寂しいよね」「やはり関東でもレースに参戦したいよね」となり、筑波サーキットで9月24日に開催されるMAX10というレースにエントリー。MAX10は、その名前の通り1分10秒を切ったら卒業になるクラス。参戦しているバイクは様々で外車であれば大きな制約はなさそうな感じだ。
しかし、マシンは熊本のモトジャンキーが制作してくれているため、マシンの移動や遠征のハードルは結構高め。まずは9月12日に筑波サーキットで開催されるクシタニのライディングミーテイングでテストをしてレースに挑むことにした。
今回の参戦に向け、AELLA(アエラ)ブランドとして協力してくれているカスノモーターサイクルがステップを進化させ、トリプルツリーも制作。また、プラグは純正のチャンピオン製からNGK製に変更した。
鉄馬走行会は4月に決勝を走ったままの状態で参加。炎天下でタイヤには厳しいかとも思われたが、ピレリのファントムスポーツコンプRSは抜群のパフォーマンスを披露。カフェレーサースタイルにもよく似合い、このトレッドパターンなのにラジアルというのもピレリらしい。
走行後にモトジャンキーを訪れ、メンテナンス。メカニックの藤本浩二さんがブレーキキャリパーを揉み出してくれた。走行の度にこういったメンテナンスを施してくれるのがモトジャンキーなのだ。
モトジャンキーの頼れる面々。左から藤本浩二さん/代表の中尾真樹さん/吉松直樹さん。短期間でとても楽しいレーサーに仕上げてくれた。
4月に開催された鉄馬参戦時の模様はこちら↓
コンチネンタルGT650は筑波サーキットで1分10秒を切れるのだろうか?
僕自身、ロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650にこれほど夢中になるとは思ってもいなかった。これを読んでいただいている方も「なんで昔ながらのカフェレーサー(中身は最新)でレースを?」と思っている方が多いと思うし、それが率直な反応なのだと思う。
しかし、これがとても楽しいのだ。コンチネンタルGT650のエンジンは空冷ツインの648ccで、パワーはカタログスペック上だと47.5ps。実測すると後軸で45.6ps、燃調と点火、さらにマフラーに手を加えて49.5psほどだ。ホイールは前後18インチ、フレームはスチール製のダブルクレードルで、重量は212kgと重め。僕のレーサーは各部の軽量化で25kgほどは軽くなっているはずだ。
それでも、操っている醍醐味がもの凄くある。スペックの数値だけでは語れない良さがあるのだ。エンジンとシャーシのマッチングがよく、どこまでも素直。当然、速さはないのだが、僕の求めるスポーツバイクとしての楽しさにとてもフィットしている。僕は以前、ヤマハのSR400や500のカスタムに夢中になっていた時期(今も地味に継続中)があるのだが、その趣味性にも似ていて、バイクを好みに仕上げていくのもとても楽しい。
ただ、僕がチャレンジしているのはレースである。速さや結果も少しだけ欲しい。僕にとっても筑波サーキットでのレースは久しぶり。さあ、どのくらいのタイムが出るだろう?。ちなみに筑波でスプリントレースをするのは2017年にGPZ750Rで参戦したテイストオブツクバとヤマハSRで参戦したBOTT以来。耐久レースだと2021年の耐久茶屋にNinja ZX-25Rで参戦している。いずれにしろ久しぶりだ。
「10秒は切れるんじゃない?」周囲の仲間に相談してもそんな声が返ってくる。そこで上記したスペックを伝えると「ギリギリかもね」って感じになる。ちなみに僕はレーシングライダーではないし、レースを真面目にやっていた時期もない。ただのバイク好き、スポーツライディング好きである。
練習でのベストタイムは1分10秒100
クシタニのライディングミーティングでのテスト日は、熊本からモトジャンキーの中尾さんも遠征してくれた。走り出すと、筑波でもロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650レーサーは抜群に楽しい。走りの組み立てを変えたりすると素直な挙動を見せ、すべてがわかりやすい。僕はこのしっかりと手応えのあるコンチネンタルGT650レーサーがとても好きだ。
ただ、前後18インチだと17インチと同じようなラインどりは少し難しくて、そこは工夫が必要そうだ。ただピレリ製ファントムコンプRSのグリップはとても明確。ハリスパフォーマンス製のシャーシは、昔ながらのダブルクレードルとは思えないほどレスポンスが良い。ここまで仕上げてくれた中尾さんに改めて感謝。
HSRでの良い手応えは筑波サーキットでも変わらなかった。ダンロップ下と最終コーナーで若干フロントが落ち着かないが、乗り方でなんとかしたいところ。
今回のためにカスノモーターサイクルが制作してくれた、アエラのステップとステムも良好。ステムに関しては、ノーマルからなんと2.5kg(!)の軽量化を実現。重心から離れた部分だし、常に動いているパーツだけにその効果は大きい。ステップも完成度を高め、そのタッチはとても良い。
何本か走ってサスペンションを少しアジャスト。リヤのスプロケットでファイナルをHSRよりも1丁ロングにしてもらう。「HSRから1丁くらいロングかなぁと思って」とスプロケットを用意してくれる中尾さんはさすが。少し走りんで出たタイムは1分10秒100。ギリギリ10秒は切れなかったけれど、本番では切ってMAX10を1回で卒業できればと思う。その上のクラスはMAX6だからかなりハードルは高いのだが…。
MAX10の決勝レースは9月24日。関東にコンチネンタルGT650レーサーがあるのは珍しいので、気になる方は遊びに来てください!
筑波まで遠征してくれたモトジャンキー代表の中尾さん。エンジニアでありメカニックであり、なんでも相談に乗ってくれる。マシンの挙動や症状を伝えて、セットアップを詰めていく。
今回導入したカスノモーターサイクルのアエラ製のトリプルツリー。こちらをブラックアルマイトして装着。純正はステムシャフトも鉄製だが、アエラはすべてアルミ製。オフセットを2mm可変させることができ、トレール量を調整することができる。もちろん製品化に向け開発中だ。
筑波でも様々な方に「なんか楽しそうだね」「カッコいいね」と言ってもらえたロイヤルエンフィールドのコンチネンタルGT650レーサー。一方で「ベースのバイクは何?」「何ccなの?」「く、空冷!」という声が多かったのも事実。認知度アップのためにもMAX10を頑張りたいと思う!
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