ドクターカーの車窓から旅の前半を振り返る

Moto Himalaya 2022:Day06 ヒマラヤでインド人のバランス感覚に思いを馳せるの巻【with HIMALAYAN vol.15】

40歳でバイクに乗りたいと思い立ち、普通二輪&大型二輪の免許を取得。2022年2月に人生初バイク・ヒマラヤを購入したと同時にバイクライフが本格的にスタートしたミリオーレ営業・ムラタ。「いつかヒマラヤでヒマラヤを走れたらおもしろいですよね〜」と常々冗談のように話していたのだが、その夢が思いがけず早々にかなったのだった! 標高3500〜5000mを駆け抜けるヒマラヤ冒険ツーリング、今回はドクターカーの車窓からお届け。


●文:ミリオーレ編集部(村田奈緒子) ●写真:河野正士、Moto Himalaya 2022クルー、村田奈緒子 ●外部リンク:ロイヤルエンフィールド東京ショールーム

Day 06:朝イチにドクターから痛み止めを処方してもらう

前日は日暮れ後の到着だったため、周囲の景観がまったく分かっていなかった。だからこの日ははりきって早起きを……と言いたいところだが、実際は足の痛みで目が覚めた(前日に転倒して負傷した詳細はこちら)。標高4350mにあるパンゴン・ツォ(ツォは「湖」の意味)に宿泊したのだが、朝6時過ぎに目を覚ましてカーテンを開けたら、麦畑と湖畔のきらめきがまぶしく美しい世界が広がっていた。

朝6時30分頃のパンゴン・ツォ。目が覚めた時はもう少し薄暗く寒かったが、陽が登るにつれて暖かさを越して、むしろ暑いくらいに。パンゴン・ツォの2/3はチベットの実効支配域で、1/3がインド側とのこと。中国とインドの実効支配線上にあるため、ここを訪れるには入域許可証が必要。そうした手配もすべてモト・ヒマラヤのスタッフが行ってくれている。

テント前に椅子を出して、朝イチの日向ぼっこを楽しむメンバーも。湖畔に近づくと思いのほか、波が高かった。

出発前のブリーフィング。影の濃さを見るとわかるが、直射日光が強すぎてとにかく眩しくて暑い。パンゴン・ツォは塩分濃度が高く、植物や生物もほぼ生息していないそう。透明度が高いので、日差しや天気で刻一刻と水面の青さが変化する。国境警備の兼ね合いで、船を出すことも泳ぐことも許されていないそう。

この日は前日にも通過した標高5300mのチャン・ラを越えて、レーに一度戻るというルートで走行距離は140kmほど。ブリーフィング前にはドクターの体調チェックも。高山病の心配がある人はパルスオキシメーターで血液中の酸素飽和度を計測したり、私の場合は足の腫れ具合をチェックして痛み止めの処方があった。

「痛み止めがしっかりと効くまではドクターカーで移動して、途中からバイクに乗ればいいのでは」というドクターのアドバイスから、この日はクルマ移動でスタートした。

道路が作られていく……ドクターカーの車窓から思いを馳せる

この日も「Let’s shaking time!」とドクターはご機嫌。前日よりも慣れてきたが、悪路を走るクルマは前後左右、上下に揺れ続ける。とはいえ、バイクで自走していた時よりも周囲をしっかりと観察するゆとりが生まれるわけである。

真っ黒に燃えたクルマが3台、崖下に……。ガードレールがないので、落ちたらどこまでも転がり落ちていくのだろう。

どこまでも澄み渡った青い空に雲が流れ、その雲が猛々しい岩肌にドラマチックな陰影を落とす。いつまでも眺めていられる光景に、ときに馬や牛が姿を現した。遠くの景色の時間の流れはゆったりとしているのに、車内では360°振り回されている私。バイクもクルマも我先へとクラクションを鳴らしながら進んでいく。

なんだろう、このギャップ……。景色に集中すると、喧騒のなか上映されている無声映画を見ているかのような感覚だった。

ぼーっと車窓から景色を眺めていると、気づいたことがいくつかあった。あの黒い塊なんだろう?と目を凝らすと、大抵がクルマらしきものが燃えた残骸である。それを見て「まあ、そうなるよね」と思った。

インドは日本と同じ左側通行の国なので、追い抜くときは右側からが原則。そんなことお構いなしで多くのバイクやクルマがひたすらクラクションを鳴らしながら左右どちらからも追い抜いていく。タンデムならまだよし、なかにはノーヘルで4人乗りしているつわものも。左右の車窓から見る景色が、同一の場所とは思えないほど。騒然vs静寂の世界だった。

バイクもクルマもゴーイングマイウェイと言わんばかりの走りっぷり。渋滞して低速だろうが、隙間があってもなくても我こそは前へ前へととにかく進んでいく。道を譲るという概念は、この世界にはもちろんない。

このノールールが最初は嫌だった。しかし、見るほどになんてバランス感覚に長けている人たちなんだろうと感心する場面も多い。そして何よりも彼らにとってはこれが当たり前だから、追い抜いていく時は大抵のライダーや運転手が笑顔なのである。なんだか憎めないし、たくましいなと思うようになっていた。

そして印象深いのが、標高5000m越えのところで道路を作る人たちの姿だった。重機もあまりない工事現場も多く、スコップ片手に人の手でつくっていた。道路工事をしているのは老若男女問わず、なかには子どもをおんぶしながら作業している女性の姿も。こうして道路ができ、インドという国の葉脈が出来上がっていくのだ。そのリアルさが目の前に広がっていた。

とはいえ、作業するよりも道端に座って休憩している人たちが多いのもインドっぽいなと。こうした工事に従事するのは、現地ではなく別地方からの出稼ぎの人たちが大半とのこと。ドクターカーの車窓から手を振ると、みんな笑顔で手を振りかえしてくれた。

ガンワゴンと合流できず、この日はバイクを断念

ということで、あちこちで道路工事が進んでいるため通行止めとなっている箇所も多い。バイクならすり抜けて前へ進むことができるが、クルマはそうはいかない。タイミングが悪く、この日は停滞が多く、ある場所では1時間半ほどまったく前に進まないこともあった。

モト・ヒマラヤのバイクメンバーが峠道を下っていくのを上から見下ろしつつ、クルマはまったく進まず。30分ほど経ったら、ドクターから「お腹すいてる?」と、白い粉(ダブールの「グルコース D」という健康補助食品)が支給される。

1時間ほど経過したら、後方のクルマでなぜか乱闘騒ぎ。これだけ待てどくらせどまったく進まない状況にみんな苛立っているのだろう。ドクターは他のクルマの人から「クッキー売ってもらったよー! これ食べて」と食料を調達してくれた。

レーに向かう途中の道沿いでは、ロイヤルエンフィールドのモバイルサービススタッフに遭遇。道路だけでなく、建物も各所で建設中。低層の建物であれば、おそらくこうして木で支えて乾燥させる方法が主流なのだろう。これもすばらしいバランス感覚だなぁと、感心した次第。

ようやくクルマが動き出し、峠を下ったときにはすでにお昼を過ぎており、バイクのメンバーともガンワゴンとも合流できず。結局、レーのホテルまで終始ドクターカーでの移動となった。

お腹すいたなと思っていたら、ドクターが「ナオコさん、カフェに行こう!」と一言。失礼ながら、またマギーのある食堂みたいな場所なんだろうと思っていたが、連れていってくれたのは「ここ、ヒマラヤ?」と思うほどオシャレでクリーンなカフェだった。

ドクターが連れていってくれたのは、オシャレなカフェ「The RIWO」。時間はずれの客(私たち)がオーダーしたカレー用のチャパティを焼く様子を眺めつつ。

「The RIWO」では、私はチーズのホットサンドをオーダー。スパイスの効いたジュースも美味しかった〜!

明日からはバイクに再び乗るぜぃ!!!!と決意あらたに、レーのホテルでお湯がでるシャワーに癒された。

I want to go to the Himalayas again with Himalayan!

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