かつては国内メーカーも多数ラインナップしていたが……

【消えゆく国産Vツインエンジン】気がつけばスズキだけ!? 他にもたくさんあったのに……

ホンダ 独自の位相クランク

ホンダ初のVツインはGL500の「縦置き」で、80度の挟み角から捻ったシリンダーなどかなり特異な存在だった。

一般的な横置きのVツインは1982年のアメリカンタイプのNV750カスタムが初出。こちらは45度の狭角Vだが、トピックは位相クランクの採用。バランサーを使わずに一次振動を抑制するホンダならではの技術で、この位相クランクは52度のVツインにも採用された。

ところがアメリカンは「適度な振動があった方が良い」という意見もあり、ホンダの45度・52度のVツインは位相クランクだけではなく、同軸クランクを採用するモデルもある。

ロングセラーのVT250シリーズやスーパーバイクレースにも参戦したVTR1000シリーズは90度で、こちらは理論上で一次振動ゼロなので同軸クランクのみとなる。

国内販売のVツインは2016年のVTR(250)が最終となるが、北米ではFURY(国内のVT1300CX)やシャドウ(745cc)が販売されている。

ホンダ 1977年 GL500
ホンダの市販車初のV型エンジン搭載車。縦置きの496cc水冷Vツインは挟み角80度で、キャブレターがライダーの足に干渉しないように、クランク軸に対してシリンダーを22度捻っている。特異なレイアウトを実現するため、気筒当たり4バルブの動弁機構はOHVを採用。翌78年に兄弟車のGL400(396cc)を発売し、79年にはアメリカンのGL500/400カスタムが加わった。

ホンダ 1981年 CX500ターボ
GL500の水冷Vツインをベースにターボチャージャーを装備した、市販量産バイク初のターボ車。ホンダ初の電子制御式燃料噴射装置を装備。83年に排気量を拡大したCX650ターボに進化。

ホンダ 1982年 VT250F ~ 2016年 VTR
2ストロークのヤマハRZ250に対抗すべく、クラス初の4ストローク248cc水冷90度V型2気筒DOHC4バルブエンジンを開発。当時の純レーシングマシン並みに1万1000rpm以上も回った。マイナーチェンジやモデルチェンジを重ねたがエンジンの基本レイアウトを変えずに、最終モデルのVTRまで34年も生産された。

一時代を築いたV4マシン

ホンダは様々なVツインを輩出したが、V型4気筒も精力的に開発してきた。1982年にV4エンジンを搭載するワークスマシンRS1000RWを開発し、同年に市販モデルのVF750セーバー/マグナ、およびVF750F(写真)を発売。この後はレーシングマシンと市販車が補完しあってV4を進化させ、400/750ccクラスのスポーツモデルやレースにおいてもV4が大活躍。しかし2022年4月28日にVFR800FとVFR800Xが生産終了したことで、ホンダV4は姿を消した。

ホンダ 1983年 XLV750R
国産大排気量アドベンチャー(当時ホンダはランドスポーツと呼んだ)の草分け。エンジンは82年発売のアメリカンNV750カスタムの749cc水冷45度V型2気筒(位相クランク)OHC3バルブがベースだが、空冷のドライサンプ式に改良し、軽量・コンパクト化でオフロード性能を高めた。

ホンダ 1983年 NV400 SP
同年発売のアメリカンNV400カスタムと同系の399cc水冷52度V型2気筒OHC3バルブエンジンは、バランサーなどを使わずに一次振動を低減する、ホンダ独自の位相クランクを採用。

ホンダ 1987年 トランザルプ600V
「アルプス越え」の名を持つオールラウンダーは、パリ・ダカールラリーで86年、87年と連続優勝したワークスマシンNXR750で得た技術をフィードバック。エンジンは583ccの水冷52度V型2気筒(位相クランク)OHC3バルブ。94年に398ccのトランザルプ400Vも発売(NV400とはボア×ストロークが異なる)。欧州では2000年に647ccに拡大(XLV650Vトランザルプ)。08年にはフルチェンジで680ccに排気量拡大と4バルブ化(XLV700Vトランザルプ)し、同系エンジンを搭載するツアラーのNT700Vドゥービルも発売。

ホンダ 1987年 ブロス プロダクト1
V4スーパースポーツ車のようなアルミツインスパーフレーム+片持ち式スイングアームのシャシーにVツインを搭載した個性派スポーツ。水冷52度V型2気筒(位相クランク)OHC3バルブのエンジンは、プロダクト1は647ccで、トランザルプ600V系。398ccのプロダクト2もラインナップし、こちらはトランザルプ400Vがベース。

ホンダ 1988年 アフリカツイン
トランザルプよりいっそうオフロード色を強めた大型アドベンチャースポーツ。ブロス プロダクト1系の647cc水冷52度V型2気筒(位相クランク)OHC3バルブを搭載。89年に排気量を742ccに拡大し、進化を重ねて2000年まで生産された。

ホンダ 1997年 ファイアーストーム
完全新設計の995cc水冷90度V型2気筒DOHC4バルブは同軸クランク。理論的に一次振動を打ち消すメリットがある90度Vツインだが、前後に長いのがデメリット。それをピボットレスフレームやサイドラジエターで解消。同系エンジンを輸出モデルのデュアルパーパスXL1000バラデロが搭載。

ホンダ 2000年 VTR1000 SP-1
当時のワールドスーパーバイクのレギュレーション「4気筒:750cc/2気筒:1000cc」の排気量上限に合わせて開発されたホモロゲーションモデル。水冷90度V型2気筒DOHC4バルブのエンジンはファイアーストームとは別物。排気量999ccでバルブ駆動はカムギアトレーン、燃料供給もFI(電子制御式燃料噴射)だ。

ホンダ 2008年 DN-01
優れたスロットルレスポンスとダイレクト感を持つ、ホンダ独自のロックアップ機構付油圧機械式無段変速機「HFT」を搭載するスポーツクルーザー。トランスミッション以外のエンジン本体部分は680cc水冷52度V型2気筒(位相クランク)OHC4バルブで、NT700Vドゥービルがベースになる。

ヤマハ こだわりの空冷

ヤマハの水冷VツインはXZ550/400のみで、生産期間も非常に短かった。他はすべて空冷で、深い冷却フィンを設けたルックスも独特。排気量は125~1700(1670cc)まで幅広く揃え、挟み角も48、60、70、75度と多彩。とはいえ多くがアメリカン(クルーザー)用で、ロードスポーツはそこからの転用となる。

国内モデルでは現時点でBOLTが販売中だが、令和2年(平成32年)排出ガス規制に適合していないので現行モデルは22年10月をもって生産終了となる。ヤマハのVツインを入手するには、いまが最後のチャンスかもしれない。

ヤマハ 1981年 XV1000 TR1
981ccの空冷75度V型2気筒OHC2バルブエンジンを搭載するヨーロピアンスポーツ。ヤマハ独自のモノクロスサスペンションを装備。TR1は輸出モデルだが、国内では同レイアウトで748ccエンジンを搭載したアメリカンのXV750スペシャルが同年に発売された。

ヤマハ 1982年 XZ550
ヤマハのV型2気筒では珍しい水冷エンジン(552cc水冷70度V型2気筒DOHC4バルブ)を搭載する輸出モデル(後にフルカウル仕様のDを国内販売)。翌83年には国内モデルとして398ccのXZ400を発売。

V4搭載のVMAX登場!

ヤマハは1983年に1198ccの水冷70度V型4気筒DOHC4バルブエンジンを搭載する大型クルーザーのベンチャーロイヤルを発売。そのエンジンをベースに、高回転時に1気筒当たりツインキャブになって高出力を発揮する「Vブースト」システムを装備するVMAXが1985年に登場。ドラッグマシンを彷彿させる迫力あるフォルムと、当時最強の145馬力で大人気を博した。

ヤマハ 1992年 SRV250 1996年 ルネッサ
1988年に登場したアメリカンのビラーゴ250が搭載する248ccc空冷60度V型2気筒OHC2バルブエンジンを用いた、トラディショナルなスタイルのロードスポーツ。96年には外装を一新し、ディメンション等も変更したカフェスタイルのルネッサを発売。

ヤマハ 2005年 MT-01
1999年モーターショーでコンセプトモデル「MT-01 鼓動」として発表され話題となった。エンジンは大型アメリカンXV1700系の1670cc空冷48度V型2気筒OHV4バルブで、ヤマハ独自の排気デバイスEXUPを2気筒で初めて装備した。同時期(2001年)にはイタリアのベルガルダ・ヤマハでアメリカンDS11のエンジン(1063cc空冷75度V型2気筒OHC2バルブ)をベースとする、ロードスポーツのBT1100が欧州で販売された

ヤマハ 2013年~ BOLT
ボバースタイルを意識した、スポーツヘリテージにカテゴライズするアメリカン。エンジンは941cc空冷60度V型2気筒SOHC4バルブ。現在も販売中だが、令和2年(平成32年)排出ガス規制に適合していないので、現行モデルは22年10月をもって生産終了となる。

こんな小排気量Vツインもあった

写真は1990年から台湾とシンガポールで販売されたFZ150。空冷Vツインは150ccで、6速ミッションを装備。レーサーレプリカ然としたフルカウルを装備したFZR150も販売。このエンジンは後に輸出モデルとして販売したアメリカンのXV125ビラーゴのベースとなった。

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