かつては国内メーカーも多数ラインナップしていたが……

【消えゆく国産Vツインエンジン】気がつけばスズキだけ!? 他にもたくさんあったのに……

V型2気筒といえば、スポーツ車ならドゥカティ、クルーザーならハーレーをイメージする方が多いのではないだろうか。とはいえ国産メーカーも、Vツインのロードスポーツやアメリカンをたくさん作っていたハズ……最近までは。いつの間に減っちゃったんだろう?


●文:伊藤康司 ●写真:スズキ、ホンダ、ヤマハ、カワサキ、ドゥカティ、ハーレーダビッドソン

国産Vツインは絶滅寸前。以前はたくさんあったのに……

Vツインといえばドゥカティやハーレーを思い浮かべる方が多いだろう。他にもロードスポーツやアドベンチャーならKTM、ちょっとマニアックな縦置きエンジンのモト・グッツィもあるし、クルーザー(いわゆるアメリカン)ならインディアンも有名だ。

2023年 ドゥカティ モンスターSP
水冷4バルブ90度Lツイン。テスタストレッタ11°を搭載。エンジンを前傾して搭載するためVではなくLと呼ぶが、パニガーレなどはエンジンを起こして搭載するためVと呼ぶ。

2022年 ハーレーダビッドソン ローライダー エル・ディアブロ
伝統の空冷45度Vツイン。ミルウォーキーエイト117を搭載。近年は、空冷Vツインだけでなく、水冷エンジンもラインナップするがVツインのフォーマットは踏襲している。

横置きのVツインエンジンは幅が狭いため、バイクの運動性が高くなるメリットや不等間隔爆発ならではのトラクション性、またアメリカンタイプだとエンジンのルックスやサウンドも魅力があるなどメリットがたくさん(エンジンの前後長が長くなったり、部品点数の多さによるコスト増などデメリットもあるが)。海外メーカーの場合、ブランドとしてのアイデンティティとしてVツインを堅持していることも多い。

とはいえ国産メーカーも1980年代から、数多くのVツイン搭載車をリリース。クルーザーはハーレーをオマージュという感は無きにしもあらずだが、ロードスポーツに関しては、並列エンジンとは異なるV型ならではのメリットを見出したからではないだろうか?

ところが近年、国産のVツインは激減。絶滅寸前である。最近は並列2気筒がメジャー化し、位相クランクによる様々な爆発間隔を実現できるようになったのも影響しているかもしれない。さらに、並列ツインよりVツインの方がコストがかさむのも激減の理由だろう。シリンダーやリンダーヘッド、さらにカムシャフトやカムチェーンも並列2気筒の倍の数の部品が必要になり、単純に部品点数が増えるのだ。

そうした理由があるにしても、外車はまだまだ頑張っているメーカーが多いだけに、国産のVツインの現状は少々寂しく感じる。

国内販売のVツインはスズキだけ

現在、日本の4メーカーで、Vツインエンジン搭載モデルを国内で販売しているのは、基本的にスズキのみ(ヤマハのBOLTも販売中ではあるが、現行モデルは10月で生産終了)。

ちなみに先日、EICMA2022で発表になったVストローム1050DEは1037ccVツインエンジンを搭載するが、Vストローム800DEは776cc並列2気筒エンジン、VストロームSXは249cc単気筒エンジンを搭載する。

スズキ Vストローム1050
1036cc水冷90度V型2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するアドベンチャーモデル。キャストホイール仕様。

スズキ Vストローム1050XT
チューブレスタイヤ対応のワイヤースポークホイール仕様。ヒルホールドやクルーズコントロールなどの電子デバイスや、アンダーカバーやセンタースタンドなど装備がいっそう充実。

スズキ Vストローム650
645cc水冷90度V型2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するアドベンチャーモデル。キャストホイール仕様。

スズキ Vストローム650XT
チューブレスタイヤ対応のワイヤースポークホイール仕様。

スズキ SV650
645cc水冷90度V型2気筒DOHC4バルブエンジンを搭載するスポーツネイキッド。

スズキ SV650X
SV650のパイプハンドルより低いセパレートハンドルを装備。ビキニカウルやタックロールのシートを備えたカフェレーサースタイル。

かつてリリースされた国産Vツインを見てみよう!

国産Vツインの歴史を紐解くと、戦前からハーレーをライセンス生産した陸王内燃機や、戦後も丸正自動車製造のライラックなどが存在するが、これらのメーカーはもはや現存しない。

そこで現行4メーカーが、かつてリリースしたVツインを集めてみた。漏らさず網羅……と言いたいトコロだが、アメリカン系はあまりに膨大なので今回は基本的に割愛させていただき、ロードスポーツやアドベンチャー系を主体に紹介しよう。

どれも個性的で、今こそ乗りたい!と思わせるモデルも少なくない。販売から時間が経っており、当時からマイナーだった車種もあるので中古車のタマ数は多いとは言えないが、意外と穴場かもしれないので、気になる方はチェックしてみよう。

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