一時代を築いたホンダのV4エンジンが市販車から消滅……

ついに終焉。さよならホンダV4!【数々の栄光と苦悩。あのサウンドとハンドリングを思い出しながら名車を振り返ろう!】

400ccクラスもV4が闊歩!

80年代のバイクブーム当時は、免許制度の兼ね合いでスポーツバイクのマジョリティは250~400ccクラス。250ccは2ストロークレプリカが人気だったが、400ccは4ストローク4気筒が熾烈な性能争いを繰り広げていた。

そこでホンダは大人気のCBX400Fに加え、V4エンジンを搭載するVF400Fを発売。その後もVFR400Rをリリースし、CBR400F~CBR400RRなど直4と人気を二分。VFR400RはTT-F3レースでも活躍し、そのレプリカモデルであるRVFは2001年頃まで販売され続けた。

1982 VF400F
VF750Fとほぼ同時に販売開始され、当時400ccクラストップの53psを発揮。プロリンク式リヤサスペンションやインボードディスク、前輪16インチ&アンチダイブ機構など足まわりも豪華。84年にはフルカウルのVF400Fインテグラを発売。

1986 VFR400R
国内レースで活躍していたRVF400から技術を投入。新型V4エンジンはカムギアトレーンで、フレームはアルミツインチューブ。カウルレスで丸型二灯のネイキッドVFR400Zも同時に発売。

1987 VFR400R
片持ち式スイングアームの「プロアーム」を採用し、前輪ディスクをフローティングに変更。キャブレターの大口径化や高効率のマフラーで吸排気を強化。

1989 VFR400R
リヤホイールがセンターロック式になり、フロントブレーキは4POTキャリパーを装備。マフラーを右出しに変更してメンテナンス性を向上。ヘッドライトが丸型二灯になり、ルックス的にもRC30に近づいた。

1994 RVF
RVF/RC45(750cc)同様に、ワークスマシンRVFを彷彿させるメカニズムとルックスのスーパースポーツ。96年にカラーチェンジしたのち、2001年頃まで販売されたが、このモデルをもって400ccクラスのV4は終了した。

アメリカンもV4!

80年代はアメリカンタイプも人気で、ホンダはスティードやシャドウといったV型2気筒モデルと並行して、初代マグナから進化したV45マグナを発売。93年発売の3代目マグナには、ビキニカウル装備のマグナRSも加わった。いまとなって考えると、かなりハイパフォーマンスなアメリカンだ。

1987 V45 MAGNA
エンジンは初代マグナと同じ水冷V4。傾斜したフロントフォークや低いシートなど、いっそうアメリカンスタイルを強調。車名の45は排気量(約45キュービックインチ)から命名。

1993 MAGNA
メッキを施したシリンダーヘッドやクランクケースカバーでイメージを一新しているが、エンジンはまごうことなきV4の3代目マグナ。V4エンジンのアメリカンはこのモデルが最後となる。

スポーツツアラーに路線変更

長らくスーパースポーツで活躍してきたV4だが、ホンダは2000年代前半にV型2気筒にシフト。市販スーパースポーツはVTR1000 SP-1、そしてレーサーはそれをベースとするVTR1000SPWに代わった。

そこでV4エンジンはスポーツツアラーへと路線変更。排気量を拡大してツーリングや日常でも扱いやすいトルク感溢れる乗り味とタンデムでの快適性も向上させて現在のVFR800FのルーツとなるVFRに変身し、熟成を重ねてきた。そして2014年には近年人気のクロスオーバースタイルのVFR800Xも加わった。

1998 VFR
RVF/RC45のエンジンをベースにストロークを延長して781ccに排気量アップし、大幅にトルクを向上してツーリングや日常の扱いやすさを高めた。PGM-FI(電子制御式燃料噴射装置)やエアインジェクションシステムにより環境性能も向上している。

2002 VFR
回転域で吸排気バルブの作動数を変える制御システム「V4 VTEC」を装備し、カムギアトレーンからサイレントカムチェーン方式に変更して静粛性をアップ。鋭角的なカウリングやセンターアップマフラーでスタイルも一新。国内販売は2008年で終了したが、欧州では引き続き販売した。

2014 VFR800F
スタイルを中心に全面刷新。メインフレームやV4エンジンは基本的に前モデルのVFRを踏襲するが、トラクションコントロールを採用したり新形状のスイングアームなど変更箇所は多岐に渡る。

2014 VFR800X
VFR800Fから派生したクロスオーバースタイル。前後サスペンションのストロークを拡大し、最低地上高をアップして走破性を高める。

先進のスポーツツアラーが新登場

初代VF登場から28年、ついに新型V4エンジンが登場。既存の90度V4とはまったく異なるシリンダーバンク角76°に28°位相クランクピンの4バルブOHCエンジンは、排気量を大幅に拡大した1236cc。低回転域のフラットなトルクと高回転域の伸びを併せ持ち、バランサーを装備せずに振動を打ち消し、スポーツツアラーが求めるパフォーマンスにしっかり応える。2014年にはクロスオーバースタイルのVFR1200Xも加わった。

そんな新世代のV4ながら、両車とも国内モデルは2016年に生産終了と短命に終わったのが残念だ。

2010 VFR1200F
完全新設計のV4エンジンは、ホンダ初のスロットル・バイ・ワイヤでコントロール。また二輪車では世界初の有段式自動変速機「デュアル・クラッチ・トランスミッション」を装備したモデルもラインナップする。

2014 VFR1200X
VFR1200Fから派生したクロスオーバーコンセプトモデルで、ワイヤースポークはチューブレス仕様。MTモデルは存在せず、DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)仕様のみをリリース。

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