
●文:モーサイ編集部(阪本一史)
後年は250ツアラー/250スーパースポーツと独自の存在感を発揮
1985年登場のロードスポーツモデル・GPZ250R用として新開発された250cc水冷DOHC4バルブ並列2気筒。これを原型とするエンジンが、2010年代までカワサキ製250ccロードスポーツの主力エンジンであり、つい先日まで現役だったことをご存知だろうか? (ヴェルシス-X250用/2023モデルにて生産終了)
40年近い時が流れる間、1990年代以降は排出ガス規制が厳しくなっていき、バイクのトレンドも大きく変化していった。そうしたなかで、カワサキ製250cc水冷DOHC4バルブ並列2気筒は、どのようなモデルに搭載され、各車はどのようなキャラクターだったのか? 当記事では1990年代以降のロードスポーツモデルを中心に解説したい。
カワサキZZR250[1990-]:ZZRシリーズのスポーツツアラーらしさを継承
1990年に入ると、カワサキはスポーツツアラーのイメージを統一していく。
それまでのGPXシリーズに代わり、国内外に「ZZR」と名付けた4気筒モデルを1100/600/400と送り出し(一部仕向地用に500も存在)、最小排気量版として並列2気筒の「ZZR250」をラインアップしたのだ。
【1990 KAWASAKI ZZR250】ZZRシリーズの最小排気量版として1990年に登場したZZR250。タイ生産版の後期型も含め、カワサキ水冷250cc並列2気筒搭載車としては17年にわたって販売された長寿モデル。■水冷4サイクル並列2気筒DOHC4バルブ ボアストローク62.0×41.2mm 総排気量248cc 最高出力40ps/12500rpm 最大トルク2.4kg-m/10000rpm 変速機6段リターン ■全長2050 全幅700 全高1125 ホイールベース1405 シート高760(各mm) ■タイヤサイズF=100/80-17 R=140/70-17 車両重量146kg(乾燥) 燃料タンク容量17L ●当時価格:48万9000円
徐々にレーサーレプリカモデルを中心とした性能競争も翳りを見せ始めていたが、250ccクラスの4スト車では水冷並列4気筒、2スト車では水冷V型2気筒が、当然のように45psの性能で肩を並べていた時代に、ZZR250は一歩引き“250ccのツアラー”という立ち位置だった。
エンジンは、GPZ250R→GPX250Rの系譜を受け継ぐ水冷DOHC4バルブ並列2気筒ながら、騒音規制に対応しつつ中低速域の扱いやすさを重視した特性として、最高出力は40psとされた。この“小さなZZR”は、カワサキ250cc並列2気筒搭載車の中で、スタイルも基本構成もそのままに、もっとも長く続いたモデルとなった。
ただし、1999年に強化された排出ガス規制により、ZZR250および同エンジンは一度は生産中止となる。この規制では、国内各メーカーの各排気量帯でさまざまなモデルがラインアップ落ちを余儀なくされたのだ。
だが、ツーリングにも向く250ccモデルへの要望は根強く、カワサキは2002年にZZR250を復活。この機に生産をタイへと移管して生産コストの抑制も図り、規制に対応した水冷並列2気筒は、35ps/12000rpm、2.2kg-m/9500rpmへとスペックダウンしたものの、扱いやすい250ccツアラーとしての評価は変わらず、2007年まで継続販売されたのだ。
「250ccで何km/h出るか」「ちょっとチューンするだけで軽く45ps規制を超える」と若いライダーたちが盛り上がった時代にひと区切りついた後、“持て余さず、引き出しやすい性能で十分”というニーズも増えたことで、高性能の追求から一歩引いたZZR250は、結果的にロングセラーとなったのかもしれない。
カワサキ ニンジャ250R[2008-]:孤高の大ヒットで“250スーパースポーツ”という市場を開拓
排出ガス規制が強化されるたびに、ラインアップが寂しくなる国内バイク市場だったが、その煽りをさらに厳しく受けたのが2008年だった。これにより、ただでさえ減少傾向だった2スト車は原付に至るまで軒並み廃盤となり、さらに未燃焼ガスのコントロールがどうしても難しくなるキャブレター車も存続が困難となった……
※本記事は2022年1月2日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
日本語表記では「前部霧灯」。本来、濃霧の際に視界を確保するための装備 四輪車ではクロスオーバーSUVのブーム、二輪車においてもアドベンチャー系モデルが増えていることで、「フォグランプ」の装着率が高まっ[…]
Z1とともに、CB750Fourを挟み撃ちするねらいで生まれた、Z1ジュニア=Z650 公害やマスキー法、オイルショックなどが社会問題として声高に叫ばれ始めた1970年代、カワサキは2サイクルのマッハ[…]
意外なる長寿エンジン「ザッパー系」が積み重ねた31年の歴史 2006年12月、ゼファー750ファイナルエディションの発売がアナウンスされ、1990年初頭から続いたゼファー750の16年におよぶ歴史が幕[…]
白バイがガス欠することはあるの!? 今回は、「白バイが警ら中にもしもガス欠になったら!?」について、お話したいと思います。結論を先に言うと、ガス欠にならないように計画を立てて給油しています。 私も10[…]
1998年登場のロングセラーモデル、ホンダCB1300シリーズの魅力とは? 今回は、私が白バイ隊員として約10年間、ホンダ CB1300に乗ってきた経験や感想を交えて、CB1300シリーズをお勧めする[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車 | カワサキ [KAWASAKI])
2020年モデル概要:快適装備と電子制御を新採用 発売は、2020年1月15日。マイナーチェンジが実施され、「エキサイティング&イージー」のコンセプトを堅持しつつ、装備がイッキに充実した。2019年モ[…]
遂に50ccクラスへ足がかりをつくる! 1980年にドイツのIFMA(ケルンショー)で、カワサキがAR50/80とオフロード車のAE50/80を発表したとき、世界のバイクメーカーに衝撃が走った。 なぜ[…]
Z1とともに、CB750Fourを挟み撃ちするねらいで生まれた、Z1ジュニア=Z650 公害やマスキー法、オイルショックなどが社会問題として声高に叫ばれ始めた1970年代、カワサキは2サイクルのマッハ[…]
直立単気筒はオフ車から転用せずロングストロークの専用設計! 1980年代のレプリカ全盛が過ぎると、各メーカーはパフォーマンス追求から多様なニーズを前提に様々なカテゴリーのモデルを投入した。 そんな中、[…]
意外なる長寿エンジン「ザッパー系」が積み重ねた31年の歴史 2006年12月、ゼファー750ファイナルエディションの発売がアナウンスされ、1990年初頭から続いたゼファー750の16年におよぶ歴史が幕[…]
最新の関連記事(バイク歴史探訪)
ボクサーエンジンの誕生、最強バイクとして世界中でコピー BMWといえば、2輪メーカーとしてスーパーバイクS1000系からボクサーのRシリーズなど、スポーツバイクで世界トップに位置づけられるメーカーだ。[…]
軽二輪の排気量上限=250ccスクーター登場は、スペイシー250フリーウェイから ホンダPCXやヤマハNMAXなど、ボディサイズは原付二種クラスでありながら排気量150〜160ccの軽二輪スクーターを[…]
1965年までは“クルマの免許”に二輪免許が付いてきた 80歳前後のドライバーの中には、「ワシはナナハンだって運転できるんじゃよ、二輪に乗ったことはないけどな(笑)」という人がいる。 これは決してホラ[…]
ホークシリーズ登場後、すぐにホークIIIを投入。“4気筒+DOHC”勢に対抗したが… 1977年の登場から1〜2年、扱いやすさと俊敏さを併せ持つホークシリーズは一定の人気を獲得したが、ホークII CB[…]
生産台数の約7割を占めた、ハーレーの“サイドカー黄金時代” 1914年型のハーレー初のサイドカー。ミルウォーキーのシーマン社がカー側を製作してハーレーに納入。マシン本体にはカー用のラグが設けられており[…]
人気記事ランキング(全体)
最新モデルはペルチェデバイスが3個から5個へ 電極の入れ替えによって冷却と温熱の両機能を有するペルチェ素子。これを利用した冷暖房アイテムが人気を博している。ワークマンは2023年に初代となる「ウィンド[…]
アウトローなムードが人気を呼んだフルフェイスがついに復活! 6月3日付けでお伝えしたSHOEIの新製品『WYVERN(ワイバーン)』の詳細と発売日が正式に発表された。 1997年に登場したワイバーンは[…]
バイクツーリングにおすすめの都道府県ティア表 バイクツーリングの魅力は、ただ目的地に行くだけでなく、そこへ至る道中のすべてを楽しめる点にある。雄大な自然が織りなす絶景、心地よいカーブが続くワインディン[…]
水冷Vツイン・ベルトドライブの385ccクルーザー! 自社製エンジンを製造し、ベネリなどのブランドを傘下に収める中国のバイクメーカー・QJMOTOR。その輸入元であるQJMOTORジャパンが、新種のオ[…]
東洋の文化を西洋風にアレンジした“オリガミ”のグラフィック第2弾登場 このたびZ-8に加わるグラフィックモデル『ORIGAMI 2』は、2023年1月に発売された『ORIGAMI』の第2世代だ。前作同[…]
最新の投稿記事(全体)
「2025 鈴鹿8耐 Kawasaki応援グッズ」を期間限定でオンラインショップにて販売 株式会社カワサキモータースジャパンは、2025年鈴鹿8時間耐久ロードレースに参戦するカワサキチームを応援するた[…]
バイクを愛するすべての人へ 去る6月7日(土)、東京のお台場に位置するBMW GROUP Tokyo Bayにて、BMWモトラッドが主催する『NIGHT RIDER MEETING TOKYO 202[…]
ホンダの大排気量並列4気筒エンジンをジェントルかつスポーティーに TSRは鈴鹿のマフラーメーカー「アールズ・ギア」とともに世界耐久選手権(EWC)を戦い、リプレイス用のマフラーも同社と共同開発していま[…]
0.1ps刻みのスペック競争 日本史上最大のバイクブームが巻き起こった1980年代は、世界最速を謳う大型フラッグシップや最新鋭レーサーレプリカが次々と市場投入され、国産メーカー間の争いは激化の一途を辿[…]
365GTB/4 デイトナ:275GTB/4を引き継ぎつつ大幅にアップデート 1968年のパリ・モーターショーでデビューした365GTB/4は、それまでのフラッグシップモデル、275GTB/4を引き継[…]