
現在の国産車では、当たり前になって普及したメカニズムは数多いが、そのいずれにも「初めて」がある。戦後から目覚ましい成長を遂げ世界に羽ばたいた日本の2輪メーカーは、海外の技術から倣いつつ、独自に技術を進化させていったのだ。当記事はデザインと機能にまつわる、国産メーカーの公道用量産車の「お初」をご紹介。
●記事提供:モーサイ
国産アメリカン〜通称ジャメリカン〜:ヤマハ XS650スペシャル(1978)
アメリカの映画「イージーライダー」以降、全世界的なチョッパーブームになった1974年に北米に設立されたリンカーン工場(ネブラスカ州)で生産を開始したアメリカカワサキでは、米国向けにふさわしいモデルとして、モーリス製キャストホイール、ジャーデンマフラー(4in2マフラー)などの米国製パーツを装備したアメリカンモデルを生産した。
別名「ショールームチョッパー」とも呼ばれたが、最初のアメリカンモデルが北米で1976年に限定生産されたKZ900LTD(欧州向けはZ1LTD)だった。Z1(900スーパー4)系の903cc並列4気筒を搭載した同車は、翌年Z1がZ1000系に進化して1015cc化されたのに合わせてZ1000LTDとなった。
一方、日本国内仕様車で初登場したアメリカンモデルは、1978年発売のヤマハXS650スペシャル。XS-1系の空冷4ストロークOHC2気筒を搭載した同車は、翌年キャストホイール仕様に変更された。
北米リンカーン工場で生産されたZ1系ベースのアメリカンがKZ900LTD(1976)
プルバックハンドルに段付きシート、寝かされたフォークの装備で国内市販車初のアメリカンモデルとなったXS650スペシャル(1978)
■ヤマハ XS650スペシャル主要諸元
エンジン:空冷4ストローク並列2気筒OHC2バルブ ボア・ストローク75.0×74.0mm 総排気量653cc
性能:最高出力51ps/7500rpm 最大トルク5.4kgm/5500rpm
変速機:5段リターン
車重:216kg
発売当時価格:43万5000円
純正フルカウル装備車:ホンダ GL1100インターステーツ(1980)
フルカウルが許可されなかった時代が日本では長く、国産メーカーでは、輸出向けのモデルが先行して採用した。最初のカウル装着モデルは1980年型の輸出車ホンダGL1100インターステーツや、カワサキKZ1300Bツーリングが公道車では最初だった。
国内販売車でのカウル解禁は1982年7月発売のホンダCBX400Fインテグラや同年8月のヤマハXJ750Dから。ただしCBX400Fインテグラはハーフカウル。フルカウルということで言えば、XJ750Dが初めてになる。
なお、カワサキGPzシリーズやスズキRG250Γ(1983~)も当初はハーフカウル仕様で、後にアンダーカウル仕様となった。
日本国内でのカウル認可前、海外向けモデルで初のフルカウル装備車となったGL1100インターステーツ(1980)
国内初のカウル認可車となったCBX400Fインテグラ(1982)は、ハーフカウルを装備
国内販売モデルで初のフルカウル装備車となったXJ750D(1982)
■ホンダ GL1100インターステーツ主要諸元
エンジン:水冷4ストローク水平対向4気筒OHC2バルブ ボア・ストローク75.0×61.4mm 総排気量1085cc
性能:最高出力81ps/7500rpm 最大トルク9.2kgm/5500rpm
変速機:5段リターン
車重:305kg(乾燥)
発売当時価格:──(輸出車)
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