
●文:モーサイ編集部(中村友彦) ●写真:山内潤也 ホンダ 渡辺昌彦
ホンダCLシリーズの決まりごとはアップマフラーぐらい
2023年5月に発売されたホンダCL250/CL500は、業界でも世間でも評判がいいモデルで、現時点での販売は好調なようである。でも僕の周囲には「あんなのCLじゃない」「クルーザーがベースのスクランブラーっておかしくない?」などと、異論を述べる人が存在する。
そういった意見はわからなくもないが、かつてのホンダが販売したCLの素性と乗り味は各車各様で、明確な決まりごとはアップマフラーくらいだったのだ。また、クルーザーがベースのスクランブラーは、確かに過去に前例が見当たらないものの、実際にCL250/500に乗って、クルーザーの気配を感じる場面はほとんどないと思う。
…などという話を編集部でしていたら、「それを記事にしませんか?」という展開になったので、当記事では歴代CLの特徴と個人的見解を記してみたい。ただし、50〜125ccクラスを含めると文字量が膨大になりそうなので、以下の文章で取り上げるCLは250cc以上のみである。
ドリームCL72スクランブラー(1962-):悪路走破性にかける意気込みの差異
昨今の2輪の世界では、“オフロードもある程度は走れるオンロード車”というのが、スクランブラーの一般的な認識になっている。
1960年にデビューしたCB72の派生機種として、1962年からホンダが発売を開始したCL72は(1966年にはCB77の派生機種となるCL77も登場)、日本製スクランブラーの原点と呼ばれることが多いのだが、このモデルは現行車で言うならトレール車・CRF250Lに相当する資質を備えていたのだ。
もっとも、当時の日本にはトレール車やオフロード車という概念が存在しなかったので、メーカーもメディアもCL72をスクランブラーと呼んでいた。とはいえ、CB72から転用した並列2気筒エンジンを除くと、セミダブルクレードルタイプのフレームや前後19インチホイール(リムはH型でスポークは40本)、容量10.5Lの小振りなガソリンタンク、頑丈な構成のステップなど、数多くの部品を専用設計したCL72からは、開発陣の悪路走破性にかける意気込みがヒシヒシと伝わってくるのだ。
【1962 HONDA DREAM CL72 SCRAMBLER】本文では派生機種という言葉を使っているが、CL72/CL77はその範疇に収まらないレベルの変更が行われていた。並列2気筒エンジンの最高出力は、CB72/CB77と同じ24ps/28.5ps。当時の悪路走破性を示す基準になる最低地上高は、CB72/CB77から50mm以上となる195mm/190mm。
[ベース車]ドリームCB72スーパースポーツ(1960-)
【1960 HONDA DREAM CB72 SUPER SPORT】1960年から発売が始まったCB72は、ホンダ初の250ccスーパースポーツで、1961年には兄貴分となる305ccのCB77が登場。フレームはダウンチューブが存在しないダイヤモンドタイプで、36本スポークのホイールは前後18インチ。最低地上高は140mm、ガソリンタンク容量は14L。
ドリームCL250(1968-):ロードスポーツCB250からの小変更に留まる
ところが、CL72の後継として1968年に登場したCL250は、そこまでの気合いを感じるモデルではなかった。ガソリンタンクやアップマフラーなどは専用設計で、フロントタイヤは18→19インチに変更されたものの、全体の雰囲気はあくまでも同年にデビューしたCB250のスクランブラー仕様(兄貴分として、CB350をベースとするCL350も併売)。端的に表現するなら、CB72とCL72の大差に対して、CB250とCL250は小差だったのだ。
【1968 HONDA DREAM CL250】CL72/77の後継車となるCL250/350は、CB250/CB350とほぼ同時期に開発。低中速重視の味付けが行われたエンジンの最高出力は、CL250:27ps/CL350:33ps。ホイールは前19/後18インチで、ガソリンタンク容量は9L。最低地上高はCB250/350+30mmの180mm。
[ベース車]ドリームCB250(1968-)
【1968 HONDA DREAM CB250】1968年に登場したCB250/350は、CB72/77の後継車。フレームはセミダブルクレードルで、全面新設計の並列2気筒エンジンは、CB250:30ps/CB350:36psを発揮。ホイールは前後18インチで、ガソリンタンク容量は12L。
CL400(1998-):第3世代はSR対抗馬
そして、CL250の生産終了から20年以上の歳月を経て、1998年から発売が始まった第3世代のCL=CL400は、かつてのCLとはまったく関係がないうえに、大差も小差もないモデルである。というのも、CL400にはベースと言うべき車両が存在しないし、新規開発のセミダブルクレードルフレームに搭載されるエンジンは、オフロードモデルのXR400Rから転用した空冷単気筒だったのだから。
なおCL400は、素性としてはCL72やCL250以上にオフロードが楽しめそうなのだが、レトロテイストを多分に意識したこのモデルの仮想敵はヤマハSRで、悪路走破性に対する配慮はわずかしか感じられなかった……
【1998 HONDA CL400】1998年にデビューしたCL400は、1960年代のCB450Dを思わせる左右出しアップマフラーを採用。オフロードモデルのXR400Rをベースとする空冷単気筒は29psを発揮。最低地上高は185mmで、乾燥重量140kg、装備重量155kg。250cc以上で歴代CLでもっとも軽い数値。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
モーサイの最新記事
「マウンテントレール」を提唱した新ジャンル:第一世代セロー225(1985~1989) 初期型セロー225のカタログは、ふたつ折りの中とじ2枚もので計8ページ。静かな山奥を想像させるシンプルな表紙に引[…]
並列4気筒エンジン:ホンダ ドリームCB750Four(1969年) イタリアのOPRAというメーカーの空冷OHCが並列フォアの始まり。この技術の権利を同じイタリアのジレラが購入して、空冷&水[…]
バイクを購入するための、自由になるお金があることが大前提 同居家族にバレずに……という悩みを抱える人のほとんどは、これまでの取材経験に基づくと、奥様の猛反対を受けている旦那さんか、親と同居している若い[…]
改めて知っておきたい”路上駐車”の条件 休暇を利用して、以前から行きたかったショップや飲食店を訪ねることも多くなる年末・年始。ドライブを兼ねたショッピングや食べ歩きで日ごろ行くことのない街に出かけると[…]
警察の交通取締りを受けた人の中には、こんなことを言う人が少なくありません。「ノルマのために検挙しやすい違反ばかり取り締まっているんだろ?」と。 また、過去に執筆した記事に対して「ノルマを達成するための[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
チャンピオンを生んだ野心作= “J”【カワサキZ1000J】 ロングセールスを誇った名車、Z1。それだけに信頼性もあった心臓部とフレームだが、さすがに1980年代になると抜本的な改良が求められた。 カ[…]
国産車として当時最大の1101ccをマーク【1978 ヤマハXS1100】 ヤマハもカワサキやスズキと同様に、1960年代までは2ストを主体に開発を続けてきたメーカーだ。しかし、自動車エンジン部門では[…]
1998年モデル:初代1300はとにかく巨大だった ヤマハXJR1200、カワサキZRX1100といった、CB1000SFを超える排気量のライバル出現で、ビッグネイキッド界は重厚長大化していった。そん[…]
「マウンテントレール」を提唱した新ジャンル:第一世代セロー225(1985~1989) 初期型セロー225のカタログは、ふたつ折りの中とじ2枚もので計8ページ。静かな山奥を想像させるシンプルな表紙に引[…]
GLの元となった水平6気筒試作車 CB750フォアの発売後、モーターサイクルキングとは何かを探るために試作された1台。ロータリーエンジンのような滑らかさを求めて水平6気筒としたが、ミッションを後ろにつ[…]
最新の関連記事(CL250)
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
250ccクラスは16歳から取得可能な“普通二輪免許”で運転できる バイクの免許は全部で7種類ある。原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制[…]
CL250は『これ1台で良い』とポジティブに思えるバイク! 大パワーや豪華装備の大型バイクに乗り慣れると、250ccっていう排気量のバイクは感覚的に『メインバイク』だと思えなくなってしまいがちです。私[…]
『Wheels and Wavesフェスティバル』でCL500/CL250のカスタム16車が競演 ホンダは、フランスのバスク地方ビアリッツで6月12日~16日に開催された『Wheels and Wav[…]
人気記事ランキング(全体)
いざという時に役に立つ小ネタ「結束バンドの外し方」 こんにちは! DIY道楽テツです。今回はすっごい「小ネタ」ですが、知っていれば間違いなくアナタの人生で救いをもたらす(大げさ?)な豆知識でございます[…]
V3の全開サウンドを鈴鹿で聞きたいっ! ここ数年で最も興奮した。少なくともヤングマシン編集部はそうだった。ホンダが昨秋のミラノショーで発表した「電動過給機付きV型3気筒エンジン」である。 V3だけでも[…]
1978 ホンダCBX 誕生の背景 多気筒化によるエンジンの高出力化は、1960年代の世界GPでホンダが実証していた。多気筒化によりエンジンストロークをショートストトークにでき、さらに1気筒当たりの動[…]
ファイナルエディションは初代風カラーでSP=白×赤、STD=黒を展開 「新しい時代にふさわしいホンダのロードスポーツ」を具現化し、本当に自分たちが乗りたいバイクをつくる――。そんな思いから発足した「プ[…]
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は…… ガソリン代の高騰が止まりません。 全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給され[…]
最新の投稿記事(全体)
2018年モデル:Z1/Z2モチーフ 発売は2017年12月1日。モチーフとなったZ1・Z2は、ショートピッチの燃料タンク形状とオレンジの塗色から「火の玉オレンジ」と呼ばれたカラーリング。これが伝説の[…]
オートレース宇部 Racing Teamの2025参戦体制 2月19日(水)、東京都のお台場にあるBMW Tokyo Bayにて、James Racing株式会社(本社:山口県宇部市/代表取締役社長:[…]
Schwabing(シュヴァービング)ジャケット クラシックなフォルムと先進的なデザインを合わせた、Heritageスタイルのジャケットです。袖にはインパクトのある伝統的なツインストライプ。肩と肘には[…]
新レプリカヘルメット「アライRX-7X NAKASUGA 4」が発売! 今シーズンもヤマハファクトリーから全日本ロードレース最高峰・JSBクラスより参戦し、通算12回の年間チャンピオンを獲得している絶[…]
小椋&チャントラの若手が昇格したアライヘルメット まずは国内メーカーということで、アライヘルメットから。 KTM陣営に加入、スズキ、ヤマハ、アプリリアに続く異なる4メーカーでの勝利を目指すマー[…]
- 1
- 2