「白バイは自分で整備!」「パトカーも管理!?」元警察官が語る白バイのメンテナンス事情
箱根駅伝の先導をはじめ、年末年始も各地で公道の安全を守っている白バイ警官たち。そんな彼らの相棒である白バイは、整備や保管をどのようにしているのだろうか? 割当のある車両を自分でメンテナンスするのか、専門の業者にが任せているのか、疑問は尽きない。そんな疑問に、元白バイ警官の宅島奈津子さんが答える。
●文:[クリエイターチャンネル] 宅島奈津子
オートバイのメンテナンスは大切
オートバイや乗用車に限らず、どんな乗り物でもメンテナンスは必要不可欠です。定期的にメンテナンスを行うことで、長く乗り続けることができるだけでなく、事故を防ぐことにもつながりますから。
中には、オートバイに乗るよりも、バイクをいじること、つまりメンテナンスすることの方が好きだと言う人もいるぐらいですよね。専門的な知識や技術が必要なこともありますが、初心者でもできる整備もたくさんあります。自分でメンテナンスすると、愛車への愛着もさらに湧いてくるというものです。
白バイの保管/整備は自分で行う
白バイ隊員にとって、白バイは大切な相棒です。なにせ、それぞれ1台ずつ担当する車両が決まっていますから。自分の白バイは基本的に自分で、管理・整備します。
とはいえ、走行前の簡易的な点検は日々行いますが、細かいところまで毎日チェックするわけではありません。定期的に、交通機動隊全体で行う車両点検日が設けられていて、そのときに細部まで点検することになっています。ある程度は隊員自身で行いますが、細かいパーツの交換や整備士でないとできないようなメンテナンスは、指定の整備工場にお願いしていました。
運転技術には長けている白バイ隊員ですが、みんながみんな、車両整備が得意なわけではないのです。私も、一般女性よりは少し触れるかなといった程度で、正直言って、車両整備の時間は好きではありませんでした。
一方で、洗車やワックスがけは好きでした。メンテナンスの知識や技術は乏しかったので、先輩隊員の見よう見まねで、わからないときはその場で聞いて教えてもらいながら行っていました。
管理するのは自分の車両だけじゃない
大事なパートナーである車両は一般的な業務、すなわち交通取締りやパトロールに使用されるわけですが、こういった車両のほかに、公道を走らない訓練用の車両もあります。それら訓練用の白バイは、基本的に新隊員(1年目の白バイ隊員)が管理します。
訓練後は必ず洗車するのですが、小隊長や先輩方のなかには、「自分のもやっといて」という先輩がいたり、「俺の車両には一切触れるな」という先輩もいたりするので、誰がどんなタイプなのか把握しておくのも仕事のうちでした。
前述したように、私は洗車やワックスがけは好きでした。オートバイに関心のない方からすると、「バイクも洗車するの⁉」といった感じかもしれませんね。私も自分で所有するまでは、バイクを洗車するという概念がなかったような記憶があるぐらいでした。
でも実際、自分で所有して管理してみると、日に日に愛着が湧いてくるのを感じましたね。洗車やワックスがけをすることで、感謝の気持ちが伝わっているようで、そういったメンテナンスを楽しみながらできるようになっていったのかもしれないと、今は思います。
二輪車のみならず四輪車もメンテナンス
白バイ隊員は白バイだけを管理・整備していると思われがちですが、じつはパトカーのメンテナンスも行っています。白バイ隊員は交通機動隊に属しており、雨の日や夜間は、通常のパトカーや覆面パトカーに乗って交通取締りを行っているからです。パトカーの整備も業務の一部なのです。
白バイならではの整備はあまりない
私が現役だった2010年代、沖縄県警における白バイはホンダCB750やCBX750、CB800、スズキのGSF1200Pが主流でした。2020年からは、警視庁でBMW車も導入されており、うらやましい限りです。余談になりますが、将来的にそうなることがわかっていたら、警視庁管轄の白バイ隊員を目指していたかもしれません(笑)。
みなさんもご存知のように、白バイと一般車両の大きな違いはサイレンや赤色灯、スピーカー、速度計測器の搭載です。そのため、車両の整備を行うときは、それらが正常に作動するか、といったことも確認しなければなりません。この点を除くと、車両の整備を行ううえで、一般車両と大きく異なるところはないといえます。
白バイはもちろん、一般車両であっても、路上を走行している際の故障や破損はあってはならないこと。大きな事故を招きかねません。そのために日頃の整備を怠らず、メンテナンス自体も楽しんで、ご自分の愛車を大切にしてくださいね。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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