【初心者もわかるカワサキ エリミネーターの系譜】既成概念を「排除」して拓いたストリートドラッガーとクルーザーの未来!
●文:[クリエイターチャンネル] 88サイクルズ@てんちょー
不死身のマシン エリミネーター
AIロボットの暴走…スカイネット…ジャッジメントデイ…やっぱAI時代に改めてチェックしときたい映画は「エリミネーター」だよね! えっ!?それは最近復活したカワサキのバイクの名前だって?
そう、エリミネーターといえば2023年にカワサキから発売された400㏄クラスのスポーツクルーザーです。2023年度の251㏄~400ccクラスで販売台数2位にランクインするなど早くも人気になっているバイクだね。そんなエリミネーターには濃ゆい先代ファミリーが存在するのです。今回はエリミネーターシリーズの歩みを振り返りながら、新型にも迫っていきます!
カワサキの試行錯誤で生まれたエリミネーター
時は1984年、エリミネーターシリーズが登場する少し前にとある画期的なバイクがカワサキから登場していました。それがGPz900Rです。新世代の水冷並列4気筒908ccのエンジンを搭載し、115馬力のパワーで当時の世界最速250km/hを記録したTOPGUNのバイクだね!
一方でこの頃はアメリカンクルーザージャンルにおいては方向性を模索していた時期でした。海外向けモデルのVZ750 TWINでVツインエンジンのバイクを作ったり、国内ではEN400 TWINで並列2気筒エンジンのバイクを作ったり色々試行錯誤していたんです。
そんな中、1985年に突如登場したのがエリミネーター900です!
なんとあのGPz900Rの並列4気筒エンジンをベースに、加速を重視したセッティングにしてクルーザーの車体に搭載しちゃったんです! エリミネーターは直線で速さを競うドラッグレースという競技に使用されるかのようなディティールでまとめあげられており、その姿はザ・無骨。車名の「エリミネーター」とは「排除するもの」という意味です。車体の特長に負けないインパクトある名前だよね。
同じ年には国内向けに750㏄自主規制に合わせたエリミネーター750も登場しました。
その後、海外向けのエリミネーター900はモデルチェンジでGPZ1000RXのエンジンを搭載したZL1000に進化します。
あれ?「エリミネーター」って名前が無いよ!? そうなんです。ちゃんと進化しているのにエリミネーター界では知る人ぞ知る存在となっております。
このように麺固め味濃いめな感じで登場したエリミネーターはここから超大人気車に…はならなかったんです。なぜかというと強力なライバルが登場していたから。
ライバルの筆頭といえるのはヤマハVMAX1200でしょう!
豪華装備の最高級ツアラーだったベンチャーロイヤル用の水冷V型4気筒1198㏄エンジンを搭載したマッチョなドラッガーです。
そのほかにもホンダのX4やハーレーダビッドソンのV-Rodシリーズなどのライバルが続々登場し、エリミネーターと共に「公道を走れるドラッグマシンばりの直線番長」という意味の「ストリートドラッガー」なるジャンルを開拓していきました。
ライバル登場でエリミネーターはどうなっちゃうの!?…と思いきやこの頃のカワサキはそんなのおかまいなくエリミネーターワールドを拡張していきます!
どんどん広がるエリミネーターワールド
1986年にはエリミネーター400が登場してミドルクラスにもエリミネーター旋風が吹き荒れます。
1988年にはビキニカウルを装着したより走りを感じさせるスタイルのSEとカラフルでメッキがキラキラのLXという二本立てになります。
そして1993年のモデルチェンジで再びエリミネーター400に統合されて、その際にデザインもドラッガーのイメージからクラシック系のアメリカンクルーザーに寄っていくマイルドなものになりました。それにしてもすごい色だよね!
その翌年の1987年にはエリミネーター250も登場!1988年には400と同様にSEとLXが登場しています。
そしてこの後エリミネーター250には大幅なモデルチェンジが施され、1996年にエリミネーター250Vに生まれ変わります!
1990年代に巻き起こったアメリカンブームを受けてVツインエンジンを搭載したエリミネーター250V。でもこのエンジンは35馬力を発揮するパワフルなものでした。エリミネーターシリーズの中では最も長い2007年までラインナップされるというロングヒットになったバイクでもあります。
さらに1997年には125㏄の原付二種にもエリミネーターが登場しています。排気量の概念をエリミネートしたカッコ良さだよね!
これ以降エリミネーターはしばしの眠りにつき、バルカンシリーズがクルーザーの主力として展開されていきました。
新型エリミネーターの登場
時は流れて2011年にエリミネーター復活のカギになるNinja400Rが登場します。ER-6fをベースにエンジンを400㏄化したマルチフルカウルスポーツです。
このバイクが2014年にNinja400へと名称が変わり、2018年にNinja250とフレームやサスペンション、外装、灯火類など、基本構成の共通化を図る大がかりなモデルチェンジを受けます。この際にエンジンが刷新されグローバル対応の新しい2気筒エンジンが誕生しましました。
そして新設計のトラスフレームに先ほど出てきたNinja400の水冷4ストローク並列2気筒398㏄エンジンを搭載したスポーツクルーザーが今回の主役、新型エリミネーターなんです!
Ninja400のエンジンありきの企画だったようでより多くの人にフレンドリーに楽しめるようなまとめ方を模索した結果がこのバイク。そして出来上がったバイクに、カワサキのレジェンドネームである「エリミネーター」が与えられました。
だからエンジン、ミッションのセッティングはフレキシブルなNinja400の特性そのままで最高出力が48ps/10000rpmというパワフルさももそのまま! そしてこの車体のボリューム感にしてカタログ値の車両重量はNinja400より9kg重いだけという車体の軽さは、想像以上の軽快感が楽しめること必至。
そしてカワサキの400㏄以下クラスで初となるETC2.0車載機が標準装備で利便性への配慮もぬかりないね!
更に上級モデルのエリミネーターSEにはビキニカウルやフォークブーツ、USB-タイプCの電源ソケットに加え、量産バイクとして世界初となるGPS対応の前後2カメラドライブレコーダーも装備しています! すごいぜカワサキ!
現代のクルーザージャンルは新たな時代に突入した様に見えます。
ドゥカティのディアベルシリーズやトライアンフの新生ロケットⅢ、2024年現在は海外向けのみながら、カワサキ自身からはバルカンSといった従来のアメリカンクルーザーのイメージに囚われない新しいスポーツクルーザーが続々誕生していて、一層色々な楽しみ方ができるジャンルに変化してきているよね。
エリミネーターも過去の「ドラッガー」という自らの殻をエリミネートして「Ninja400のエンジンを搭載するスポーツクルーザー」という新たな価値を打ち出している、そんなバイクだとてんちょーは感じています!
まとめ:新時代のスポーツクルーザー エリミネーター
クルーザーの方向性を模索していたカワサキ。そんななかスポーツクルーザーをドラッガーとして打ち出すというコンセプトでエリミネーターシリーズが誕生しました。ライバルたちと共に「ストリートドラッガー」というジャンルを作ったエリミネーターは、現在のスポーツクルーザーの概念を何年も先取りしているようにも見えるものでした。
常に既成概念を覆してきたエリミネーターは新型となってこれからのスポーツクルーザーの未来を切り開く走りを見せるか!? みんなもぜひエリミネーターに乗ってクルーザーの未来を覗いてみようぜ!
88サイクルズ Youtube本店では、今回の記事で取り上げたバイクをてんちょーが自由気ままに語り散らかした動画版「バイク小噺」を公開中です。Youtubeにも遊びに来てね!
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。
最新の関連記事(てんちょー)
バイクという乗り物の大きな魅力のひとつが多種多様な構成のエンジンです。みなさんもエンジンが気になって調べたことがあるんじゃないでしょうか。そこでよく出てくるのが「空冷」や「水冷」というワードです。これ[…]
細身のジャケットにワイシャツとネクタイ…ブリティッシュトラッドなコーデって、パリッとした王道スタイルだよね! そういえばバイクでも英国風なトラディショナルバイク、ホンダGB350シリーズが、人気になっ[…]
ホンダの英国車風シリーズ「GB」 ミドルクラスで大人気のバイクのひとつといえば、ホンダのGB350だよね! じつは、このGBという名前、かつてのホンダ、英国風カフェレーサーシリーズから引き継がれている[…]
BIGなCBとBIGな企画 ビッグマック! ビッグサンダー! ビッグカツ!! てんちょーもBIGになってバイクをもっと布教したい! そう、目標はホンダのBIG-1ぐらい大きくなきゃね。え、BIG-1っ[…]
1分でわかる記事ダイジェスト ハンターカブという通り名 ホンダのスーパーカブシリーズの一員「ハンターカブ」。オフロード性能を高めたアドベンチャーなカブで、アウトドアテイスト溢れている。その歴史と由来を[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
400ccクラス並みのスタートダッシュを誇るパワーユニット搭載 カワサキは、原付二種クラスに同社が初めて投入した公道走行可能な電動スポーツバイク「ニンジャe-1」およびネイキッド版「Z e-1」の20[…]
2018 カワサキ ニンジャ400:250と共通設計としたことでツアラーから変貌(2018年8月30日公開記事より) 2018年型でフルモデルチェンジを敢行した際、従来の650共通ではなく250共通設[…]
2018 カワサキ ニンジャ250:電スロなしで全域をカバー/限界性能もアップ(ヤングマシン2018年1月号より) 伸び上がる! レッドゾーン以降もキッチリ回り、従来型より明確に高回転パワーがアップし[…]
カワサキモータースジャパンは、SHOEIとのコラボレーションモデル『カワサキ X-Fifteen ESCALATE(エスカレート)』を2025年1月8日より全国のカワサキプラザ限定で予約受付を開始する[…]
水平ゴールドラインのニューカラーが2色展開しSEも同時発表、半年後には50周年車! カワサキは2021年8月にZ900RS/カフェの2022年モデルを発表。Z900RSには1975年型Z1Bで採用され[…]
人気記事ランキング(全体)
私は冬用グローブを使うときにインナーグローブを併用しています。防寒目的もありますし、冬用グローブを清潔に保つ目的もあります。最近、長年使い続けたインナーグローブが破れてしまったこともあり、新品にしよう[…]
アクセルワイヤーが長すぎた!というトラブル ハンドルを交換して長さが合わなくなってしまったり、はたまたケーブルそのものが痛んでしまったり。こうしたアクセルワイヤー(スロットルケーブル)を交換する際、「[…]
白バイ隊員はバイクバカ⁉ 白バイに乗りたい、白バイ隊員になりたい、と白バイ隊員を目指す警察官のなかでバイクに関心のない人はいないと言い切っていいかと思います。少なくとも私が知るなかではひとりもいません[…]
2018 カワサキ ニンジャ400:250と共通設計としたことでツアラーから変貌(2018年8月30日公開記事より) 2018年型でフルモデルチェンジを敢行した際、従来の650共通ではなく250共通設[…]
高回転のバルブ往復にスプリングが追従できないとバルブがピストンに衝突してエンジンを壊すので、赤いゾーンまで回すのは絶対に厳禁! 回転計(タコメーター)の高回転域に表示されるレッドゾーン、赤くなっている[…]
最新の投稿記事(全体)
グローバルサイトでは「e-アドレス」「アドレス125」と表記! スズキが新型バッテリーEV(BEV)スクーター「e-ACCESS(e-アクセス)」、新型スクーター「ACCESS(アクセス)」、バイオエ[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
時期が合えば水仙と桜の共演も 日本の三大水仙群生地と呼ばれているのが、福井県の越前海岸と、兵庫県の淡路島、そして千葉県の南房総:鋸南町である。鋸南町の水仙は12月中旬から1月下旬が見頃で、2025年も[…]
しっかりとした防寒対策をすれば冬ならではの魅力が楽しめる! じっとしているだけでも寒い季節…さらに走行風を浴びるバイクって何が楽しいの? と思われる方も多いかもしれません。たしかに寒さの感じ方は、人そ[…]
TRIJYA(トライジャ):カフェレーサースタイルのX500 パンアメリカやナイトスターなど水冷ハーレーのカスタムにも力を入れているトライジャ。以前の記事では同社のX350カスタム車を掲載したが、今回[…]