1台4役のトランスフォーム系ヘルメット「NOLAN N70-2GT」レビュー

●文:[クリエイターチャンネル] 相京雅行
Youtubeの視聴者からレビューリクエストがあったので、今回はノーランのN-70-2GTをご紹介します。
N-70-2GTはフルフェイスをベースに、チンガードを外してスポーツジェット、シールドを外してストリートジェット、バイザーを付けてオフロードスタイルにできるヘルメットです。
それでは早速付属品からご紹介します。
N70-2GTの付属品
ノーランヘルメットはイタリアの本社工場で生産されていますが、箱もイタリア国旗を象徴するようなトリコロールカラーが採用されています。
ヘルメット本体は黒基調の収納袋に収められています。裏は柔らかい生地に切り替えることで傷などを防ぎます。
入り口をギュッと絞ることでヘルメットの飛び出しを防ぐことができますが、紐が短くて肩掛けできないのは、持ち歩くことの多い筆者にとって残念なポイントの一つ。
シールドの曇りを防ぐピンロックシートは貼り付けではなく、シールドピンに引っ掛けるタイプなので、位置決めが苦手な人も安心です。
取り扱い説明書は厚めの英語バージョンが付属されていますが、デイトナ監修の写真入り説明書も付属されていて、シールドや内装、ピンロックシートの脱着などが書かれているので安心です。
その他にチンガードを外してスポーツジェットモードにする際に使用するチンガードプラグ、シールドを外してストリートジェットで使う際のシールドキャップ、オフロードスタイルで使うバイザーなども付属されています。
N70-2GTのデザイン
N70-2GTは脱着可能なチンガード周りにデザイン上の特徴も集まっています。
まずシールドですが、一般的なフルフェイスヘルメットと異なり、スポーツジェットのように顎まで覆っていて、チンガードはシールド内側に納まるスタイルです。
それに伴いシールド下側にベンチレーション用のプラスチックパーツが装着されています。
シールドをあげてみると、オフロードヘルメットを彷彿させるゴツゴツしたチンガードが確認できました。シールド形状が秀逸なので、シールドを閉じているとスポーツタイプのフルフェイスですが、チンガードが露出するとオフロードヘルメットという印象に変わります。
サイドから見るとボタンのようなパーツ3点とトルクスネジが1点。光沢があるので目を引きます。
左側のシールド下には「N-COM」という表記を発見。これはインカムをヘルメット内に埋め込むシステムの様ですが、日本未発売なのはちょっと残念。
上から見ると流線形のヘルメット本体にエアロとベンチレーションを兼ねたパーツがマウントされているように見えます。
後頭部中央にあるN70-2GTのロゴ入り艶消しプラスチックパーツとエアアウトレットのパーツがデザイン上のアクセントになっています。
規格はイタリアモデルをベースにSG・PSEに準拠する形で取得されていますが、イタリアモデルはフルフェイスとスポーツジェットいずれの規格も取得しており、チンガードの強度テストもパスしています。
カラーは現在単色のみがラインナップされ、スレートグレー、ソリッドフラットブラック、ソリッドメタルホワイトの3色。お値段は5万5000円。
帽体はMサイズ用とL・XL用に2つ用意されています。
N70-2GTの機能性
チンガードは上部左右にある突起を押しながら引き抜くことで取り外し可能です。
シールドに隠れる下側にはベンチレーションが左右に用意されており、シールドちょい開け時に口元へ風が流れる設計です。
シールドを全開まで上げた状態でシールドベース横のレバーを上げると簡単にシールドが外せました。
この状態でチンガードプラグとシールドキャップを付ければストリートジェットスタイルです。
逆の手順でバイザーを取り付けして、チンガードを元に戻せばオフロードスタイルの完成。バイザーとチンガードはいずれも未塗装の艶消しカラーなので相性バッチリです。
ヘルメット左下のレバーを操作するとインナーバイザーが出てきますが、4段階で調整が可能。
正直全開と全閉しか使わないと思いますし、ヘルメットの開口部が広い事もあって、もう少し長さが欲しかったかもしれません。しまう際はレバー前側のボタンを操作します。
ベンチレーションは頭頂部中央と左右の合計3か所。バイザーを装着していても邪魔にならない位置にノブがあり、パーツ自体も大きめなので操作は簡単です。
顎紐は太めでしっかりしており、ラチェットバックル式を採用。受け側は金属、差し込み側はプラスチック製です。
インカムは専用インカムを埋め込む都合上、ヘルメット下淵が厚めになっており、クリップタイプで挟み込むのは難しそう。
インナーシールド操作レバーの後ろにフラットなスペースはありますが、専用インカムの取り付けスペースが邪魔になりそうです。
N70-2GTの内装
日本のヘルメットに慣れていると、トップ、チークパッド左右、顎紐カバー左右の5点が一般的ですが、N70-2GTの内装はこれらが全て一体化しています。
色々なヘルメット内装を外してレビューしましたが、取扱説明書を見ないと外し方がわかりませんでした。
ただし、取扱説明書を見て構造を理解すれば脱着は簡単。チークパッド前側のホックを外して、顎紐を引き抜き、帽体に刺さっている7カ所の爪を引き抜けば内装が外れます。ホックや爪は精度が高いので、パチパチっと気持ちよく取り外しが可能です。
内装のイメージとしては通気性がとても良さそうに見えます。頭を守るクッションはあちこちパンチングされ、一部生地はメッシュに切り替えられています。
国産ヘルメットと比べるとチークパッド周りのクッション範囲が狭いようにも見えます。
見た目的には赤い差し色が入っており、被り口はレザー調に切り替えるなど高級感もあります。
また変わった特徴としてはネックロール・アジャスターがついています。被り口を狭くして巻き上げの風を防いだり、緩くして脱着を楽にするなどユーザーの好みに合わせて調整可能。
チンガードについているカーテンも取り外しが可能。使い始めは少し硬めなので、外す時に少し緊張しますが、5カ所の爪で刺さっています。
生地は厚めでしっかりしていますが、長さはちょっと短いように感じます。チンガード内に納まるような形状になっていることが多いですが、外側に飛び出すような形状になっているのも特徴です。
内装を外した帽体をチェックしてみると、耳あたりに丸いクッションがついていて、外すことでインカム用のスピーカースペースになります。内装も耳のあたりはメッシュに切り替えられていて音の通りを良くしています。
重さ
N70-2GTのMサイズの重さを測定してみたところ、1764gでした。
一般的なインナーバイザー付きのフルフェイスヘルメットと比べると100g程度重い印象です。
インカムを帽体内に埋め込む機構や、チンガードの脱着機構などを追加したことで増量しているのでしょう。
※ヘルメットは製造時に重さに個体差が発生します。単色とグラフィックモデルだと後者の方が重くなる傾向があります。
サイズ感
筆者はArai、SHOEI、KabutoいずれのヘルメットもMサイズがピッタリ。
今回はイタリア製のNOLANヘルメットですが、こちらもMサイズを被ってみたところ、違和感はありませんでした。
欧州製のヘルメットの場合、横幅が狭く感じることもありますが、内装などがジャパンフィットに調整されているようです。
試用レビュー
愛車のCRF250ラリーに乗ってN70-2GTをベースのフルフェイススタイルで使ってみました。
普段1400g程度の軽量なヘルメットを使っているため、N70-2GTを持ってみると重く感じたのですが、被ってみると重要バランスがとれており、意外にも重くは感じませんでした。
シールド、インナーバイザーなどの操作は運転中でも可能ですが、シールド開閉時は多少ヘルメットが上に引っ張られるような感覚があります。
チンガードが一般的なフルフェイスと比べてコンパクトなので開口部が広く、視界はジェットヘルメットに近いぐらい開放感があります。
シールドの微開ポジションを試してみたところ、隙間から風が入ってくるだけでなく、チンガードのベンチレーションからも口元に風が入ってくるので息苦しさが緩和されました。
しばらく走って頭を蒸らした後にベンチレーションを開放。もちろんグローブをつけたままで操作しましたが、手間取ることはありませんでした。
走り出してみると低速にも関わらず頭頂部に風がしっかりと抜けていきます。速度に乗じて多くの風を取り込むことができましたが、低速走行時でも頭が蒸れることはありません。
シールドに配置されたベンチレーションは曇り止めの役割が大きいですが、こちらを開けてみるとシールド上方向に風が流れ、ヘルメット内の温度が多少下がったように感じました。
風が強い日だったこともあり、静粛性をチェックするにはシチュエーションが悪かったのですが、懸念していたチンカーテンの張り出しが風切り音になることもなく、ヘルメット内は静かですが、チークパッドが緩めという事もあり、ヘルメット外の音は比較的しっかり聞こえる印象です。
一般道から高速道路で時速100キロ巡行まで試してみましたが、直進時だけでなく、レーンチェンジの際に大きく首を振ってヘルメットを横に向けても抵抗を感じることはありませんでした。
動画でレビューを見たい方はこちら
全てのスタイルが妥協なく格好良い
全体的な高性能という印象が残ったN70-2GTですが、どのスタイルにしてもデザインに妥協がなく格好良く見えるのが最大の推しポイントでした。
スポーツジェット、ストリートジェット、オフロード、いずれのスタイルにしてもパーツを足すことで完成しており、そのまま売られていたかのようです。
乗る車両や気分次第で様々なスタイルにチェンジできるので、複数台バイクを所有している人にもお勧めです。
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