花粉シーズン真っ盛り! 車体に付着した花粉や黄砂は放置しておいてもOK?
●文:[クリエイターチャンネル] Peacock Blue K.K.
車体が黄色っぽくなってしまう…花粉や黄砂がバイクに与える影響とは
バイクを楽しむにうってつけの季節=春。ツーリングスポットや道の駅はライダーたちで賑わいを見せ、展示会やミーティングなど各地でさまざまなイベントも開催されています。
一方で、春は花粉症と黄砂の季節でもあります。毎年多くの人がその症状に悩まされており、もはや春の風物詩のひとつと言っても過言ではありません。特に2023年は例年と比べても花粉の飛散量が多く、環境省によると、過去10年で最高の観測値との報告がなされています。
そんな花粉や黄砂が降り積もり、うっすら黄色味を帯びてしまったまま放置されているバイクを目にしたことがある人もいるでしょう。では、車体に付着した花粉は放置しておいても良いのでしょうか。
バイクに花粉や黄砂が付着した状態のまま長期間放置しておくと、こびりつきやシミの発生/傷つきなどのさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。
花粉は粘り気を帯びており、車体に付着しやすいという特徴があります。これは雨や空気中の水分と接触することで、花粉の内部からペクチンと呼ばれる水溶性のタンパク質が表面に染み出してしまうためです。
ペクチンは人体には無害で、食品の増粘剤として使用されることもありますが、バイクにとっては有害な物質です。ペクチンが染み出た花粉が車体に付着すると、その粘性ゆえに接着剤のような役割を果たし、空気中の黄砂やチリ、微細なゴミなどの異物も付着させてしまいます。この状態で乾燥すると、結果として異物がこびりついて固まってしまうのです。
加えて、塗装面に付着したペクチンは水分とともに徐々に内部へと侵入し、周囲の塗装成分と結合する性質を持ちます。侵入したペクチンは乾燥とともに収縮しますが、このとき、結合した塗装成分も巻き込んで収縮させることで、その部分の塗装は均一性を失い、塗装ムラ、つまりシミを形成してしまうのです。
また、黄砂によって車体が傷つく可能性もあります。黄砂の正体は、砂漠や東アジアの乾燥地帯から巻き上げられ、偏西風に乗って飛来してきた石英や長石などの砂、および微細なミネラルです。
微粒子とはいえ、角張った形状であったり、一般的な塗装面よりも高い硬度を持つ成分を多く含んだりすることから、車体に擦れると微細な傷を無数につけてしまうことがあるというわけです。
花粉や黄砂によるダメージを抑えるには?
このように、付着してしまった花粉や黄砂は、洗車などで迅速に除去することが望まれます。とはいえ、いきなり乾拭きや水拭きでぬぐい取ってしまうと、車体に硬い黄砂を擦り付けることになり、かえってダメージを与えかねません。
車体に付着した花粉や黄砂は、どのように除去するのが適切なのでしょうか。
まずは水のみで、付着した花粉や黄砂をできる限り洗い流します。粘性が高く水で洗い流せなかった分は、よく泡立てた洗剤を使ってなでるように落としましょう。
このような手順を踏むことで、車体へのダメージを最小限にとどめつつ、効果的に除去することができます。また、洗車は極力風の弱い日を選び、洗車後はマイクロファイバーを使って早急に水気をふき取ったのち、ボディカバーをかけて保管するなどして付着対策を行うことも重要です。
では、シミやこびりつきなど、洗車で落としきれない汚れがついてしまった場合はどうすればよいのでしょうか。
前述したように、これらの原因は花粉に含まれるペクチンの性質に由来します。つまり、なんらかの方法でペクチンを化学的に失活させることができれば、汚れを除去することが可能というわけです。
最も簡単で効果的な方法は、熱を与えることです。タンパク質であるペクチンは高温にさらされると分解し始めるため、お湯/ドライヤー/ホットガンなどで80℃程度に加熱することで除去可能です。
ただし、グラフィック付近や樹脂パーツに関しては融解/変形のリスクが生じるので、慎重に行いましょう。
また、夏まで放置するのもひとつの手です。地域やカラーにもよりますが、炎天下において塗装の表面温度は50℃を超えるため、時間はかかるものの放っておくだけで自然に消えていきます。シミに関しては未然防止も可能で、シーズン前に専用のコーティングを施すことで、花粉を付着しにくくしたり、塗装へのペクチンの侵入および結合を防ぐことができます。
一方で、ポリッシャーやコンパウンドによる研磨は、黄砂による傷消しには有効ですが、ペクチンに対しては特に化学的影響を及ぼさず、適切な対処とはなりません。むしろ塗装面が薄くなることで母材を腐食させるリスクが高まる可能性もあり、注意が必要です。
このように、花粉や黄砂は外観を損なうだけでなく、放っておくとシミやこびりつき、傷の原因となります。対処自体は難しくないものの、普段から付着させないような対策を、可能な限りこまめに行っていくことが大切です。
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