「キャブレター号機」って何のこと? 製造年数が長い車種は型式によってキャブが様々。オーバーホール前に確認を〈MD50郵政カブ〉

新たに施行される排出ガス規制によって、日本のバイク産業を支えてきた50ccの原付バイクの製造と販売が終了し、新たに125cc以下の機種による新基準原付制度が始まりました。とはいえ現存する50ccバイクがなくなるわけではなく、むしろユーザーはこれからも50ccモデルに乗り続けるためにメンテナンスや整備に力を注ぐことでしょう。ここでは日本の原付バイクの象徴であるホンダスーパーカブ、中でも新たに製品化した郵政カブ用燃調キットについて紹介します。
●BRAND POST提供:キースター
バイクいじりの教科書として愛され続けるホンダ原付50ccモデル
スーパーカブ/モンキー/ゴリラ/DAX/JAZZなど、数あるホンダ50ccモデルで多くのライダーに親しまれてきたのが「横型」と呼ばれるエンジンです。同じ50ccの中でも、搭載される車種や年式によってエンジン仕様が細かく異なり、それに合わせてパーツコンストラクターが多種多様なカスタムパーツやチューニングパーツを発売し、それによってバイクいじりの楽しさに目覚めたライダーも少なくないと思います。
車種が異なってもエンジンごと積み替えができることも、横型エンジンの魅力です。過度なチューニングで壊れてしまっても、知り合い関係をたどっていけばどこかからエンジンコンプリートが出てきた…などということも、かつては当たり前のようにあった話です。
エンジン本体だけでなく、純正キャブレターの移植やアフターマーケット製のビッグキャブレターの装着など、吸気系のカスタムも頻繁に行われてきたのがホンダ横型モデルの特長です。4気筒エンジンの4連キャブだと取り付け自体に苦労するところですが、単気筒でシリンダーがほぼ水平の横型エンジンでは、パーツコンストラクターが独自にインテークマニホールドを製造することも珍しくなく、キャブレター変更も自由に楽しめました。
自由度の高さが魅力である一方で、メンテナンスの点では若干難易度が高くなる面もあります。他車種用キャブレターの移植が容易にできる代わりに、メンテナンスや整備を行う際のパーツの入手が難しくなることがあるのです。
この記事で紹介するホンダスーパーカブデリバリーMD50(以下MD50) は、「郵政カブ」の名称で知られたカブの派生モデル。重い郵便物を積載しても大丈夫なように、車体前後に頑丈で大きなキャリアを装備し、フロントフォークはテレスコピックサスペンションとなっています。
エンジン自体は他の横型モデルと同様ですが、キャブレターにはモンキーやゴリラ用にはない、寒冷地での使い勝手に配慮したと思われるヒーターが追加されています。このヒーターには温度センサーがあり、電装系にはヒーターコントロールユニットが装備されているので、外気温に応じてヒーターへの通電を断続していると思われます。
さらに異色なのは、この郵政カブのキャブレターにはエアカットバルブが装着されている点です。モンキー/ゴリラ/JAZZ用は当然ですが、スーパーカブ50用でもエアカットバルブ付きはまずありません。それどころか、同年代の郵政カブでもエアカットバルブなしキャブレターを装着している機種もあります。
さて、ここでキャブレターをメンテナンスする際に厄介になってくるのが、先に利点として挙げたカスタムの自由度の高さです。
フレームナンバーとエンジン/キャブレターの組み合わせが一致していれば、該当する車種のパーツリストから必要なパーツをピックアップすることができますが、純正キャブを他機種に流用してカスタムしたバイクでは、“パーツリスト上では付いていないはずの部品が付いている”ことや“あるはずの部品が付いていない”ことも起こりえます。
キースターの燃調キットは、メーカー/車種別に開発し製造しています。燃調キットはそもそも、パイロットジェット/ジェットニードル/メインジェットのサイズを複数用意して、純正キャブレターでもキャブセッティングができることを目的に開発された製品ですが、ニードルジェット/ガスケット類/パイロットスクリュー/エアスクリュー/フロートニードルといった整備やオーバーホールに必要なパーツも含んでいるのが特徴です。
そのため、バイクメーカーが発行しているパーツリストを所有していなくても、キャブレターのメンテナンスに必要な部品が揃えられるという利点があります。
しかし裏を返せば、純正キャブレターを流用装着できるホンダ横型シリーズでは、車種とキャブレターが一致していない可能性もあります。とくにカスタム車両を購入する際には注意が必要です。
パーツリストには、エンジン号機/フレーム号機と並んでキャブレター号機の記述がある。MD50-から始まるフレーム号機は連番でも、キャブレター号機が複数あれば途中で仕様が変更されていることが分かる。
キースターの燃調キットを選択する場合、フレーム号機ではなく装着されているキャブレター号機が基準となる。パーツリストに記載されている両者の組み合わせが一致していない場合、キャブレターが交換されていると判断できる。
ホンダ横型エンジン用キャブを見分けるカギは“キャブレター号機”
アフターマーケット製のチューニングキャブレターだけでなく、他機種用純正キャブレターの流用も容易なホンダ横型エンジン搭載車種で、キースターの燃調キットを使用する際には、“「キャブレター号機”がキット選びの判断基準となります。
キャブレター号機とは、キャブレター本体に刻印されたアルファベットと数字の打刻の組み合わせで、バイクメーカーではこのキャブレター号機とエンジン号機/フレーム号機を関連付けて部品の管理を行っています。
この記事に登場するMD50のキャブレター号機はPB3FAで、パーツリストによればこのキャブレターが装着されている機種名はMD50x、フレーム号機はMD50-2300001~2399999となっています。フレーム番号の始まりが同じMD50でも、キャブレター号機がPB60Dの場合はエアカットバルブは付きません。
キースターの燃調キットはスーパーカブ用だけでも14種類あり、今回新たにキャブレター号機PB3FAのMD50用キットを製品化しました。縦キャブ時代の燃調キットは構成内容が明らかに異なりますが、PBタイプのキットもすでに6種類あり、今回のMD50用で7種類目となります。
ネットオークションやネットフリマで見つけたスーパカブ用純正キャブを入手してオーバーホールやセッティングを行うにあたり、燃調キットを使用する場合は必ずキャブレター号機を参照して製品を選択するようにしてください。
なお、MD50用燃調キットはキースターでは初の製品となりますが、エアカットバルブが付かないキャブレター号機PB60Dは、純正部品のジェットニードルがPB3FAとは異なるため、キットの流用が可能かどうかは断言できません。
同様のことはモンキー用純正キャブレターにも該当します。キースターではZ50J系でもZ50J(キャブレター号機052A)/Z50J(キャブレター号機PA03B/PA03C/PA03E)/Z50J1(キャブレター号機PA03A A)/Z50J4-7(キャブレター号機PB3JA)の4製品をラインナップしています。
これは燃調キットの製品点数を増やすことが目的ではなく、メーカーが設定している純正キャブレターの仕様に対応するためです。
スーパーカブやモンキーやそれ以外の車種でも、現在の燃調キットのラインナップにないキャブレター用キットが欲しいという方は、ぜひキースターにご相談ください。新たなキットを開発する際は、純正のデータを確認するため現物をお預かりすることになりますが、「開発してほしい」というご意見が新たな機種用の燃調キットが登場する契機にもなるのです。
ケーヒン製のPBは、ホンダの原付モデルで一般的なピストンバルブ式キャブレターだ。
ベースとなるPBは共通で、その後に続く数字とアルファベットで仕様と装着車種が特定される。この場合、3FAがキャブレターアッセンブリーを示し、それに続く四角に囲まれたBが構成部品(このキャブレターの場合はスロットルバルブ)の仕様違いを示している。
キャブレター号機がPB60D/PB60Fの場合はエアカットバルブが付かない。
一方でPB3FA/PB3FBの場合は、エアカットバルブが装着される。エアカットバルブ付きの場合、走行中にスロットルを閉じた際に混合気が薄くなりすぎないようエアバイパス通路を閉じるため、36のホースでダイヤフラムを作動させる負圧を取り出している。
シリンダーが水平近くまで傾けられたホンダ横型エンジンは、今でも多くのライダーに愛用されている。郵政用のMD50/70はスーパーカブをベースとしており、年式によって排気ガスを浄化するエアサクションバルブ(キャブレター左上のデバイス)などを装備している。
内部にダイヤフラムを内蔵したエアカットバルブアッセンブリーは、ビスでキャブボディに固定されている。
通常走行時とスロットルを閉じた際の負圧の大小でパイロット系に流す空気量を調整するエアカットバルブ。バルブ内を空気が通過するため、入り口と出口の2本のパイプには気密性を保つOリングがセットされている。
エアカットバルブに組み込まれている大小3個Oリングは滅多なことでは劣化しないが、洗浄時に使用するケミカルとの相性によって硬化して亀裂が入ることも考えられる。メーカー純正部品は“ゴソウダンパーツ”扱いで欠品中なので、燃調キット内のOリングはありがたい。
これまでMD50用がなかったため、キャブレターを送って製作してもらった燃調キット。キースターではすでに500機種以上のラインナップを取り揃えているが、そこにない車種で燃調キットの製品化を希望するオーナーは相談してみると良いだろう。
※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
- 2025/04/16
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