「作り込みスゴすぎ」「ヤマハの本気にシビれる」XSR900 GPは玄人好みのストリートスポーツだ!!【試乗レビュー】

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ヤマハのラインナップで徐々に増えつつあるのが、888ccの並列3気筒エンジン(通称CP3)を搭載したモデルたち。XSR900やトレーサー9GTシリーズに、MT-09にはオートマチック変速が可能なY-AMT仕様も追加され、スーパースポーツのYZF-R9も登場済み。3輪のナイケンGTも加えれば6機種・9バリエーションに及ぶCP3搭載モデルの中で、XSR900 GPはいったいどんなポジションにあるモデルなのか?

●文:谷田貝 洋暁 ●写真:富樫秀明/YM Archives ●BRAND POST提供:YAMAHA [Y’S GEAR]

外装を変えただけの着せ替えモデルじゃないぞ!

XSR900 GPのカラバリは2色。シルキーホワイト(右)は1980年代の世界GPで活躍したヤマハファクトリーレーサー・YZR500のマルボロカラーをオマージュ。落ち着いた配色のパステルダークグレー(左)はネオクラシック感が強い。

なんて感じで仰々しく書き始めてみたが、僕自身がXSR900GP(以下GP)はXSR900のバーハンドルをセパレート化し、ハーフカウルの外装を装着した着せ替えモデルだと思っていた。それはそれでOKだけど「サスペンンションぐらいは手を入れているんだよねぇ? ヤマハさん!!」なんて、正直ちょっと甘く見ていたのだ。

ハイッ、ゴメンナサイ!! 私が間違っておりました!! GPは、単なるXSR900の着せ替えモデルではなかったのである。というか「このモデルのためにそこまでやるの? 本気ですかヤマハさん!?」と言いたくなるほど、GP専用に作られたパーツやリセッティングされた箇所が多いのだ。たくさんありすぎるから、写真を交えて列記してしまおう。

アッパーカウルとステーの連結部は、3XV型TZR250Rと同形状のパーツをアルミ化して新作(TZRは樹脂製)。ベータピンで留める構造は公道走行用の市販車としてはヤマハ初とのことだ。

XSR900→GPへの改変ポイント

XSR900 GP=143万円(左)/XSR900=125万4000円(右)

その①セパレートハンドル化

すぐ分かるのは、XSR900(右)のバーハンドルからセパレートハンドルに変更されていること。積極的にフロント荷重をかけて走るようなキャラクターにするためだが、面白いのはサーキットレンジの走り優先のポジションではなく、ややアップライトな設定で、セパハンのモデルとしては街乗りやツーリングがしやすいということ。

ベースモデルのXSR900よりも着座位置は前進しており、スーパースポーツのYZF-R7と比較すると、ハンドル/ステップ位置はやや快適方向に振られている。

その②メーターパネルのデザイン

メーターはGP(左)が5インチ、XSR900(右)が3.5インチのカラー液晶(2025モデルでGPと同じ5インチにグレードアップ)で、GPは専用の指針式メーター風デザインが選べる(全4種類)。メーターの背景はかつてレーサーの計器がはめ込まれていたスポンジ風のざらつき感を再現。

その③シートポジション

XSR900(右)にはタンクとシートの間にブリッジがあるが、GP(右)はこれがなく、シートを前に寄せてヒップポイント設定からポジションを作り直している。シート高もXSRプラス25mmの835mm。

その④ステップまわり

XSR900(右)がアルミ地むき出しのフットペグなのに対し、GP(大写真&左)は高速巡航時の快適性も考慮しラバー付き。ただ、そのラバー形状はエンド側を跳ね上げてスポーツ走行時に踏ん張りが効くようにしている。ステップ位置もGPはそもそもプレート自体でアップ&バックさせたうえ、フレームにある上下2段の調節機構の上側をデフォルトに設定(XSR900は下側)。チェンジペダルのラバーも操作性を考慮したテーパー形状と、スポーティーな走行にこだわりつつ快適性も考慮している。

その⑤フロントフォーク

GP/XSR900ともにKYB製フルアジャスタブルだが、XSR900は右側フォークに伸側11段、左側フォークに圧側低速11段と減衰力発生&調整機構を振り分けるのに対し、GPは左右ともに減衰力発生機構を備え、伸側はフォークトップに26段、圧側はフォークボトムに高速5.5回転/低速18段の調整機構を装備(写真。左がGPで右がXSR)。XSR900もMT-09(のSTDやY-AMT)に比べればピッチングを抑えたロードスポーツ寄りの味付けだが、GPではよりスポーツ方向に最適化される。

その⑥リヤショック

GP(左)のリヤショックはKYB製の専用開発品で、プリロードアジャスターがXSR900(右)のカム式7段から24段階の油圧ダイヤル式となり、減衰力調整機構もXSR900が装備する伸側に加え、高速&低速2WAYの圧側調整機構も追加。これらを調整する工具はすべて車載される。フロント荷重を意識しながら走るスポーティーなキャラだけに、簡単にプリロードで車体姿勢が変えられる配慮は嬉しい。

その⑦タンクカバー&エアクリーナーボックス

容量14Lの燃料タンク自体は共通だが、ハンドル切れ角確保のために前端のカバーデザインを変更。同時に内部のエアクリーナーボックスも形状を見直して吸気効率を最適化している。最高出力やトルク値に変更はないが、WMTCモード値燃費は20.4km/Lから21.1km/Lに向上。ただし過渡特性に関してはXSR900とほとんど違いがないように感じた

その⑧ステムシャフト素材

上下ステムを繋ぐシャフトがXSR900のスチール製から、GP(左)ではアルミ化されている(2024年末現在、CP3エンジン搭載モデルでは唯一)。この改変の意図するところはセパハン化による前輪荷重増加に対する締結剛性調整。ステムシャフト下側にはボトムキャップがなくなり(右写真はキャップのあるXSR900)、フロントスタンドも差し込みやすくなっている。

その⑨リヤまわり

XSR900(右)に対し、GP(左)はサイドカバー形状を専用化し、シートの取り付け位置も全体的に上方へ移動。リヤフレームもパイプの板厚を見直すなどの剛性チューニングが施された新作だ。

その⑩フロントブレーキホース剛性アップ

ディスク&キャリパーは共通だが、前輪荷重が増えたことに対応し、左右のキャリパーを繋ぐブレーキホースの剛性をワンランクアップ。握り込んだ時のレバーのストローク量が、よりコーナーの奥に突っ込んでいけるようなスポーティーなタッチに最適化されている。

その⑪フレーム締結部分の剛性アップ

メインスイッチボックス下の部分にある、ヘッドパイプの左右を連結している板金の板厚を調整して剛性チューニング。このほか、スイングアームをメインフレームに固定するピボットシャフトのブッシュを形状変更、ピボットシャフトの締結剛性を最適化している。

その⑫エンジンブラケット剛性調整

エンジンとフレームを連結しているエンジンブラケットの剛性をXSR900から変更。同社のYZシリーズがモトクロッサーとエンデューロマシンとの差別化のためによく使う手法だが、これだけで車体全体の剛性バランスが変化し、直進安定性や回頭性が大きな差が出る。

の⑬ホイールベース/タイヤなど

セパハン化による前後輪の荷重バランス変更&前後のサスセッティング変更によりホイールベースがXSR900の1495mmから1500mmへとわずかに増大。タイヤもBSのS22から最新のS23へと変更されている。キャスター/トレールもXSR900の25度00′/108mmから25度20′/110mmに変更。

…とまぁ、主要な変更点を書き出しただけでこれだけの量である。もはや、ここまで変わっているなら、同じXSRシリーズではあるものの完全に別モノと言ってしまっていいだろう。そんなXSR900 GPはいったいどんな乗り味なのだろうか?

積極的な前輪への荷重を要求する味付け

跨って走り出した瞬間に驚いた。ベースモデルのXSR900は、ネオクラシックな外観ながらも、中身はとても素直で万人向き。スタンダードというかニュートラルというか“ロードモデルの王道”的な乗りやすさにまとめられている。

一方、このGPはちょっとクセがあるというか、動きがシビアというか…。前輪荷重をしっかりかけて乗っていくような車体作りが行われており、ちょっとばかし玄人好みのキャラクターだ。編集部からスタートし、高速道路に乗ったところで、早くもリヤサスペンションのセッティングを変えてみたくなったぐらい。

リヤショックのプリロードをかけてお尻を上げてフロント荷重をアップし、もう少しフロントフォークにしっかり仕事をさせたくなったのだ。このあたりはライダーの好みによるところが大きいだろうが、僕はどちらかというとフロント荷重をかけ気味にしてフロントタイヤのグリップをしっかり感じながら走りたいタイプなのだ。

素直でニュートラルなXSR900に対し、GPはライダーがより積極的な操作を行うことで光る操縦性を持つ。

今回の試乗では残念ながらフロントフォークまでいじる時間がなかったため、リヤショックのプリロード調整のみに留めたが、いろいろ走りながら調整してみると、リヤショックのプリロード全がけに近いハード目なセッティングに落ち着いた。時間があればフロントフォークのプリロードを抜きながらリヤのプリロードを戻してバランスのいいところを探ってしてみたいところだ。

…なんて具合に、サスペンションのセッティングを弄ればしっかりバイクのキャラクターが変わり、その変化をしっかり体感できるのがこのXSR900GPというモデルのいいところだ。正直、XSR900は吊るしのままでそれなりに乗れてしまい、セッティングを変えたいなんて発想そのものが起きなかったが、GPはシビアで敏感なセッティングが出された車体のおかげで良くも悪くも好みがはっきり出る。

GPには豊富な調整項目をフル活用し、好みのサスセッティングを探し出す楽しみがある。

リヤショックにすぐさまセッティング変更が可能なリモートコントローラーが付いているということもあるが、“ちょっとリヤショックのプリロードを強めてフロントの接地感を出したいな”…なんて要望にすぐ対応できるのだ。しかも、変えればその効果がしっかり感じられるぐらいまでキャラクターが変化する。この雰囲気はベースモデルのXSR900というより、MT-09シリーズのSPに通じるところがある。

ただ、面白いのはこのGP、決してサーキットでのパフォーマンスを求めるようなマシンにはなっていないところだ。あくまで軸足は公道におき、ワインディングや峠道を気持ちよく駆け抜けるぐらいのスポーツ走行がちょうどいい。しかも、このどことなくレトロなフォルムに、ド派手なマルボロカラーの効用もあるのだろう。ついつい1980年代のライダーよろしく、しっかり腰を落とし膝を大きく開くようなダイナミックなライディングフォームで走りたくなる。

ワインディングを気持ちよく、ダイナミックなフォームで駆け抜けるときにピタリとハマる。

ちなみにXSR900同様、スタイリングはクラシックながら中身の電子制御系装備はてんこもり。 アップ/ダウン対応のクイックシフターにクルーズコントロールや各種の駆動力制御(トラクションコントロール/スライドコントロール/リフトコントロール)を装備。ABSに加え、滑りやすい路面で後輪のロックやスリップを抑制するバックスリップレギュレーターまで備えている。

これらの駆動力制御やABSに関しては6軸IMUを使うタイプ。ライディングモードはSPORT/STREETの2モードをベースに、各種制御を自由に設定できるCUSTOMモードを2つ設定できる。

専用アプリの「Y-Connect」を使えば、車両情報がスマートフォンで確認できるだけでなく、ライディングモード(CUSTOM1&2)のパラメーター設定もスマホから変更可能。GARMIN社製の「StreetCrossアプリ(有償)」を使えばナビゲーション画面のミラーリングも可能だ。

OPTION

より1980年代のGPマシンらしさが増す「シングルシートカウル(上左。3万5200円)」や「アンダーカウル(上右。8万5800円)」もオプション設定。ちなみにストロボカラーの「XSR900GP 外装セット(33万円)」はすでに予約受付を終了している(下写真)。

まとめ:XSR900 GPは玄人ライダー好み!

カラーリングといいスタイルといい、レーサーレプリカ世代は血が騒ぐXSR900GP。興味深いのは、そのキャラクター設定をYZFシリーズ化しなかったことだろう。次弾として投入されるYZF-R9の存在を見据えてのこともあるだろうが、軸足をサーキット走行に置くのではなく、あくまで公道でのスポーツ走行としているところが面白い。というわけでXSR900GPは“サーキット走行はしないがワインディングは気持ちよく走りたい”というライダーにちょうどいい。

CP3エンジン搭載モデルの中ではXSR900はもちろん、MT-09のSTDやY-AMTよりもスポーツ走行向き。足まわりを高級パーツで固めたMT-09SPに近しいスポーツ性を感じさせるが、ちょっとマニアックな乗り味は玄人好み…と、増幅しつつあるCP3モデルの中でも明確な立ち位置が持たされていた。

RIDING POSITION

【ライダー:身長172cm/体重75kg】シート高は835mmで、ベースモデルのXSR900の810mmに対し25mmアップ。しかもハンドルがセパレートハンドル化し、ステップポジションも上げられているのでかなり前傾姿勢が強めになっている。ただ、CP2エンジンのYZF-R7と比べるとややアップ目のポジションとなっており、街乗りやツーリングなどの用途にも対応する“絶妙な前傾姿勢”が設定されている。1980年代後期のレーサーレプリカと比べるならタンクも短く、ライディングポジションはコンパクトかつ楽だ。

YAMAHA XSR900 GP

【YAMAHA XSR900 GP】■全長2160 全幅690 全高1180 軸距1500 シート高835(各mm) 車重200kg ■水冷4スト並列3気筒DOHC4バルブ 888cc 120ps/10000rpm 9.5kg-m/7000rpm 変速機6段リターン 燃料タンク容量14L ブレーキF=Wディスク R=ディスク タイヤサイズF=120/70ZR17 R=180/55ZR17 価格:143万円

【TESTER:谷田貝 洋暁】

「レディスバイク」「Under400」「タンデムスタイル」など、初心者向けバイク雑誌の編集長を経てフリーランス化したライター。年齢はちょうど50歳で、1980年代のバイクブームを横目に育った世代だが、根っからのツーリングライダーでレースはからっきし(笑)。なのだが、このXSR900GPの“スーパースポーツしすぎない”スタイリング&キャラクターがドストライク! 「ほどよい前傾姿勢が出てきたお腹を引っ込めるのに最適!!」と息まいていた。


※本記事はYAMAHA [Y’S GEAR]が提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。