[分解する前にちょっと待って!] キャブレターいじりにあった方が良い工具×8選
原付から大型車まで、500機種以上の純正キャブレターに対応したオーバーホールキットを開発製造するキースター(岸田精密工業)。キースターの「燃調キット」は、絶版車専門ショップやユーザーに愛用されている、キャブレターメンテナンスの必需品。交換部品を1点ずつ注文/購入しなくてはならないバイクメーカーの純正部品に対して、ジェット/ニードル/フロートニードルバルブ/フロートチャンバーガスケット/Oリング類が一式セットとなった燃調キットは、部品選定の手間も省略してくれる優れモノです。ただし、キャブレターの分解組み立てを行う際に用意しておいた方が良い工具があります。ここでは一般的なハンドツールやキャブレター専用工具を紹介していきます。
●BRAND POST提供:キースター
ビスを緩めるドライバー、電動ツールやショックドライバーも欲しい
フロートチャンバーやトップカバーなど、キャブレターボディ外部に取り付けられた部品の多くはプラスまたはマイナスのビスで固定されており、ビスを緩める工具と言えばドライバーが必需品です。
プラスビスの場合、ドライバーが接する十字穴のサイズによって1~3のサイズがあり、キャブレターに用いられるビスの多くは2番(#2と表記されることもあります)サイズとなります。
ドライバーでビスを緩める際は、ドライバー自体をビスに押しつけながら回すのが基本動作となりますが、長期間にわたり分解されたことがない絶版車用キャブレターを分解する場合、ビスが固着していることも多く、ドライバーを押しつける力が弱いと十字穴を傷めてしまう場合もあるので注意が必要です。
このような時に重宝するのが電動インパクトドライバーです。衝撃を加えながら強いトルクで回転するインパクトドライバーは、手で回すドライバーよりも固着したビスを緩める作業に適しています。またビスが固着していなくても、緩める数が多い場合は作業がスピーディに進む利点があります。
ただ、ビスの締め付け時に使用するとモーターによって過剰に締めすぎるリスクがあるので、組立作業では手回しタイプのドライバーを使用する方が安全です。
固着したビスを緩めるには、ショックドライバーも役に立ちます。本体後部をハンマーで打撃すると強い回転力が発生します。電動インパクトドライバーもショックドライバーも、ビスに接するプラスビットを選定する際は、十字穴のサイズに合うビットを装着することが重要です。
デリケートなジェットの着脱に適したキャブレタージェットドライバー
燃調キットの最大の特長は、純正キャブレター装着されているパイロットジェットやメインジェットのサイズを変更して、空燃比を変更できることです。メインジェットの頭部はマイナス溝タイプと六角タイプがあり、パイロットジェットはマイナス溝となっています。
これらのジェット類は真鍮系の柔らかい素材で作られており、通常のドライバーで着脱しようとすると、マイナス溝をなめるリスクが高いのが難点です。
通常のマイナスドライバーは先端に向かって徐々に薄くなるテーパー形状なのに対して、ジェットのマイナス溝は平行であるため噛み合いが甘く、ガタが生じてなめやすくなるのです。
これに対して、キャブレタージェットドライバーの先端は厚めで、ジェットの溝にフィットするよう平行に加工されているため、しっかり噛み合ってジェットを傷めにくいのが特長です。
汎用のドライバーの中にも先端が平行なものもありますが、キャブレタージェットドライバーはジェットで多く使われているサイズに合わせて設計されているため、ジェットを傷める心配が少ないことが魅力です。
パイロットスクリューとセットの極小パーツを拾い上げるピックアップツール
アイドリングからスロットル低開度領域の混合気の量を決めるパイロットスクリューは、キャブレターセッティングを決める重要なパーツです。
スクリュー自体の先端はとても細い針状で、軽く締め付けた状態からの戻し回転数(緩め回転数)によってパイロットポートからエンジンに供給する混合気の量を決めています。
一般的なビスやスクリューは締め付けることで機能させますが、パイロットスクリューは緩めた状態で使用するため、エンジンや車体の振動で回らないよう、金属製のスプリングで圧力を加えています。
それと同時に、パイロットスクリューとボディのネジの隙間などから二次空気を吸い込んだり混合気が漏れ出さないよう、ゴム製のOリングも組み込まれています。
パイロットスクリューを緩めて取り外した時に、スクリューと一緒にスプリングやOリング、両者の間のワッシャーも外れれば問題ありませんが、キャブレター内部に残ってしまうこともあります。
スプリングは自重で落下することが多いですが、ワッシャーとOリングは軽く小さいためボディ内に残ることもあり、それに気づかず新しいOリングやワッシャーを組み付けてしまうと、パイロットスクリューのセッティング不良の原因となります。
ただ、パイロットスクリューを取り付けるキャブボディ側の雌ネジは奥が深いため、ワッシャーやOリングを発見しにくく、見つけたとしても先端が尖ったピックツールでは回収が難しい場合もあります。
そんな時に役立つのがOリングピックアップツールです。細い軸の先端がカギ状に曲げられたピックアップツールは、狭いネジ穴の奥にまで届き、スプリングやワッシャーやOリングをつり上げる作業に適しています。
ワッシャーはないと思っても、ネジ穴の壁に沿ってピックアップツールを一周させると引っかかってきた、という例も少なくありません。
キャブボディから取り外したパイロットスクリューにOリングやワッシャーが付いていなかったら、必ずピックアップツールで確認することを心がけましょう。
キャブセッティングの基本を決めるフロート油面を測定するフロートレベルゲージ
キャブレター内部の通路(ベンチュリー)の中を通過する、エンジンの吸入空気の負圧や流量の大小によってフロートチャンバー内のガソリンが吸い上げられ、混合気となってエンジンに送り込むのがキャブレターの原理です。
吸い上げられるガソリンの量は、パイロットジェットやメインジェットのサイズによって変わりますが、それよりも大きく影響するのがフロートチャンバー内部のガソリンの量=油面です。
ベンチュリーを流れる空気の量が同じでも、油面が高ければガソリンは容易に吸い上げられ、油面が低ければ簡単には吸い上げられません。その基準を決めるのがフロート油面です。
フロートチャンバーにガソリンが溜まるとフロートは浮き上がり、フロートニードルバルブが閉じるとガソリンタンクから流れ込むガソリンも止まります。
4気筒エンジンの4連キャブの場合、フロートチャンバー内の油面がまちまちだと、ジェットのセッティングが同じでも空燃比が不揃いとなる原因になるため、フロートレベルゲージで確認して、必要に応じて調整を行います。
フロートとニードルバルブの接触部分に調整板がある場合と、フロート油面が公表されている場合には測定と調整が可能です。測定を行う際は、フロートレベルゲージをメインジェットの位置にセットして、フロートチャンバーとキャブボディの合わせ面からフロートの最低位置までの距離を測定して、サービスマニュアルなどに記載されている標準値に合わせます。
キャブレターをエンジンにセットする前にガソリンを流すサブタンク
キャブレターを取り外して、燃調キットを活用してオーバーホールやセッティングを行ったら、エンジンに組み付ける前に単体のキャブにガソリンを注入することが重要です。
完璧に作業を行ったつもりでも、ガスケットが擦れていたりOリングの組み付け忘れといったミスをする場合があります。
そんなミスをした状態でエンジンにセットしてガソリンを流せば、エンジン周辺に垂れ流しになり、もう一度取り外す手間がかかります。
そこでガソリンサブタンクを使って、キャプが収まる容器の中で、単体のキャブレターにガソリンを流します。それでガソリンが漏れなければOKですし、もし漏れてもバイクを本体にガソリンをかけることなく、すぐさま再分解などの対処も可能です。
またキャブレターをエンジンに取り付けた後の同調調整でも、ガソリンタンクを取り付けるよりサブタンクで始動した方が調整が容易になるため、あらかじめ用意しておくことをおすすめします。
2連/4連キャブを分解した後の同調調整に必要なバキュームゲージ
2気筒や4気筒エンジンに装着された2連/4連キャブレターのスロットルバルブは、スロットル操作によって同じ量だけ開閉するのが前提となっています。
もし、4個のキャブレターのスロットルバルブの開度が異なれば、それぞれのシリンダーに届く混合気の量が揃わず、エンジンはパフォーマンスを発揮できません。
新車で販売されるバイクはメーカーで製造される際に同調調整を行っていますが、つながったキャブレターボディを分割した場合は同調がずれてしまうので、再調整が必要です。オーバーホールで4連キャブの燃料パイプのOリング交換を行う場合が該当します。
CVキャブレターの場合、スロットル操作によって円盤状のスロットルバルブが作動する様子は目視で確認できますが、スロットルが開き始める際のわずかな開き具合を揃えるのは容易ではありません。
そんな同調調整で頼りになるのが、インテークマニホールドに生じる負圧を測定するバキュームゲージです。キャブレター本体、あるいはシリンダーヘッドのニップルにホースを接続してエンジンを始動すると、シリンダーごとの吸入空気に応じた負圧がゲージに表示されます。
キャブレターのスロットルバルブ開度が揃っていれば、ゲージの指針は同じになります。一方でバルブの開度がバラバラなら指針もバラバラです。その場合は、キャブレターボディの連結部分にあるスロットルシャフトのアジャストスクリューで、ゲージの指針を確認しながらスロットルバルブの開度を合わせます。
エンジンの吸入負圧は、吸排気バルブの密閉状態やピストンリングの摩耗など、キャブレターの同調以外の条件でも変化するため、バキュームゲージの指針だけに頼ってもスロットルバルブの開度がシンクロしない場合もあります。その場合はキャブレターより先にエンジン本体のメンテナンスが必要です。
ただ一般的に、マルチタイプのキャブレターを分解して再び連結した場合には、バキュームゲージを利用することで、短時間で精度の高い同調調整ができるのは間違いありません。
※本記事はキースター(岸田精密工業)が提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
- 2024/09/30
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