[キャブ車DIYメンテ] ホンダ スーパーXR250(MD30):大ヒットトレールモデルのCVキャブレターを燃調キットでリフレッシュ

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4ストロークエンジンを搭載したデュアルパーパスモデルとして、街乗りから林道ツーリング、加えてエンデューロレーサーのベースモデルとしても大ヒットしたホンダXLR250R。そんなXLRの後継モデルとして1995年に登場したのが、スーパーXR250とスーパーXR BAJAです。XLRのコンセプトを継承しつつ、エンジン/フレーム/足まわりまで一新されたスーパーXRには、新たに特殊なメカニズムを持つCVキャブレターが採用されました。500機種以上に対応する燃調キットを開発しているキースターは、もちろんスーパーXR(MD30)用キットもラインナップしています。

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キープコンセプトながらすべてが一新されたスーパーXR250

街乗りでも林道でもエンデューロレースでもより幅広いライダーが、より楽しく軽快なライディングを満喫できることを目的に開発されたのが、1985年にデビューした公道向けのXLR250と競技車両のXR250Rです。

競技志向の高い2ストロークモデルではなく、扱いやすい4ストロークエンジンを搭載したXLRシリーズは、10年近くにわたってデュアルパーパスカテゴリーを盛り上げる立役者となりました。

その後継機種として開発されたのが、1995年にデビューしたスーパーXR250とスーパーXRバハです。それ以前は公道向けのXLRとレーサーのXRと区別されていましたが、XRスピリットをより強く意識したこのモデルは、公道仕様もXRのネーミングが与えられました(競技用モデルはXR250R)。

XLRから9年ぶりのフルモデルチェンジにふさわしく、スーパーXRはフレームからエンジン、足まわりまで一新されています。

エンジンは、ホンダ4ストローク250単気筒伝統の放射状4バルブを継承した新設計モデルで、潤滑方式をウェットサンプからドライサンプに変更し、新たにセルモーターを搭載しているのが大きな変更点です。

組み合わされるキャブレターも、XLR時代のピストンバルブ式のケーヒンPD型に代わって、新開発のケーヒンCV型が採用されました。

スロットルバルブをスロットルケーブルで直接開閉するピストンバルブ式が吸入負圧の影響を受けるのに対して、CVキャブはバキュームピストンとは異なり、バタフライバルブを開閉するためスロットル操作力が軽い点が魅力です。

ただ、CVキャブはスロットル操作に対して反応が穏やかという特性があるため、エンジンの追従が遅れ気味になる傾向もあり、これは必要な時にレスポンス良くトラクションが欲しいオフロードモデルとしてはネガティブなポイントとなります。

こうした特性を改善するため、スーパーXRのCVキャブにはバキュームピストン強制リフト機構というメカニズムが採用されています。

これはスロットル低開度から中開度領域では、スロットルドラムと連動するアームが強制的にバキュームピストンを開くことでレスポンスを向上させ、中開度以上では吸入負圧を利用する、いいとこ取りの狙いがあります。

キースター燃調キットでメンテナンス

スーパーXR250/スーパーXR250 BAJA用燃料キット。MD30型XR250用キャブレターは排気ガス規制前後で2タイプ存在し、燃調キットの設定も2種類となる。キットの内容はセッティング用のジェット/ニードル/ニードルジェット/メインジェットホルダー/ニードルバルブ/パイロットスクリューなど、オーバーホールやセッティングに必要なすべて揃っており、価格は税込4400円とリーズナブル。●XR250 (MD30)用キャブレター オーバーホール&セッティングパーツセット(1997-1998年/型式MD30/キャブレター号機VE88C) ●XR250 (MD30)用キャブレター オーバーホール&セッティングパーツセット(2000-2007年/型式MD30/キャブレター号機VE88D/VE88E/VE88F)

規制前と規制後は本体に刻印されたキャブレター号機で区別する。刻印がVE88Cであれば規制前用のキット、VE88D/VE88E/VE88Fなら規制後仕様のキットが適合する。

XLR時代のピストンバルブ式からCV式のVEキャブレターに変更されたのが、スーパーXRのトピックだ。バキュームピストンのダイヤフラムを収めるため、トップカバーはCVならではの形状だが、それとは別にスロットルドラムにレバーが付いているのが特徴。

スロットルを開けるとレバーが作動し、バキュームピストンの下部を押し上げるのが強制リフト機構の仕組み。ピストンバルブ式に比べて反応が穏やか=レスポンスが悪いCVキャブの弱点を解消しつつ、CVならではの扱いやすさを活かすためのアイデアだった。

スロットルドラムと反対側のスロットルシャフト端部には、スロットル開度とエンジン回転数に応じて点火時期を決めるためのスロットルポジションセンサーが付く。洗浄目的で取り外した後は、シャフトのマイナス溝と突起を合わせて復元する。

フロートチャンバー内にガソリンが入っていなかったようで、ドレンスクリューを外しても何も出てこなかった。新品スクリューとOリングはキットに含まれている。

きれいなフロートチャンバーを見ると、ガソリンを抜いてから保管していたことが推察できる。フロートチャンバーガスケットは経年劣化によって完全に潰れており再使用できない。

パイロット系の不具合が全域の足を引っ張ることがある

このように、スーパーXRのCV型キャブレターには、オン/オフモデルで気持ちよく機能させるための新たな試みが盛り込まれていますが、メンテナンスやセッティングに関しては一般的なキャブレターとの違いはありません。

キースターの燃調キットの内容も、パイロットジェット/メインジェット/ジェットニードルのセッティング3要素と、フロートチャンバーガスケット/パイロットスクリュー/スタータープランジャーなどオーバーホールに重宝するパーツで構成されており、強制リフト機構ならではというパーツはありません。

今回サンプルとして使用するキャブレターは、ガソリンを抜いた状態で長く不動状態にあったもので、フロートチャンバー内やジェット類に著しい汚れはありませんでした。

一見するとガソリンを入れればそのまま使えそうな感じですが、長く使用してなかったキャブレターを再使用する際は、確認が必要な部分があります。

それがスターター系やパイロット系です。

キャブレターセッティングというと、スロットル全開領域のメイン系が注目されがちですが、街乗りでもツーリングでも多用するのはスロットル開度が小さい領域であることが大半で、スロットル開度1/2をキープできる状況もとても稀だと言っても良いでしょう。

そうした状況で仕事をするのは、パイロットジェットでありパイロットスクリューです。メインジェットに比べてパイロットジェットの穴径が小さく、さらにパイロットスクリューで調整するパイロット系通路はさらに狭くなっています。

このためガソリン流量が少ないのと同時に、劣化したガソリンが詰まりやすいという弱点もあるのです。

取り外したパイロットスクリューの先端は汚れが堆積していた。とくに重要なのは、キャブレター側のパイロットアウトレットの穴との隙間で混合気量を決める先端のテーパー部分。

パイロットスクリューの戻し回転数は、いったんスクリューが止まるまで締めてから緩めるのだが、力任せに締め付けると先端が傷むことがあるので要注意。またパイロットアウトレットを針金などで突くと、穴径が拡大して混合気量が変わってしまうので、汚れが詰まっている場合はキャブレークリーナーで溶かして落とす。

燃調キットにはパイロットスクリュー/スプリング/ワッシャー/Oリングが入っているので、取り外したスクリューが傷んでいても心配ない。燃調キットにはジェット類だけでなく、こうした周辺パーツが入っているので助かる。

メインジェットに比べて穴径が小さいパイロットジェットも、劣化したガソリンが詰まりやすいパーツだ。ブリード穴と呼ばれる側面の穴はとても小さいので、詰まっていたら新品に交換しよう。

スターターバルブの経年劣化もキャブセッティングに影響する

実際、このキャブを分解した際も、パイロットスクリューには異物が付着していました。アイドリング時からスロットル低開度領域で、混合気の出口となるパイロットアウトレットの口径を決めるパイロットスクリューは、先端のテーパーのコンディションが重要です。

劣化したガソリンやインテーク側から吹き返したカーボンがテーパー部分に付着すると、パイロットアウトレットが狭まって混合気の吐出量が減少し、始動性が悪化したり、スロットル低開度領域の混合気の薄さによるパンチ感の低下につながる場合もあります。

そうした根本的な原因を見逃してセッティング変更を行っても、正しいキャブセッティングにはつながりません。たとえばパイロットスクリューの汚れによって、アイドリング域のパイロット系が薄い時にスクリューの戻し回転数を増やすと、症状は一時的に改善するかもしれません。

しかし、そこからスロットルを開けると、混合気が過剰に供給されて、ギクシャク感が出たりボコつく可能性もあります。

どの程度の汚れがどのような症状につながるかを断定することはできませんが、そもそもキャブセッティングはパイロットスクリューやパイロットアウトレットの汚れを前提に決めるものではないので、汚れていれば洗浄しなくてはなりません。

冷間時の始動性を向上させるチョークも同様です。スーパーXRの始動系統にはチョークノブで開閉するスターターバルブ(スタータープランジャー)が採用されています。

その先端には始動用のガソリンを通路を開閉するゴムシールがありますが、経年劣化により弾力を失うと、通路を閉じる力が低下して、チョークを戻してもガソリンが流れ続けて混合気が濃くなることがあります。

しかし、ここでジェット類を交換してしまうと、本来のセッティングとは異なる結果になりかねません。

燃調キットは純正キャブレターのセッティング変更を可能にする製品ですが、セッティングを行うには、各部が正常に機能するのが前提となります。一見するとそれほど汚れていないようでも、長期間使用していないキャブはオーバーホールやクリーニングが必要というのは、そうした理由があるからです。

チョークレバーで開閉されるスタータープランジャー。チョークが空気の通り道を狭めて吸入負圧を高めるのに対して、スタータープランジャーは冷間始動用の濃いガソリンを送り出す通路を開閉する。

通路を開閉する先端のゴムシールを比較すると、燃調キットの新品パーツ(右)が平らなのに対して、左は経年変化による硬化で何本もの溝が入り凸凹になっている。このため気密性が低下して、チョークレバーを戻してもわずかにガソリンが流れ続けて、スロットル低開度域の混合気が濃くなることがある。

パイロットジェットに続き、メインジェットを取り外す。

ジェットホルダーにはスロージェットと同じくブリード穴があり、ここにメインエアジェットからの空気が流れ込むことでガソリンと混ざり合う。

キャブボディから外れる部品をすべて外したら、キャプレタークリーナーで洗浄する。外から見える部分の洗浄もさることながら、本当に重要なのはキャブレター内側にあるパイロット系/メイン系通路に付着/固着した汚れの除去。一般的なブレーキパーツクリーナーではなく、キャブレター専用のクリーナーを使用することで、汚れに対する浸透力が期待できる。とくにひどい汚れの場合は、泡タイプがおすすめだ。

クリーニング効果を実感するためには、ボディ外部の洗浄も大切だ。

いちおうキャブレタークリーナーで洗浄した取り外したパーツ群(左)と燃調キットの新品パーツ(右)。今回は外したジェットの穴が詰まっていなかったためまだ幸いだが、緑青を吹いて腐食したり穴が詰まっている場合、新品パーツのありがたみは一層アップする。

燃調キットのニードルバルブやガスケット類でオーバーホールも安心

キャブセッティングを行う上で、フロートチャンバー内の油面が正確で安定していることがもっとも重要です。

油面が一定であれば、エンジンの負圧でパイロットジェットやメインジェットから吸い上げられるガソリンの量も安定します。

しかし、油面が不安定だと、油面が高ければ混合気が濃くなり、低いと薄くなるといったように安定しません。

そこで重要なのがフロートのニードルバルブです。油面が上昇してニードルバルブの先端が、バルブシートの穴に入った時に、ガソリンタンクから流れ込もうとするガソリンをしっかり止められるか否かが、油面の安定に影響するからです。

ニードルバルブ先端の円錐状の部分はゴム製で、開閉するたびにバルブシートに接触することで当たり面が摩耗します。また長期間にわたってガソリン内に浸り、そのガソリンが劣化することで、ワニスなどが付着してシール性が低下することもあります。

燃調キットの中にはニードルバルブも入っており、これを使用することでガソリンをしっかり断続できるようになり、油面の安定につながります。

なお、ニードルバルブ先端が当たる部分が荒れていると漏れなどの原因になるため、相手側のバルブシートのメンテナンスも重要です。これは粒度の細かいコンパウンドをつけた綿棒で擦って汚れを取り除くのが有効です。

こうした地道なメンテナンスを行うことで、ようやくセッティングを行うための土台が完成します。純正キャブのセッティングを基準として、3サイズのパイロットジェット/6サイズのメインジェット/4サイズのジェットニードルが入っており、スロットル開度ごとの混合気の量を変更できます。

純正キャブレターのスタンダードセッティングは、エンジンや吸排気系統がすべて新品かつノーマル状態で決められています。スーパーXRの最初期モデルは今から30年近く前の1995年製で、エンジン内部の摩耗や吸排気系パーツの交換によって混合気の状態がノーマルから変化していても不思議はありません。

オーバーホールしたキャブレターのセッティングが必要か否かは、スパークプラグの焼け具合で判断します。カーボンの付着が分かりやすいように新品プラグを装着して走行してみて、電極が黒く煤けるようならジェットのサイズを小さく、ストレート径の太いニードルに交換します。逆に白く焼けている場合は大きなサイズのジェットに交換し、細いニードルを装着します。

パイロットジェットとメインジェットのサイズは数字表記で大きくなるほど穴径が太くなり混合気が濃くなります。その一方でジェットニードルにはL/S/R/RRの表記があります。

これは、S=STANDARDを中心に、L=LEAN(混合気が薄くなる)/R=RICH(混合気が濃くなる)/RR=ダブルRICH(さらに濃くなる)ことを示しています。

ジェットとニードルを組み合わせるかは、スパークプラグの焼け具合やエンジンのフィーリングから判断しますが、順序としてはスロットル開度が小さい領域から、すなわちパイロットジェット/ジェットニードル/メインジェットの順に変更していきます。

スーパーXR250は、最終モデル発売からも15年以上が経過した絶版車であり、車両のコンディションもまちまちです。

キャブレターも、セッティングをするつもりでフロートチャンバーを取り外したところ、想像以上に汚れが酷かった。あるいはオーバーホールだけで済むと思っていたら再セッティングが必要だったなど、何が起こるか分かりません。

しかし、燃調キット用意しておけば、どちらの状況にも対応できます。新車で購入できる、気軽に乗れるデュアルパーパスモデルのラインナップが皆無となった現在、空冷エンジン+キャブレター仕様のスーパーXRは貴重な存在です。

燃調キットはそのコンディションを維持するため、必ず役に立つはずです。

洗浄したキャブレターボディに、ニードルジェット/ジェットホルダー/メインジェットを順番に取り付ける。吸気の脈動でジェットニードルが接触することでニードルジェットの内径が拡大していることがあるので、パイロットジェット/メインジェットとともにニードルジェットを新品に交換する重要性は高い。

取り外したニードルバルブは、バルブシートとの接触部分にくっきりと線条痕が入っている。この部分で段付き摩耗があると、バルブが閉じた際の密閉性が悪いため、ガソリンが漏れてオーバーフローの原因となる場合がある。

燃調キットのニードルバルブはキースター独自のAAニードルで、エタノールを含むバイオガソリンに浸しても腐食しないのが特長である。

車体の姿勢変化が大きいオフロードモデルならではの装備が、メインジェット周辺のガソリンの偏りを抑えるハカマと呼ばれるパーツ。

ジェットニードルはリジッド状態で固定せず、エンジン振動や吸気の脈動に応じてある程度動くことができるよう、ホルダーとニードルの間にスプリングが入っている。ジェットニードル交換時はこのスプリングを付け忘れないように注意。

バキュームピストンの底にジェットニードルとホルダーをセットしたら、ホルダーをわずかに回してロックして、ピストンを逆さまにしてホルダーが外れないことを確認する。

ダイヤフラム外周の突起をキャブレターボディに合わせてバキュームピストンを挿入し、スプリングを入れたらトップカバーを被せる。トップカバーは1カ所だけわずかに膨らんだ場所があるので、ダイヤフラムの突起の位置に合わせて固定する。


※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。