今なお人気の4ストエンデューロレーサー・XR250R(ME06)の純正キャブレターを燃調キットでメンテナンス

  • BRAND POST[PR]: キースター
キースター|燃調キット|ME06 XR250R

1980年代のバイクブームでひときわ盛り上がった、林道ツーリングやエンデューロ。それらのシーンで常に中心にいたのが、一般公道向けのホンダXLR250と競技専用車であるXR250Rでした。中でもパワフルなエンジンとポテンシャルの高い足まわりの組み合わせが魅力のXRは、20年近くにわたって販売されたロングセラーとして、今なお多くのユーザーに愛用されています。ここでは1985~1995年に製造されたME06と呼ばれる型式のXR用純正キャブレターを、キースターの燃調キットでオーバーホールする手順を紹介します。

●BRAND POST提供:キースター

長期放置車両のキャブレターは、分解後の入念なクリーニングが不可欠

ストロークの長いサスペンションと扱いやすい空冷4ストローク単気筒エンジンを組み合わせたオフロードモデル・XLR250Rが誕生したのと同じ1985年、限定販売車として発売されたのが、ME06型XR250Rです。

保安部品が装着された一般公道向けのXLR250Rに対して、XR250Rは灯火類などを持たずナンバーが取得できない競技専用車という位置付けだったものの、当時大流行していたエンデューロやラリー競技で引っ張りだこの人気モデルとなりました。

本来は競技用=レーサーだったものの、XLRと瓜二つだったため、当時は逆輸入車両に保安部品を装着して登録されたXRも数多く存在しました。

その後、1996年モデルで型式がME08となり、2004年に最終モデルがリリースされるまで、XR250Rの車名は20年近くにわたって引き継がれ、販売終了から20年を経過した現在でも、空冷エンジン+キャブレターのシンプルな構成に愛着を持つユーザーは少なくありません。

ナンバー付きのXLRとコンペモデルのXRでは、保安部品の有無だけではなく、保有する際のコストも異なります。XLRは毎年の軽自動車税の負担が必要ですが、そもそもナンバーがないXRには軽自動車税がありません。そのため置き場さえあれば、手放すことなくとりあえず持っておくというユーザーもいます。

同じ競技専用車でも、2ストロークのロードレーサーに比べて保守は容易で、雨ざらしにするようなことがなければ、スーパーカブと同様、エンジンオイルさえ入っていればいつでもエンジンを始動できるという気軽さがあります。

ただし、長期間動かすつもりがなければ、ガソリンタンクとキャブレターのガソリンを抜いておくことが必須です。ガソリンは経年変化で揮発し、ワニス化してキャブレター内部に詰まり、さらに空気中の水分と結合することでサビの原因になります。

今回のキャブレターがまさにそうであるように、もし内部のコンディションが悪い場合は、できるだけ完全に分解して洗浄を行い、内部パーツを新品に交換するのが理想です。キャブレタークリーナーに漬け込むことでワニスや腐食は落ちますが、ジェットやニードルはわずかな汚れが性能に影響します。

とくに穴が詰まったジェットを針金やピンバイスで突いてしまうと、穴径が変化してガソリンの流量が変わってしまうこともあります。

ME06時代のXR250Rは最後期モデルでも1995年型で、すでに30年近くを経過しています。新車からのワンオーナー車であればメンテナンスの履歴も覚えているでしょうが、途中で中古車として購入したのであれば、初期化の意味も込めて燃調キットでオーバーホールすることをおすすめします。

キースター燃調キット
XR250R (ME06)用キャブレター オーバーホール&セッティングパーツセット
XR250R (ME08)用キャブレター オーバーホール&セッティングパーツセット

具体的な期間は不明だが、完全にガソリンが干上がったフロートチャンバー内部の様子から、長期放置状態だったのは間違いないXR250R用純正キャブレター。車体が大きく傾斜してもメインジェットにガソリンを供給できるよう取り付けてある、ハカマと呼ばれる樹脂パーツもガソリン焼けしている。

フロートチャンバーガスケットは、溝の中で平らに潰れている。弾力性はまったくなく、これをキャブレターボディに装着してもシール性は期待できない。

ガソリン汚れに浸透する泡タイプのキャブレタークリーナーで洗浄する。オーバーフローパイプはドレンホールにもスプレーして貫通を確認する。なお、汚れに応じていくつものキャブクリーナーを使い分けるのがおすすめ。泡タイプで使い勝手が良いのは、ヤマルーブ スーパーキャブレタークリーナーだ。

クリーナーをスプレーするだけでは落ちない汚れは、ブラシを併用して掻き落とす。汚れが残っていると新たなガソリンの変質が早まるため、徹底洗浄を心がける。

完全に穴が詰まっているメインジェットを取り外す。燃調キットのメインジェットに交換するので、洗浄は必要ない。

メインジェットホルダーには、ガソリンと空気と混ぜて混合気の霧化を促進するための横穴(ブリード穴)があり、これも汚れで閉塞していた。

ロングセラーモデルは車両型式に適合したキットを選択する

これまでに何度も説明しているとおり、キースターの燃調キットは純正キャブレターのセッティングを変更できるのが最大の特長です。バイクメーカーが新車を開発する際に設定するパイロットジェット/メインジェット/ジェットニードルのサイズは、エンジンや吸排気系統がすべて新品かつノーマル状態を前提としています。

そのため、エンジン内部の摩耗や吸排気系パーツの交換によって混合気の状態がノーマルから変化した場合には、それに合わせたセッティング変更が必要なことがあります。

純正部品では、ジェットやニードルのサイズは新車時と同じ1種類しか設定されていないことがほとんどなのに対して、燃調キットは純正サイズを中心としてパイロットジェット3種類/メインジェット6種類/ジェットニードル4種類がセットされています。

そのため、スパークプラグの電極をチェックして、くすぶり気味ならサイズを絞り、白く焼け気味ならサイズを大きくして、混合気の状態を変えることができます。

さらに、ニードルジェット/フロートニードルバルブ/パイロットスクリュー/フロートチャンバーガスケットなど、キャブレターのオーバーホールに必要な部品がほぼすべて入っているのも燃調キットの特長です。

純正パーツではそれらはすべて単品部品として設定されているので、オーバーホールを行う際にはパーツリストを見ながらピックアップしなくてはなりません。ME06型XR250Rでどうかは分かりませんが、機種や年式によっては純正部品が販売終了になっていることもあります。

それらの事情を考慮すれば、必要な部品がすべてケースに入っている燃調キットの方が明らかに便利です。

ただし、燃調キットを選定する際は、オーバーホールしようとするキャブレターの号機や車体の型式を明確にしておくことが必要です。キースターの燃調キットは、純正キャブレターの仕様を前提に開発を行ってます。

XR250Rの場合、先述のとおり年式によってME06型とME08型の2種類があり、燃調キットもそれぞれに向けて設定しています。基本的にどちらもケーヒン製PDキャブレーターですが、パイロットジェット/メインジェット/ジェットニードル/ニードルホルダーは仕様やセット内容が異なります。

ME06型XR250R用キャブレターとME06型用燃調キット。ME08型になってもキャブレター本体はケーヒン製PDタイプだが、ジェットやニードルのサイズが異なる。セッティング用のジェット/ニードル/ニードルジェット/メインジェットホルダー/ニードルバルブ/パイロットスクリューなど、オーバーホールやセッティングに必要なすべてのパーツが入ったキット価格は税込4400円とリーズナブル。

オーバーホールはキャブレターの構造や燃調キットのパーツ内容を考慮しながら行う

ガソリンが入った状態で長期間放置されたと思われる今回のキャブレターは、フロートチャンバーまわりの汚れがとくに顕著です。ジェットやジェットホルダーは燃調キット内に新品パーツがありますが、バルブシートは入念な確認が必要です。

フロートチャンバー内ガソリンの増減に合わせて上下するフロートとともに作動するニードルバルブは、油面が上昇すると先端の円錐部分がバルブシートの穴に刺さって、ガソリンの流入をストップします。

ニードルバルブ自体はキースターの特許技術であるAAニードルに交換できますが、キャブ本体に圧入されたバルブシートは交換できません。そのため、ニードルバルブとの接触部分にダメージがあると、見かけ上バルブが閉じてもガソリンの流入が止まらず、オーバーフローを起こす原因になります。

したがって、新品のニードルバルブに交換するだけでなく、バルブシートコンディションの確認と、ニードルバルブがしっかり閉じるための擦り合わせを行うことが有効です。

加えて、絶版車全般のキャブレターで注意が必要なのが、パイロットスクリューのワッシャーとOリングの確認です。

スロットル開度が小さい領域の混合気調整で重要な働きをするパイロットスクリューには、エンジン振動による緩みを防止するスプリングが組み込まれており、さらにスプリングの先には薄い金属製のワッシャーとゴム製のOリングがあるのが一般的です。

中にはそれらが入っていないキャブレターもありますが、XR250Rには入っています。

パイロットスクリューを取り外した際に、スプリング/ワッシャー/Oリングの3点セットが一緒に出てくれば問題ありませんが、ワッシャーとOリングがキャブレター内部に残ってしまうことも少なくありません。

パイロットスクリューにとって、先端のOリングは混合気調整のための重要な部品です。分解時に入っていなかったのであれば、それ以前のメンテナンスの際のミスということになります。

反対に、ボディ内部に残っているのに気づかず、燃調キットのパイロットスクリューにスプリング/ワッシャー/Oリングをセットしてキャブレターに組み付けてしまうと、パイロットスクリュー調整を正しく行うことができず、2次空気を吸い込んでしまう可能性もあります。

燃調キットの説明書を見れば、パイロットスクリューにスプリングとワッシャーとOリングが付くことは一目瞭然です。それにもかかわらず取り外したスクリューにワッシャーとOリングがなければ、ボディ内部にある公算が高いと言えます。

この場合、LEDのスポットライトなどを活用して、パイロットスクリュー取り付け部の奥を入念にチェックして、忘れ物を回収することが重要です。

オーバーホールに必要な部品をすべてセットしている燃調キットだからこそ、純正キャブレター分解時の違和感に気づきやすいといえるでしょう。

フロートの支点となるフロートピンを抜く際に、力任せに叩くとキャブレターボディ側の足が折れることがあるため、フロートピンより細いピンポンチで優しく押し抜く。固着している場合は、キャブレタークリーナーを浸透させて汚れを柔らかくする。

フロートを外しても、ニードルバルブがバルブシートに張り付いて抜けなかったので、プライヤーで引き抜いた。この際にニードルバルブをこじるとバルブシートに傷が付くことがあるので、まっすぐ上に引き抜くことが重要。

バルブシートとニードルバルブの当たり面の汚れは、キャブレタークリーナーをスプレーした後で、綿棒に超微粒子コンパウンドをつけて磨く。

物理的に擦ることで、綿棒の先端に汚れの輪がついてきた。ニードルバルブを交換したのにオーバーフローが解消しない時には、バルブシートの当たり面を確認しよう。

パイロットスクリューとスプリングは一緒に外れてきたが、スプリングの先にあるはずのワッシャーとOリングはついてこなかった。ピックツールでネジ穴の奥を探ったが手応えがなかったので、誰かが以前いじった際に入れ忘れたのかもしれない。

外せる部品をすべて外したら、泡タイプのキャブクリーナーをたっぷりスプレーする。見えている部分だけでなく、エアやガソリン通路の内部にも吹きつけ、各所の穴が貫通していることも確認しておく。

スプレーだけで落ちない汚れはブラシを併用する。

トップカバーを開けてスロットルリンクを持ち上げ、ジェットニードルを取り外す。ニードルの表面にもワニスが付着しているのが分かる。これを放置すると、メインボアに向かってガソリン上ってくるジェットニードルとニードルジェットの隙間にバラつきが出てしまう。

ガソリンで変色した純正パーツ(左)と燃調キット内の新品パーツ(右)の比較。ジェット類は穴の詰まりが問題になるが、メインジェットホルダーの先にあるニードルジェットは、吸気脈動によってジェットニードルで内径を叩かれることで穴径が拡大していることがある。

セッティングはノーマル状態で試走してから変更するのが正解

燃調キットは、純正部品にはない複数のジェットやニードルが用意されているのが特長ですが、それらを使うか否かは個々のエンジンや吸排気系の状態によって異なります。

そのためオーバーホール時は、まずはスタンダードサイズのジェットやニードルを使って組み立てて、スパークプラグの焼け具合をチェックした上でサイズを変更します。

これに対して、問答無用で交換すべきなのは、フロートチャンバーガスケットやOリングなどのゴム製パーツです。

各部のゴムパーツは、組み込む際に潰れたり変形することで気密性を保っています。ゴムが新しいうちは弾力性があるためパーツの着脱にも追従できますが、時間が経つにつれて硬化して変形グセがついてしまいます。

すると、一度取り外したパーツを元に戻した際に当たり所が変化して、不具合が生じる場合があります。フロートチャンバーを取り外した際にガスケットを再利用すると、それがきっかけとなってガソリンが滲み始めるというのが典型的な例です。

そうしたトラブルを避けるには、ガスケットやOリングはすべて新品に交換するしかありません。半世紀以上にわたってキャブレターパーツを作り続けてきたキースターは、オーバーホール時に生じる不具合や問題も熟知しています。

だからこそ、燃調キットにセッティング要素だけでなくオーバーホールに必要なパーツを加えているのです。

名車と呼ばれるXR250Rのコンディションを維持するためにも、燃調キットを活用したキャブレターメンテナンスやセッティングをおすすめします。

メイン系で最初にセットするニードルジェットは、組み付け方向が決まっている。端部が凹んでいる側をメインボア側に向けて挿入する。

ニードルジェットをジェットホルダーで固定してから、純正サイズ(#125)のメインジェットを取り付ける。

パイロットジェットは#40がスタンダードサイズ。先端のテーパー部分がボディ内部に密着することで、シール性が確保される。

パイロットスクリューを外した時はワッシャーとOリングを確認できなかったが、組み立て前に念のため、もう一度パーツクリーナーをスプレーしてみた。

するとスプレーの圧力でワッシャーとOリングが浮き上がり、無事に回収することができた。これを見逃すとスロー系の不具合の原因となることがある。

Oリングはパイロットスクリューのストレート部分とボディ間の隙間を埋めて、ボディ外部からの2次空気の吸い込みを防ぎ、ワッシャーはスプリングの端部がOリングを傷つけるのを防いでいる。この状態でスクリューを回らなくなるまでねじ込み、規定の戻し回転数だけ緩めることで、スロットル低開度領域の混合気量が決まる。

キースターのAAニードルをセットしたフロートをボディに組み込み、フロートピンを挿入したら、フロートがスムーズに動くことを確認する。

ジェットホルダーの根元にハカマをはめて、新品ガスケットをはめたフロートチャンバーを組み付ける。ボディに合わせる際にガスケットが溝から外れて挟まらないよう、慎重に作業する。

スロットルバルブをボディから取り外して、キースター製ジェットニードルを組み付ける。ニードルサイズはスタンダード。

スロットルバルブを着脱するには、スロットルシャフトにスロットルアームを固定するビスを外さなくてはならない。するとリターンスプリングが緩んでシャフトが抜けてくるので、スロットルドラムをボディに押しつけながら作業する。

トップカバー裏側の2個のピンとトップカバーガスケットの穴を合わせて、ボディにビス留めする。スロットルリンクを外しているので、復元後はスロットルドラムを操作してスロットルバルブがスムーズに開閉することを確認しておく。

メッキ仕上げのスロットルバルブに大きな傷はなく、ジェットやニードルなどの内部パーツを刷新したことでフルオーバーホールが完了。この状態で車体に取り付けて、走行後にスパークプラグの焼け具合を見た上で、必要であればセッティングを行おう。


※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。