[モンキー50] 小排気量車だからより分かる! キャブレターセッティングの楽しさを体験【燃調キットでチューニング】
ボアアップキットをはじめとしたエンジンパーツや吸排気パーツの交換によって、DIYでもモディファイやチューニングを楽しめる4ミニモデル。スペシャルパーツ満載のカスタムの一方で、見た目は控えめでも中身はちょっと違う、という個性的ないじり方を楽しむ人もいます。そんな場合にもキースターの「燃調キット」はおすすめです。「純正キャブなどたかがしれてるでしょ」と軽く見ているライダーほど、セッティングの奥深さに圧倒されるはずです。
●BRAND POST提供:キースター
エンジンと吸排気系パーツの組み合わせによって、最善のセッティングがある
排気量/カムシャフト選定/マフラー仕様によって、エンジンが吸い込める空気量が決まり、その空気量に適したガソリンの量を、パイロットジェットやメインジェットの口径、ジェットニードルのストレート系やクリップ段数で決めるのが、キャブセッティングです。
昨今、フューエルインジェクションの原付モデルをチューニングする際には、サブコンピュータを追加したり、ガソリン噴射量をアップする増量インジェクターに交換するのが定番となっています。スロットル開度とエンジン回転数でガソリンの噴射量をデジタル的に決めているインジェクション車は、排気量アップなどプログラム以外の設定に対して融通が利きません。
それに対してキャブレターには、ど真ん中のストライクから外れていても、広めのゾーンで対応/追従できる柔軟性の高さがあります。バイクいじりの経験値をアップさせるのに最適な4ミニいじりでは、「排気量をこの程度アップしたらキャブはこうする」というセオリーのようなものもあります。
モンキーを88ccにボアアップした場合、キャブ口径をφ20/φ24/φ26に拡大するのが定石ですが、では純正のφ16のままでは走らないのかと言えば、そういうわけではありません。
エンジンが吸い込むことができる最大の空気量はベンチュリー径に依存するため、φ16とφ26を比べれば、φ26の方がより多くの空気が通過できるポテンシャルがあります。
しかしエンジンの仕様によっては、φ26を生かし切れず、ベンチュリー径の小さいφ16の方が一定の回転数までは流速が上がって、ピックアップが良く乗りやすく感じることもあります。
ただし、φ16のキャブのまま50ccから88ccに排気量をアップしたような場合、インナーパーツの交換によってセッティングを変更した方が、フィーリングがより良くなるのは間違いありません。そのために重宝するのがキースターの燃調キットです。
セッティングの参考になる燃調キットのチャート
ここで紹介するのは、現在では販売終了となったヨシムラ製88ccボアアップキットを装着したAB27型ホンダモンキーの例です。ボアアップキットと同時に純正風フォルムのマフラーに交換した上で、純正のPB16キャブレターとZ50J用エアークリーナーボックスを組み合わせてZ50J風カスタムとしています。
この組み合わせで走行すると、スロットル開度4分の3から上で完全な頭打ち状態になり、エアークリーナーボックスを取り外すと、エンジン回転はスロットル全開までスムーズに上昇します。
この症状から明らかなのは、ジェットやニードルによるセッティング以前に、エアークリーナーボックスの吸入口面積やボックス容積などによって、吸入空気量が足りないということです。空気量が足らないのは、キャブセッティングではどうしようもありません。
一方で、エアークリーナーボックスを外せば全開までスロットルを開けられるということは、十分とは言えないまでも必要量は満たしていると考えることができ、この場合はキャブセッティングが可能だと判断できます。
モンキーAB27用燃調キットには、パイロットジェット3種類/メインジェット6種類/ジェットニードル4種類が入っています。このうち1種類はスタンダードサイズなので、パイロットジェット2段階/メインジェット4段階/ニードルジェット3段階に調整できます。
ジェットとニードルの組み合わせによって混合気がどのように変化するかは、燃調キットに付属する部品リストに記載されています。このリストではジェットやニードルの組み合わせによる空燃比の変化が掲載されており、各要素を絞れば空燃比が薄くなり、拡大すれば濃くなることが示されています。
純正キャブの内部パーツを純正パーツリストで検索しても、スタンダードサイズしかないのに比べれば、燃調キットによる自由度の高さはとても魅力的です。
スパークプラグの焼け具合は、インナーパーツ選定のバロメーター
燃調キットを使って具体的にセッティングを行うにあたって、重要な情報源となるのが、走行フィーリングとスパークプラグの焼け具合です。スロットルを開けた時にガッツのあるトルク感があるのに、回転がスムーズに上がらなかったり伸びが悪いのは、混合気が濃い場合のサインで、スパークプラグを見ると黒いススが付着してカブったような状態になっていることが多いはずです。
逆に回転上昇はスムーズなのにパワー感がないとか息継ぎするような場合は、混合気が薄く、プラグが白く焼けていることが多いはずです。
走行フィーリングとスパークプラグの焼け具合のどちらを信じれば良いかと言えば、スパークプラグに比重を置いた方が燃焼状態をより正確に把握できるようです。
このモンキーは、エアークリーナーボックスが付いた状態ではエンジンが頭打ちになり、プラグの焼けを見ると中心電極も接地電極もくすぶった状態です。ここから判断できるのは、パイロットジェットもメインジェットも濃いということですが、排気量をアップしたのに純正セッティングで濃いということがあり得るのか、という点が疑問に感じる人もいるかもしれません。
多くのライダーは直感的に、排気量を大きくしたのならガソリンもたくさん消費するはずだと考えるでしょう。しかし、多くのガソリンを燃やすにはたくさんの空気も必要です。空気の量に変化がないのにガソリンだけ増やしても、有効な混合気にはなりません。ましてやこのエンジンは、エアークリーナーボックスを外すとスムーズに回るようになるという仕様なのです。
手で塞いだ掃除機のホースの先端を徐々に開くと、隙間が狭いほど負圧が大きいことを実感できるはずです。キャブレター内部でもそれと同じことが起こり、エアークリーナーボックスの小さな開口部だけでは足りない空気を、キャブレター内部、具体的にはパイロットジェットやメインジェットからも吸い出そうとして、混合気が濃くなっているのです。混合気は空気とガソリンのバランスなので、ジェットの口径を大きくするならそれに見合った空気を吸わせる必要があります。
エアークリーナーボックスを撤去してファンネルやパワーフィルターに変更すれば、吸入空気量が増加するためジェットのサイズも上げられるかもしれません。逆に、エンジンが要求する空気量に満たないことを承知の上で、クラシカルなムードを優先してエアークリーナーボックスを装着するなら、大きな吸入負圧に合わせてジェットサイズを小さくすることで混合比は薄くなり、スパークプラグのカブりも改善します。
燃調キットのマニュアルには、スパークプラグの焼け具合とセッティング傾向のチャートも掲載されています。排気量をアップしたからジェットも大きくなるはずというイメージはいったん横に置いて、実走行後のプラグをチェックした上でセッティングの方向性を決めることをお勧めします。
純正D型パイロットをマイナス溝スクリューにするだけで、いじりやすさが格段にアップする
キャブセッティングについては、過去の記事を通じて「パイロットジェットからジェットニードル、メインジェットの順に行う」ことを説明してきました。排気量に対して相対的にベンチュリー径が小さいと思われる今回の例では、吸入負圧が大きく流速が速くなるため、スロットル開度が小さい領域を受け持つパイロットジェットを先に決めることがより重要になります。
パイロットジェットと並び、アイドリングから低開度域の混合気に影響するのが、パイロットスクリューです。パイロットスクリューは混合気の絶対量を増減させるもので、スクリューを軽く締め切った状態から1と1/2~2回転戻す範囲でアイドリング時のエンジン回転数が高くなるのが正解とされています。
パイロットスクリューで調整する混合気の量は、パイロットスクリューで計量されたガソリンで作られた混合気なので、適正範囲よりもスクリューを開けないと、エンジン回転が上昇しない場合、現状のパイロットジェットが小さいと判断できます。
逆に、適正範囲よりスクリューを締めないとカブり気味になるようなら、パイロットジェットが大きい可能性があります。
パイロットスクリューは、パイロットジェットの選定やスロットル低開度領域のフィーリングにも関与する重要なパーツですが、ある年代以降のホンダ車では、容易に調整できないよう、頭部が特殊なD型スクリューを採用するようになっています。
これを回すための専用スクリューもありますが、燃調キットでは一般的なドライバーで調整できるよう、マイナス溝のオーソドックスなパイロットスクリューをセットしています。
「○○用」と機種を明記してプリセットされたスペシャルキャブレターでも、これまで説明してきたように、エンジンやマフラーの組み合わせによっては、必ずしもベストなセッティングに仕上がっているとは限りません。
逆にメーカー純正キャブでも、燃調キットを使えばセッティングの幅が広がり、快調な走りを楽しむことができます。スマホでコントロールできるインジェクションのサブコンピュータのようなスマートさはないかもしれませんが、スパークプラグの焼け具合を確認しながら、パイロットジェットやニードルやメインジェットを交換していくキャブセッティングには、愛車と会話するような楽しさを実感していただけると思います。
※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
- 2023/12/19
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