作業履歴が分からない絶版車のキャブレターはキースターの燃調キットで初期化しよう!
「令和のバイクブーム」と呼ばれるほどに盛り上がる現行モデルと並び、懐かしの絶版車の人気も沸騰しています。製造から長い年月を経てもなおライダーの注目を集め続ける旧車や絶版車には年式なりの弱点がありますが、中でもキャブレターは要注意ポイントです。長期放置車を復活させる際のオーバーホールは必須ですが、摩耗や破損に直面してガックリすることも……。キースターの燃調キットはそんな時に頼りになるアイテムです。ここではKZ900シリーズのKZ900B(LTD)を題材にキースターの燃調キットを使用したキャブレター初期化術を紹介します。
●BRAND POST提供:KEYSTER 岸田精密工業
セッティング以前の原状回復が必要になることも多い絶版車用キャブレター
発売から50周年を迎えたカワサキZ1が大きく取り上げられるなど、50ccの原付から750ccを超える大型車まであらゆる排気量帯の絶版車が軒並み盛り上がっている昨今。1972年に発売されたZ1を筆頭に、今なお走り続ける1970~1980年代モデルも少なくありません。
とはいえ、エンジンの圧縮が低下したりフロントフォークのインナーチューブが錆びてフォークオイルが漏れた状態で動くのと、好調に走行できるのとではわけが違います。
古いバイクを調子よく走らせるには、適切なメンテナンスや手入れが不可欠です。それは現行モデルでも同じですが、何人ものオーナーの手を経てきた絶版車にとっては特に重要です。悪気の有無は別として「まあいいや」で済ませた作業が、後々になって悩みのタネとなることも珍しくありません。
絶版車ならではの装備であるキャブレターの場合、中途半端な作業が不調の原因となることがあります。2気筒や4気筒エンジン用キャブの同調ズレは典型的な不調例です。
キャブ清掃時にリンクのアジャストスクリューを不用意に回すと同調がズレてしまいます。バキュームゲージやエアーフローゲージを使って調整すれば同調は回復しますが、目見当で「こんなものかな」で済ませてしまうと、オーナーが変わった後も引き継がれる可能性があります。
ガソリンが変質したワニスやサビで詰まったスロージェットやメインジェットをピンバイスの刃で突いたり、針金をゴシゴシ通すことで穴径が拡大して空燃比が濃くなるのは、絶版車あるあるの代表例です。
単気筒ならまだしも、多気筒用キャブのジェット径がまちまちでは、セッティングは揃いません。詰まりを掘った結果、ほんの少しぐらい穴径が変わっても影響はないだろうと軽視してはいけません。ジェットの口径は0.1mm単位で管理されており、たとえ穴径より細いピンバイスを使っても穴の内径を僅かに削ればガソリンの流量が変化するリスクがあります。
エンジンが始動して走行が可能であっても吹け上がりに違和感がある、プラグがくすぶり気味だったり逆に焼け気味だったりする場合は、一度本来のスタンダードセッティングに戻して調子を確認することが有効です。その場合はエアクリーナーエレメントやキャブ同士の同調を合わせておくことが前提となります。
燃調キットがあればオーバーホールに有効なパーツまで一式揃う
エンジンや排気系の仕様に応じてキャブレターのセッティングを行う場合、交換するパーツはスロージェット、ジェットニードル、メインジェットの3点となります。しかし先の述べたように、どんな手入れが行われてきたか分からない絶版車用キャブの場合、それ以外のパーツ交換が必要なこともあります。
たとえばアイドリング領域の混合気量を調整するパイロットスクリューは、細い針状の先端を傷つけたりサンドペーパーで磨いて細くすると、サービスマニュアルに記載された戻し回転数と混合気の量が合わなくなってしまいます。
吸入空気が通るベンチュリーに取り付けられたニードルジェットは、ジェットニードルとの組み合わせによって最終的にベンチュリーに吸い出されるガソリン量を決める重要な部品ですが、長年にわたってジェットニードルと接触することで摩耗して実質的な口径が拡大することもあります。
するとメインジェットを絞り、ジェットニードルのストレート径を太くしても混合気が濃くてカブリ傾向が改善されないという症状が発生する場合もあります。
さらに腐食したフロートバルブを別機種用のパーツに交換した際に、バルブの全長違いによってフロートチャンバー内の油面が変化してしまうこともあります。
このようにジェットやニードルを交換するだけでは回復しない不具合を抱えた絶版車用キャブのメンテナンスに最適なのがキースターの燃調キットです。基本的にはキャブセッティングを行うための製品ですが、ガスケット類やフロートバルブ、パイロットスクリューやエアースクリュー、ニードルジェットやスタータープランジャーなどオーバーホール時に必要となるパーツ類が含まれているのが大きな特長です。
キャブレターのメンテナンス歴が長いユーザーなら、オーバーホール時にどれだけの交換部品が必要かを理解した上でパーツ注文ができるでしょう。
しかしあまり経験したことないユーザーにとっては「これだけの部品を交換すれば初期化はOK!」という燃調キットの存在は心強いものです。また数多くの絶版車専門ショップでの使用実績が物語るとおり、プロにとってはパーツリストからひとつずつリストアップしなくても必要なパーツがまとめて手に入る利便性の高さが支持されています。
一度スタンダード状態に戻してからセッティングを行う
ここで紹介しているカワサキKZ900LTD用キャブレターは外観はそれなりに見られる状態ですが、ワニスが付着したジェットニードルから長期放置車であることがわかります。ワニスが付着していてもピストンバルブが開閉すればキャブの機能に問題はないと思うかもしれません。
しかしワニスによってジェットニードルの表面がデコボコになると、スロットル開度が大きくなる間のニードルジェットとの隙間面積の増加率が不均一になります。ジェットの穴径と同様にジェットニードルのストレート径も0.01mm単位で太さが管理されているので、たとえワニスといえども影響しないとはいえません。
またこのキャブは過去のオーナーの手によって、1個のニードルジェットの先端がニッパでむしられたように破壊されていました。これではメインノズルに掛かる負圧がメチャクチャになってしまいます。ニードルジェットはメインジェットホルダーを外してベンチュリー側からフロートチャンバー側に押し込めば抜ける構造なので、なぜベンチュリー内で先端を掴もうとしてたのかは分かりませんが、絶版車と付き合う中では不幸にしてこうして破壊された部品に巡り会う機会もあります。
また上記の製品画像には写っていませんが、キットにはチョークのスタータープランジャーも入っています。スタータープランジャーは冷間始動時に必要な濃い混合気を作るためのパーツで、チョークノブを操作するとゴム製のシールがガソリン通路を開閉します。
このシールが経年劣化によって硬化すると、チョークを閉じても通路からガソリンが漏れてベンチュリーに吸い込まれて混合気が濃くなる不具合につながります。パイロットスクリューを絞ってもアイドリングの混合気が濃い、シリンダーによってアイドリングの燃焼状態がまちまちといった場合に、スタータープランジャーが原因だったという例は少なくありません。
絶版車の調子が悪い時、往々にして「古いバイクだから」のひと言で片付けてしまいがちですが、新車の頃から不調だったわけではありません。つまり大半は、自然劣化や過失や故意の行動など真の原因があるはずです。
キャブレター場合、燃調キットを活用することで広範囲の不具合や不調を改善することができます。キャブレターボディやスロットルバルブの摩耗や破損など、パーツ交換だけでは解決できないトラブルもありますが、スタンダードサイズのジェットやニードルを使用することで混合気の濃い薄いを判断する基準ができ、本来の目的であるキャブセッティングにも大いに役立ちます。
ジェットやニードルしかないセッティングキットではなく、ジェット類のサイズがスタンダードのみのオーバーホールキットでもない。劣化やトラブルありきといっても過言ではない絶版車にとって、燃調キットは配慮が行き届いたキャブレターケア製品といえるでしょう。
※本記事はキースターが提供したもので、一部プロモーション要素を含みます。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。