’10年に登場し熟成が進められてきたトライアンフのアドベンチャーモデル・タイガー800が、900にフルモデルチェンジ。エンジンもフレームも刷新されたそのフィーリングを体感すべく、テスターの伊丹孝裕氏がモロッコへと飛んだ。
●文:伊丹孝裕 ●写真:トライアンフ ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
見た目はキープコンセプトでも中身はまるで別モノ
タイガー800のデビューは2010年のことだ。その後、’14年と’18年に改良が加えられて現在に至るわけだが、ついにフルモデルチェンジを敢行。車名も新たにタイガー900となり、近々リリースが始まる。
モデルバリエーションは豊富だ。タイガー900をスタンダードとし、その上位グレードとしてGT、GTプロ、ラリー、ラリープロの計5機種を用意。このうち、日本にはスタンダード以外の4機種が導入され、幅広いニーズに応える準備が進められている。先頃、その新生タイガーの国際ローンチがモロッコで開催されたため、インプレッションをお届けしたい。
今回試乗できたのはGTプロとラリープロで、オンロードとオフロードを2日半に渡ってじっくりと体感することができた。まずモデルの概要を簡単に紹介しておくと、GT系はフロントに19インチ、リヤに17インチホイールを組み合わせ、オンロード色が強い仕様となる。GTプロになると電子デバイスや快適装備が充実し、その名の通り、グランドツアラーとしての機能が高められているのが特徴だ。
一方のラリー系は、フロントに21インチホイールを装着。サスペンションのトラベル量も格段に増え、悪路での走破性が重視されている。ラリープロになると、電子デバイスと快適装備に加えてプロテクション機能も向上。タフな使い方が想定されたヘビーデューティ仕様というわけだ。
外装はすべて刷新されているが、タイガー800からの正常進化もしくはキープコンセプトと呼べるもので、奇をてらった部分はない。よりシャープに、よりエッジの効いたデザインは若々しく、それでいてアルミパーツの配し方や落ち着いたカラーリングによって上質さももたらされている。
ところがその先はまったくの別世界だ。エンジンを始動させた瞬間に分かるのは排気音の変化で、従来の800ccユニットがザラついた、どちらかと言えばやや甲高いサウンドだとすれば、新しい888ccユニットは唸るような重低音サウンドを披露。何台かのモデルにはアクセサリーのアロー製マフラーが装着されていたものの、理由はもっと根本的なところにあった。
実は今回のモデルチェンジで注目すべきポイントがエンジンのクランクシャフトにある。これまではクランクピンが120度ずつ位相され、クランクが240度回転する毎に点火される等間隔爆発エンジンだった。
対する新ユニットは、3つのクランクピンを90度ずつ位相。点火は180度~270度~270度というシークエンスを持つ不等間隔爆発エンジンとして刷新されたのだ。
もちろん、バランスを取るためのウェイトが適切な位置に配され、低回転域のまろやかさは800㏄ユニットを凌駕。ミドルクラスのV型2気筒エンジンのようにコロコロと穏やかに回り、街中でのストップ&ゴーにまったくストレスを感じない。
高回転まで回りたがるタイプではないが、それでいい。このカテゴリーでは不要な領域であり、4000回転も回っていればほとんどの場面で事足りるトルク重視の味つけが好印象だ。適切な燃調とスロットルの開けやすさがリンクし、車体サイズがワンランク小さく思えるほど一体感が高い。
新種のトリプルエンジン・Tプレーンを積んだ’20トライアンフ タイガー900GTプロ/ラリープロ。次ページではモロッコの街なか・ワインディングでそのハンドリングを試してみる。
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