’10年に登場し熟成が進められてきたトライアンフのアドベンチャーモデル・タイガー800が、900にフルモデルチェンジ。エンジンもフレームも刷新されたそのフィーリングを体感すべく、テスターの伊丹孝裕氏がモロッコへと飛んだ。後編ではモロッコの街なか・ワインディングでのハンドリング等について。
●文:伊丹孝裕 ●写真:トライアンフ
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’10年に登場し熟成が進められてきたトライアンフのアドベンチャーモデル・タイガー800が、900にフルモデルチェンジ。エンジンもフレームも刷新されたそのフィーリングを体感すべく、テスターの伊丹孝裕氏が[…]
不等間隔爆発が生み出すトラクションとスタビリティ
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試乗テスト初日はタイガー900GTプロをメインに乗り、街中とワインディングでそのハンドリングを堪能した。モロッコという土地柄、路面は舗装されていても決してグリップはよくないが、タイヤの接地感は分かりやすく、常に路面を追従。低く、前方へ移動したエンジン搭載位置も効果を発揮し、タイトなコーナーでも抜群のスタビリティを保ったままクリアすることができた。
デフォルトでセットアップされているライディングモードには、レイン/ロード/スポーツ/オフロードの4パターンがあるが、基本的にロードを選択しておけば大半のシチュエーションとスキルをカバー。レインのスロットルレスポンスでも不満を覚えるライダーは、そう多くないだろう。
こうした電子デバイスの切り換えや選択のしやすさはトライアンフの美点のひとつであり、もちろんタイガー900も踏襲。ハンドル左側のスイッチボックスに備えられたジョイスティックタイプのボタンを使えば、走行中でも感覚的な操作が可能だ。
さて、タイガー900はアドベンチャーにカテゴライズされるモデルゆえ、やはりその真骨頂はラリープロにあった。試乗2日目はダートを縦横無尽に突き進むコースが設定され、本来それは、自分のようなサーキット上がりのライダーにとって過酷と言えるシチュエーションだ。
ビッグバイクでガレ場やサンドを走るという行為は、転倒に直結と言っても決して大げさではないのだが、今回はまったくの無傷。特にガレ場を低速で進んで行った時のトラクションにはただ驚かされることになった。
スロットルを少しでも開けていれば、タイヤが石を、またはその下の路面を掴み、ググッ、ググッと車体を進めていく力強さと安定感は、この排気量帯のモデルでは感じたことがないもの。不等間隔爆発のエンジン、低重心の車体、しなやかなサスペンションがもたらす突破力の高さの裏に、いかに膨大な実走テストがあったか。現場ありきの開発スタッフの生真面目さが端々に感じられた。
もうひとつ、あまりに自然で見過ごしそうになるのだが、不整地でしっかり機能するライディングモードも秀逸だ。「オフロード」を選択すれば、トラクションコントロールが絶妙に介入し、グリップとホイールスピンを狙い通りに制御することが可能だった。
万能であろうとするがために、いたずらに巨大化していくアドベンチャーモデルの中、本来必要なはずのサバイバル能力が見直されたモデル。それがタイガー900である。
トライアンフ タイガー900GTプロ

メーターには7インチの大型TFTディスプレイを採用。好みに応じて4つの表示パターンが選べる他、数値やタコメーターの色をホワイト/グリーン/ブルー/オレンジの中から選択することができる。通話、音楽、ナビ、ゴープロなど、様々な機器との拡張性も高い。 [写真タップで拡大]
トライアンフ タイガー900ラリープロ

ラリープロのサスペンションは前後ともにショーワ。フロント240mm、リヤ230mmのホイールトラベル量が確保され、高い走破性を実現。アクロンのワイヤースポークリムはチューブレスタイプが採用されている。 [写真タップで拡大]
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