本来のサバイバル能力を磨き直したアドベンチャー

’20 トライアンフ タイガー900GTプロ/ラリープロ海外試乗レポート後編

’10年に登場し熟成が進められてきたトライアンフのアドベンチャーモデル・タイガー800が、900にフルモデルチェンジ。エンジンもフレームも刷新されたそのフィーリングを体感すべく、テスターの伊丹孝裕氏がモロッコへと飛んだ。後編ではモロッコの街なか・ワインディングでのハンドリング等について。


●文:伊丹孝裕 ●写真:トライアンフ ※本内容は記事公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。

不等間隔爆発が生み出すトラクションとスタビリティ

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試乗テスト初日はタイガー900GTプロをメインに乗り、街中とワインディングでそのハンドリングを堪能した。モロッコという土地柄、路面は舗装されていても決してグリップはよくないが、タイヤの接地感は分かりやすく、常に路面を追従。低く、前方へ移動したエンジン搭載位置も効果を発揮し、タイトなコーナーでも抜群のスタビリティを保ったままクリアすることができた。 

デフォルトでセットアップされているライディングモードには、レイン/ロード/スポーツ/オフロードの4パターンがあるが、基本的にロードを選択しておけば大半のシチュエーションとスキルをカバー。レインのスロットルレスポンスでも不満を覚えるライダーは、そう多くないだろう。 

こうした電子デバイスの切り換えや選択のしやすさはトライアンフの美点のひとつであり、もちろんタイガー900も踏襲。ハンドル左側のスイッチボックスに備えられたジョイスティックタイプのボタンを使えば、走行中でも感覚的な操作が可能だ。 

【’20 TRIUMPH TIGER 900 GT PRO】

さて、タイガー900はアドベンチャーにカテゴライズされるモデルゆえ、やはりその真骨頂はラリープロにあった。試乗2日目はダートを縦横無尽に突き進むコースが設定され、本来それは、自分のようなサーキット上がりのライダーにとって過酷と言えるシチュエーションだ。

ビッグバイクでガレ場やサンドを走るという行為は、転倒に直結と言っても決して大げさではないのだが、今回はまったくの無傷。特にガレ場を低速で進んで行った時のトラクションにはただ驚かされることになった。 

スロットルを少しでも開けていれば、タイヤが石を、またはその下の路面を掴み、ググッ、ググッと車体を進めていく力強さと安定感は、この排気量帯のモデルでは感じたことがないもの。不等間隔爆発のエンジン、低重心の車体、しなやかなサスペンションがもたらす突破力の高さの裏に、いかに膨大な実走テストがあったか。現場ありきの開発スタッフの生真面目さが端々に感じられた。 

もうひとつ、あまりに自然で見過ごしそうになるのだが、不整地でしっかり機能するライディングモードも秀逸だ。「オフロード」を選択すれば、トラクションコントロールが絶妙に介入し、グリップとホイールスピンを狙い通りに制御することが可能だった。 

万能であろうとするがために、いたずらに巨大化していくアドベンチャーモデルの中、本来必要なはずのサバイバル能力が見直されたモデル。それがタイガー900である。

【’20 TRIUMPH TIGER 900 RALLY PRO】

トライアンフ タイガー900GTプロ

エンジン搭載位置はタイガー800比で前方へ40mm、下方へ20mm移設され、重心を最適化。サイドとアンダー部分にはガードが標準装備されている。

ラリープロのサスペンションは前後ともにショーワ。フロント240mm、リヤ230mmのホイールトラベル量が確保され、高い走破性を実現。アクロンのワイヤースポークリムはチューブレスタイプが採用されている。

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