日本車の絶頂期だった’80年代の名車たちに“高騰”の波が押し寄せている。超プレミアマシンと化した’70年代車のような状況ではまだないものの、現実的な価格で入手できる時間的猶予はそう長くないだろう。本記事では2ストロークレーサーレプリカの名機・ホンダNSR250Rの状況をレポートする。
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。
流通台数が多いにもかかわらず中古相場は天井知らず
誰もが認めるレーサーレプリカの名機とはいえ、近年、ここまで価格が上昇した絶版車も他にないだろう。’80年代中盤、2スト250ccスポーツの分野で他社の後塵を拝していたホンダ。その起死回生の一発が「NSR250R」だった。ワークスマシン・RS250RWのフルコピーを標榜し、市販レーサーのRSと共同開発された、2ストレプリカ史に輝く1台だ。
その相場は今、激しく上昇している。トータル10万台以上が販売されただけにタマ数は多く、今も100台以上がヒットするが、一番人気の最終型・MC28ではほぼ200万円と、新車時の3倍近くまでハネ上がっているのだ。その28でロスマンズやレプソルカラーを纏うSPモデルの美車ともなると、300万円が間近な車両も……。
20〜30万円台の個体もあるが、純正部品の供給が悪化(一時話題に上った再販純正部品もほぼ完売)しているため、程度重視なら避けた方が無難。とはいえプレミア化が激しいうえ、現役時に手荒に扱われた個体も多く「中身はズタボロなのに、価格だけは相場に便乗した個体も目立つ」と嘆くショップも。その刺激的な走りには大金を費やすだけの価値があるが、購入の際は冷静に見極める目を持ちたい。
スポンサーカラーのSPが鉄板。乾式クラッチやマグホイールもお宝
NSRの最上位グレード「SP」は国産初のマグホイールや乾式クラッチ(‘89年以降)を装備し、年式によっては「ロスマンズ」「レプソル」といったスポンサーカラーを纏うため、中古車でも鉄板の人気を誇る。また、Jha製のチャンバーなど当時物の絶版パーツを装備した個体も流通しており、これらは部品単体でも高騰している。
サードパーティ中心に維持保存に動きあり!
純正部品の供給は年々悪化中。とはいえ、最大の弱点と言えたクランクシャフトのセンターシール抜けは画期的な対策法が開発され、外装やエンジン部品、ハーネスなどに純正互換の社外品も登場している。中古相場が高騰して価値が高まる(=しっかり整備される車両も増える)ことで、パーツ開発に乗り出すショップも出てくる?
NSR250:各年式のポイント
’87 MC16:レーサーと同時開発
市販レーサーのホンダ RSと共同開発されたリアルレプリカ。リジッドマウントのエンジンや足回りの設定など、歴代NSR中では独自性の高い構成を持つ。
’88 MC18:最速伝説のハチハチ
初代NSR250R MC16の登場わずか1年でエンジン/車体とも完全刷新。簡単な配線加工で約60psに変身する過激さで「NSR=最速」のイメージを確立した伝説的な1台。
’89 MC18:扱いやすく進化
’88年型と同じMC18の型式名を踏襲する改良型。エンジン制御システム=PGMの改良などで扱いやすさと速さを両立。’89年型より追加されたSPグレードで乾式クラッチを歴代初採用。
’90 MC21:NSRの完成形
’88年からわずか2年で再び完全刷新。フレームの剛性バランスを変更し、歴代最良のハンドリングマシンに。チャンバー形状を最適化できる湾曲型スイングアームも特徴。
’94 MC28:片持ち&カードキー
NSRの最終型。出力を45psから自主規制値の40psとしてスイングアームを片持ち化し、カードキーや液晶メーターなど当時の最新ギミックを投入。
あなたにおすすめの関連記事
環境規制で2ストロークに逆風が吹いた'70年代末期。魅力的なモデルの少ない250ccクラスの人気が低迷していた時代でもあった。そんな状況を一撃でひっくり返したのが「RZ250」だ。 レーサーTZの市[…]
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。 ドロドロとアメ車を思わせるV4の鼓動感に、体がのけぞるほどの極太トルク。そして"力"[…]
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。 「PURE SPORTS」。テールに描かれた文字が、その素姓の全てを物語る。大型4ス[…]
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。 '80年代前半、市販車をベースとしたレースの頂点(TT-F1)は過渡期にあり、'84[…]
※本記事に掲載されている車両価格等は、取り扱い店舗における’20年6月時点の情報です(関連写真提供:グーバイク)。 各社のフラッグシップスポーツが1100ccクラス中心だった時代に、908ccと排気量[…]