
ヴィンテージマシンを手に入れようと思ったら、まずはショーやサーキットイベントなどで人脈をつなぎ、アンテナを広げることが先決。〇〇が欲しい、探しているという発信をし続けることで、よほどのレアマシンでなければ大抵はレスポンスがあるはずです。オークションという手もあるっちゃありますが、手数料や輸送費といったコストがバカになりません。とはいえ、ご紹介するようなデイトナで優勝したTZ750そのものが出品されたりするのですからこれはこれで面白い。それにしても予想落札価格7万ポンド(約1390万円)とは驚きです。
●文:ヤングマシン編集部(石橋 寛) ●写真:RM Sotheby’s
“モンスターマシン”と恐れられるTZ750
今でもモンスターマシンと恐れられるTZ750は、市販ロードレーサーだったTZ350の並列2気筒エンジンを横につないで4気筒化したエンジンを搭載したレーサー。
なお、後に登場するファクトリーマシンがYZR750で、TZ750はプライベーター向け市販モデルとして発売されました。
1970年代初頭、ヤマハはフォーミュラ750の制覇を目指してプロトタイプのTZ750を密かにテストしていたといいます。1973年にはオーストラリアのケル・カラザースがケニー・ロバーツに先がけてテスト。
この際、スイングアームの延長、それに合わせてフロントサスペンションを煮詰めなおしたと語っています。
1974年のデビュー戦となったデイトナ200ではMVアグスタから移籍したばかりのジャコモ・アゴスティーニが優勝し、ケニー・ロバーツはエキゾーストのひび割れからスピードが乗らず2位というリザルトに。
写真は1974年にデイトナ200でデビュー、翌1975年にジーン・ロメロによって同レースで優勝したマシンそのもの。レストアも見事にきまった1台。
本マシンはジーン・ロメロ自身が駆ったマシンそのもの
ご紹介するマシンは、彼らとともに走ったワークスライダー、ジーン・ロメロ自身が駆ったシリアルナンバー「409000295」そのもの。
ロメロは1975年も米国ヤマハファクトリーチームに所属していて、この年のデイトナ200ではロバーツはリタイヤ、ロメロはレース途中でエンジンの不調が発生したにもかかわらず、このマシンで優勝を手に入れたのでした。
ちなみに、この時のプリペアは有名なチューナー、ドン・ベスコ・モーターサイクルだったとされています。
その後、数人のオーナーを経て2004年にイギリスのクラシックバイクショーでレストアされた「409000295」がお披露目をされたとのこと。1974年から1979年の間に製造されたTZ750は567台とされておりますが(諸説あります)。
やはり、レースヒストリー、それも優勝記録があるマシンは価格以上の価値がありそうです。
TZ350の並列エンジンをつなげて4気筒化されたエンジンは今でもモンスターと称されるもの。ボアストローク64×54 mm、694cc、90ps/10500rpmが公表値。
北米ヤマハのファクトリーマシンながら、レースプリペアは知る人ぞ知るドン・ベスコによるもの。ヤマハファンにはお馴染みの名前でしょう。
2004年のイギリスで開催されたクラシックバイクショーで出展された「409000295」。またがっているのはロメロ本人でしょうか。
一般的なプライベーターマシンなら「バリュープライス」?!
なお、ご参考までに一般的なプライベーターマシンもご紹介しておきましょう。
こちらは1978年モデルのTZ750Eで、ホイールベースがそれまでの1407mmから1390mmへと変更されています。747ccへと排気量がアップされて出力が向上したほか、5kgの軽量化が図られるなど熟成が進んだマシンと言えるでしょう。
生産台数は162台とされ、1974年の初代(TZ750A)の213台に次ぐものとなります。
レースヒストリーは公表されていませんが、「409000394」のシリアルナンバーから紐解けばそれなりの背景が明らかとなるでしょう。こちらは、3万2400ドル(約470万円)で落札されています。
ロメロのマシンとは一桁違うものですが、そこはファクトリー、デイトナ優勝といった偉大なる付加価値と比べるのが酷というもの。
むしろ、史上最凶のモンスターとしてはなかなかのバリュープライスではないでしょうか。
1978年モデルは排気量がアップされ、ホイールベースを短縮。タンクやテールカウルの形状が違うことにもご注目。
乾燥重量が先代モデルの157kgから152kgまで減量され、またホイールベースも1407mmから1390mmへと短縮されています。
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