
1980年代を通じて過熱し続けたレーサーレプリカブーム。このスペック至上主義の時代には、わずか1馬力の差がマシンの命運を分けることもままあった。ここでは4ストレプリカ時代を切り開き、GSX-R400Rの前身にもなったスズキGSX-Rについて振り返ろう。※本記事はヤングマシン臨時増刊『ニッポン旧車烈伝 昭和のジャパン・ビンテージ・バイク323選』からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
スズキGSX-R:斬新かつ孤高のネーム、走りもケタ違い
1983年は、世界耐久や鈴鹿8耐でスズキの耐久レーサーGS1000Rが旋風を巻き起こした。
その年の暮れ、晴海で開催された東京モーターショーに、そのGS1000Rと見紛うばかりの市販予定車が展示された。「GSX-R」だ。
2眼ヘッドライトにハーフカウル、そしてヨシムラ譲りの集合サイクロンマフラーの姿は、まさに耐久レーサーそのもの。
400ccながら、排気量を越えた性能を示すGSX-Rという孤高のネーミングも斬新だった。
1984年に登場した市販車の走りもケタ違いだった。
ライバルに先駆けて搭載した水冷ユニットはクラス最強の59ps。400唯一のアルミフレームで、CBRやFZより10kg以上軽い152kgを実現した。
【1984 SUZUKI GSX-R】■水冷4スト並列4気筒 DOHC4バルブ 398cc 59ps/11000rpm 4.0kg-m/9000rpm ■152kg タイヤサイズF=100/90-16 R=110/90-18 ●発売当時価格:53万9000円
【2型は白メーターに】Γ同様3000rpm以下を省略したタコメーター。1985で白い文字盤を採用した。
【4耐優勝が勲章】常に勝利と栄光に包まれていた
爆発的にヒットし、他メーカーもGSX-Rを追撃すべく技術を磨いた。こうして本格的な4ストレプリカ時代が幕を開けたのだ。
毎年のように改良を重ね、ついに1986年型で待望のフルカウルを獲得。ライバルが戦闘力を増す中レースでの勢いは止まらず、1986~1987鈴鹿4耐をヨシムラGSX-Rが連覇。
また、バイク漫画のバイブル「バリバリ伝説」でグンとヒデヨシが4耐にGSX-Rで出場したことも人気に一層の拍車をかけた。
1989年にはヨシムラのダグ・ポーレンが国際A級TT-F3で年間タイトルに輝くなど、常に最先端のパフォーマンスを堅持し続けた。そして1990年、400が倒立フォークなどを獲得し、最終型に進化を果たす。
歴代のGSX-Rは、過激なパワーとハンドリングで乗り手を選んだが、常に勝利と栄光に包まれていたのだ。
先代モデル:1983 スズキGSX400FW
【スズキ初の水冷直4】他社より遅れてスズキが4スト水冷直4を搭載。このユニットがGSX-Rに受け継がれた。
スズキGSX-Rの系譜
1984 スズキGSX-R:初代登場
【1984 SUZUKI GSX-R】クラス初のアルミフレームで、異例のパワーウェイトレシオ2.57kg/psを達成。59psがその後の自主規制値になった。
1985 スズキGSX-R:色変更/白メーター
【1985 SUZUKI GSX-R】メーター文字盤を白とし、青×白、紺×白×赤を設定。後に赤×黒と赤シートのヨシムラカラーを追加。
1986 スズキGSX-R:空油&水冷に
1986 スズキGSX400Xインパルス:出ました東京タワー!
【1986 SUZUKI GSX400X IMPULSE】1986のエンジンを鉄フレームに搭載。ネイキッドのXと、ハーフカウルのXSがあった。Xは独特なライトステーの形状と色から「東京タワー」の愛称が。
1987 スズキGSX-R400:再び2眼に
【1987 SUZUKI GSX-R400】新気導入システムSCAIを投入。再び2眼になり、イエローバルブやラジアルタイヤも採用。車名に400が付いた。
1988 スズキGSX-R400:新フレーム/キャブ
【1988 SUZUKI GSX-R400】再び水冷となり、高剛性なDC-ALBOXフレームや応答性を高めたスリングショットキャブを採用。
1989 スズキGSX-R400R:足まわり強化
【1989 SUZUKI GSX-R400R】タイヤのワイド化やサブフレーム付きスイングアームなど足まわりを強化。車名はR400Rに。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
ヤマハXJ400:45馬力を快適サスペンションが支える カワサキのFXで火ぶたが切られた400cc4気筒ウォーズに、2番目に参入したのはヤマハだった。FXに遅れること約1年、1980年6月に発売された[…]
ヤマハFZR400:極太アルミフレームがレーサーの趣 ライバルがアルミフレームで先鋭化する中、ついにヤマハもFZの発展進化形をリリースする。 1986年5月に発売されたFZRは、前年に発売されたFZ7[…]
スズキ バンディット400:GSX-Rのエンジン流用ネイキッド 59psというクラス最強のパワーを持ち、1984年に華々しく登場したGSX-R。 レーシーに設定されたこのマシンの心臓部の実用域を強化し[…]
ヤマハFZ400R:ワークスマシンと同時開発 市販レーサーと同時開発したNS250Rがリリースされた1984年5月。 400クラスにも同様の手法で開発されたマシンが、ヤマハから世に放たれた。 FZ40[…]
スズキGSX-R250:過激さ控えめ“アールニーゴー” 1983年のGS250FWでクラス初の水冷DOHC4気筒を開発したスズキ。 しかし、4バルブエンジンの投入は遅れを取り、1987年のGSX-R2[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
空冷ビッグネイキッドをヤマハらしく時間を費やす! 1998年、ヤマハは空冷ビッグネイキッドで好調だったXJR1200に、ライバルのホンダCB1000(Big1)が対抗措置としてCB1300を投入した直[…]
400で初のV4でもホンダ・ファンは躊躇なく殺到! 1982年12月にリリースされたVF400Fは、このクラスでは12,500rpmの未経験な超高回転域と0-400mを13.1secという俊足ぶりもさ[…]
商品ではなく「こんなこと、できたらいいな」を描く 今回は見た瞬間にハートを鷲掴みにされてしまったモトクロス系のお気に入りバイクカタログをご覧になっていただきたい。 まずはアメリカホンダ製作によるモトク[…]
ヤマハXJ400:45馬力を快適サスペンションが支える カワサキのFXで火ぶたが切られた400cc4気筒ウォーズに、2番目に参入したのはヤマハだった。FXに遅れること約1年、1980年6月に発売された[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
人気記事ランキング(全体)
全身ブラックアウト! 国内ではスタンダード的な位置づけに 「Z900RSブラックボールエディション(Black Ball Edition)」を初生撮り! カワサキがジャパンモビリティショー2025で展[…]
世界のバイクメーカーをビビらせた初のアドベンチャーモデル オールドファンならご存じのBSAはかつてイギリスで旋風を巻き起こしたバイクメーカー。ですが、1973年には一旦その幕を下ろし、2016年にイン[…]
400で初のV4でもホンダ・ファンは躊躇なく殺到! 1982年12月にリリースされたVF400Fは、このクラスでは12,500rpmの未経験な超高回転域と0-400mを13.1secという俊足ぶりもさ[…]
【ハイパーモタードV2/SP】史上最高のパワーと速さを身につけた新型ハイパーモタード 新型ハイパーモタードは、先代950からフルモデルチェンジがなされ、最新スペックのV2エンジン、そして新設計のモノコ[…]
幅広いライダーを満足させる扱いやすさと優れた旋回性 日本では2025年4月に発売となった’25年型のヤマハYZF-R25は、デザイン刷新と機能充実化を中心とした変更を受けています。 外観上の大きな特徴[…]
最新の投稿記事(全体)
BSA復活を世界の二輪市場に知らせる2台の新型車 BSAブランドが再び動き出したのは2016年。自動車や二輪車、物流や不動産など多角的に事業を展開するインド/マヒンドラ・グループが、新たに起ち上げたク[…]
24時間楽しめるメタバースならではの没入体験 世界最大級のメタバースイベントVketに、ホンダモーターサイクルジャパン(HMJ)とスズキ株式会社が、満を持して初出展を果たす。 Vketは、参加者がアバ[…]
大自然の中で大型バイクにも試乗できる バイクの聖地阿蘇・産山村の大自然の中で、バイクイベント「UBUYAMA RIDE MEET」が開催される。 このイベントは、うぶやま未来ラボが主催し、『入場無料』[…]
大型ウイングレット装備とともに戦闘力を向上! カワサキは欧州と北米で「ニンジャZX-10R」シリーズの2026年モデルを発表。サーキットパフォーマンスと公道での実用性を両立するスーパースポーツがさらな[…]
シンプル操作で立体音響を楽しめる! オートバイ用インカム「MIDLAND」の日本総代理店・株式会社LINKSが、劇的な進化を遂げたニューモデル「BT R1 X (アールワンエックス)」を、2025年1[…]
- 1
- 2


















































