
1980年代前半、ターボバイクブームの口火を切ったホンダCX500ターボ。今までにない市販車ターボを強く印象付ける外観は、あまりにも印象的だった。今回はその開発経緯を、振り返っていこう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
ホンダ初の市販ターボ【1981 ホンダCX500ターボ】
時は1980年代。本車が”省エネ目的”というお題目で当時の陸運局を”陥落”させ、日本にもターボの時代が訪れた。これを追うように各バイクメーカーも、ターボ車の開発へとまい進した時代だった。
真っ先にターボバイクを登場させたのはホンダ。1980年のドイツ ケルンショーでCX500ターボを発表し、翌1981年にホンダとしては2輪/4輪含めて初の市販ターボが市場に投入されることになる。
水冷OHV2気筒のエンジンはGL500ベースと言われているが、実際には高出力や高熱に耐えるため、ほぼ新設計と言っていいほどの改良が施された。
このエンジンにターボが装着され、498ccのエンジンから82psのパワーを引き出したのだ。
目論みは「ミドルクラスの車体にビッグマシンのパワー」。
たしかにパワーは達成できたものの、車重の重さやいわゆるターボラグなどでターボバイクというジャンルは終焉を迎えるのだが、その中にあって継続機種が作られたのは、唯一このCX500ターボのみだった。
【1981 HONDA CX500 TURBO】■空冷4ストV型2気筒OHV4バルブ 496.9cc 82ps/8000rpm 8.1kg-m/4500-7500rpm ■239kg ■タイヤF=3.50-V18 R=120/90V17 ※輸出モデル
ホンダCX500ターボ エンジン解説【縦置きVに巧みにターボオン】
エンジンを見てみよう。まずそのボア×ストロークは当時のホンダF1と同じ78×52.2mmを採用。
タービンは現IHIが開発した当時としては、量産用世界最小を誇った。
ちなみにターボが効きはじめるポイントは、約4500回転から。それまでは低圧縮のため、トルクがかなり細かった。
タービンはエキゾーストパイプの管長を短く取れるシリンダーVバンク前に配置されていた。
速度、回転のアナログメーター以外は、現在の水準と比べても遜色のないデジタル表示。中央上部にはターボランプが配置されている。
ホンダCX500ターボの系譜
【1983 HONDA CX650 TURBO】1983年には排気量を拡大し、加給セッティングの変更により、乗りやすさを大幅に向上させたCX650ターボが登場。カウルもFRPから樹脂に変更するなどして、約9kgの計量かに成功している。
ホンダCX500ターボ 兄弟モデル:同系エンジンを搭載
CX500ターボのエンジンレイアウト母体になったのは、OHVならではのコンパクトヘッドを、軽合金プッシュロッドなどの先進技術で高性能化したGL400/500。
CX500ターボのデザインエッセンスやリヤプロリンクサスやフロントのTRACなど、足まわり技術をそのまま受け継いだのが、ツアースポーツのCX-EUROだ。
【1982 HONDA WING GL400/500】主要諸元■水冷4ストV型2気筒OHV4バルブ 396cc 40ps/9500rpm 3.2kg-m/7500rpm ■218kg ■タイヤF=100/90-18 R=120/80-18 ●価格:49万8000円
【1982 HONDA CX-EURO】主要諸元■水冷4ストV型2気筒OHV4バルブ 396cc 40ps/9500rpm 3.2kg-m/7500rpm ■209kg ■タイヤF=3.25S19-4PR R=3.75S18-4PR ●価格:43万8000円
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
ヤマハRZ201概要:同社らしさ溢れる、美しき工芸品 ドイツのヴァンケル氏が発明したロータリー式エンジンは、ピストン運動で動力を得る従来のストローク式のエンジンと比べ低振動で高出力、しかもサイズも小さ[…]
スズキRE-5 概要:”スズキの本気度”が伝わる高出力モデル ドイツの発明家ヴァンケル氏が考案したロータリーエンジンは、ピストンの往復運動により動力を生み出す従来方式のエンジンに対して、ローターが回転[…]
扱いやすさ重視のターボエンジン【1982 スズキXN85】 GS650Gをベースにスズキが作り上げたターボ車、XN85。 後に油冷へと発展するオイルクーラーや、ピストンジェットクーリング/フューエルイ[…]
ブーム末期に登場した最強のターボバイク【カワサキ750ターボ】 カワサキ750ターボは、ターボバイクとしては最後発となるものの、「世界最強最速」をコンセプトに開発されたマシンだ。 当時のカワサキのフラ[…]
我が道をゆくヤマハ【1982 ヤマハXJ650ターボ】 ホンダのCX500ターボと同じく、1981年の東京モーターショーに出展されたモデルで、XJ650をベースにしたターボ車。 モーターショーにはイン[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
1999年、東京モーターショーに突如CB Fourが出現! CB Four、ホンダファンは憶えているはず。1999年の東京モーターショーに、何の前ぶれもなく展示されたショーモデル。その名も「CB Fo[…]
※同記事は、別冊オールドタイマー21号(2016年7月号)掲載の記事に加筆し、再構成したものです。 あえてベールに包まれたファルコ 以下は、元スズキ社員としてファルコラスティコ(以下ファルコと表記)の[…]
従来色の赤が廃止された 発売は、2022年1月20日のこと。2020年モデルでマイナーチェンジを受けたこともあり、スペックはそのまま。前モデルのアップデート内容を振り返っておこう。プラス3psの最高出[…]
“Ninja”の伝説はここから始まった 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 1986年[…]
2021年カラーがSP版で蘇った?! ホンダのキングオブネイキッド「CB1300スーパーフォアSP」および「CB1300スーパーボルドールSP」の2024年モデルには、赤いフレームのニューカラーが導入[…]
人気記事ランキング(全体)
シェルパの名を復活させたブランニューモデル カワサキが、KLX230シリーズをモデルチェンジするとともに、KLX230Sとしては3年ぶり(その他の無印やSMは2~5年ぶり)に復活させたのは、2024年[…]
新5色ラインナップとなった2022年モデル 2022年モデルが発売されたのは、2022年6月23日のこと。2021年のフルモデルチェンジの際には、新設計の水冷エンジンが4バルブの「eSP+(イーエスピ[…]
まず車間が変わることを理解しておこう! ツーリングでキャリアのある、上手なライダーの後ろをついてゆくのが上達への近道。ビギナーはひとりだと、カーブでどのくらい減速をすれば良いかなど判断ができない。そう[…]
ナンバー登録して公道を走れる2スト! 日本では20年以上前に絶滅してしまった公道用2ストローク車。それが令和の今でも新車で買える…と聞けば、ゾワゾワするマニアの方も多いのではないか。その名は「ランゲン[…]
15番手からスタートして8位でフィニッシュした小椋藍 モナコでロリス(カピロッシ)と食事をしていたら、小椋藍くんの話題になりました。「彼は本当にすごいライダーだね!」と、ロリスは大絶賛。「ダイジロウ・[…]
最新の投稿記事(全体)
モンキーFSシリーズの最新作として誕生! ホンダ「CB1000F コンセプト」で往年のフレディ・スペンサーが駆ったレーシングマシンのカラーリングが話題になったばかりだが、憧れの“スペンサーカラー”をま[…]
孤高のパニガーレV4Sと友好的なパニガーレV2S パニガーレV4Sでサーキットを3本ほど走ると、強烈な疲労感が僕の身体を襲う。汗は止まらず、足腰に力が入らなくなる。試乗直後は格闘技を終えたような感じだ[…]
1999年、東京モーターショーに突如CB Fourが出現! CB Four、ホンダファンは憶えているはず。1999年の東京モーターショーに、何の前ぶれもなく展示されたショーモデル。その名も「CB Fo[…]
※同記事は、別冊オールドタイマー21号(2016年7月号)掲載の記事に加筆し、再構成したものです。 あえてベールに包まれたファルコ 以下は、元スズキ社員としてファルコラスティコ(以下ファルコと表記)の[…]
メンテナンスが必要になった時に必要な部品が手に入る 全日本ロードレース選手権のJ-GP3クラスでEXACTホイールやダイレクトドライブレーシングディスクのユーザーが増加し、MotoGP Moto2クラ[…]
- 1
- 2