
第二世代の空冷Zとして1981年にデビューしたZ1000Jは、Z1系の問題点を解消し、ライバル勢へのアドバンテージを広げるべく、ほぼすべてのパーツを新設計したモデルだ。その軌跡を振り返ろう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
チャンピオンを生んだ野心作= “J”【カワサキZ1000J】
ロングセールスを誇った名車、Z1。それだけに信頼性もあった心臓部とフレームだが、さすがに1980年代になると抜本的な改良が求められた。
カワサキでは世界耐久選手権に向けてワークス活動をスタートさせたが、クランクなどに限界があり、すべてを一新することになったのだ。
そのため、完成の域にあったZ1系エンジンを基本に、各部を近代化。レース規定に合わせて排気量を1010cc→998ccとし、クランク重量を16.7kgから14.2kgへ軽量化したほか、カムやピストンの変更、φ34mmBSキャブの採用でマークIIと比較して9psのパワーアップに成功する。キックを廃して軽量化も図った。
車体はFフォークを径36→38mmに肉薄大径化、パイプの見直しなどを行い、マークIIから15kgも車重が軽くなった。
こうして高出力と軽量を得たZ1000Jは、レースでも強さを発揮。1981年/1982年には世界耐久選手権とAMAスーパーバイクでシリーズチャンピオンを獲得。
また、1982年からアメリカで警察用バイクとして採用され、20年以上に渡って生産が続いたことも、Z1000Jの素性を語るうえで欠かせない要素だろう。
【1981 KAWASAKI Z1000[J]】■空冷4スト並列4気筒 DOHC2バルブ 998cc 102ps/8500rpm 9.3kg-m/7000rpm 230kg(乾) ■タイヤF=3.25-19 R=4.25-18 ※輸出モデル
世界でたった30台だけ製作された市販レーサー【カワサキZ1000-S1】
1980年からUSカワサキに日本スタッフが渡米、ロブ・マジー&チーム・カワサキがE・ローソンとともに活躍する。
AMAスーパーバイク、世界耐久選手権、鈴鹿8耐用など並行して開発が進められた。
当時の広告に載ったスーパーバイク向けの市販レーサー、KZ1000-S1(1982年)は生産台数がわずか30台と言われる。
ホモロゲ最低販売台数をクリアする30台のみ生産。
当時の広告。S1のエンジンに投入した技術は、Z1100RやGPZ1100にフィードバックされた。
カワサキZ1000Jの系譜
【1981 KAWASAKI KZ1000[J1]】北米向けは車名にKが付く。燃料タンクはティアドロップで、容量は欧州向けの角型燃料タンクと同じ21.4L。前寄りのステップ、長いフロントフォークは北米専用。
【1982 KAWASAKI Z1000[J2]】J2は色変更が主だが、車体番号は007901から始まる。J1の車体色=赤/銀/青の3色から、J2は色調の異なる青/黒/銀/エボニーの4色となった。
【1983 KAWASAKI Z1000[J3]】メーターを分割式から、ワンピース構造のGPタイプに変更。フレーム番号は017501からで、カナダと欧州向けのみ生産する。丸型タンクは消滅。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事([連載]青春名車オールスターズ)
2ストエンジンの新時代を切り開いた名車 1980年代中頃、スズキのガンマ、ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。 この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着し[…]
「その時、スペンサーになれた気がした」 MVX250Fの上位モデルとして400版の発売が検討されていたが、250の販売不振を受け計画はストップ。この心臓部を受け継ぎ、NS250Rの技術を融合したモデル[…]
“2スト最強”と呼ばれた栄光のレプリカ ヤマハのRZV500Rと並び立つ不世出の500レプリカが、このRG500ガンマである。 1976〜1982年までスズキはWGP500でメーカータイトルを7年連続[…]
ケニー・ロバーツが駆るYZR500のフルレプリカ 400レプリカが隆盛を極める1984年、ヤマハから究極のレーサーレプリカが送り込まれた。当時最高峰のWGP500王者に輝いたYZR500のフルレプリカ[…]
「ガンマ」が火をつけたレプリカ戦線にカワサキも参入 スズキRG250Γ(ガンマ)の登場で活気づいたレプリカ戦線に、勇んでカワサキも参入する。 1984年に投入されたKR250は、異彩を放つタンデムツイ[…]
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる…… ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200[…]
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
キーロック付きタンクキャップ:スズキGT380(1972) バイクの燃料キャップは、そもそもは転倒時の漏れ防止の安全対策からキーロック式が採用されるようになったが、その最初は1972年のスズキGT38[…]
長距離ツーリングがさらに楽しくなる進化 発売は、2021年2月25日。2021年モデルでは、大型二輪AT限定免許でも乗れるDCTのみのラインナップとなった。シリーズ共通で55Wスピーカーを採用。イコラ[…]
2ストエンジンの新時代を切り開いた名車 1980年代中頃、スズキのガンマ、ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。 この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着し[…]
人気記事ランキング(全体)
実は大型二輪の408cc! 初代はコンチハンのみで37馬力 ご存じ初代モデルは全車408ccのために発売翌年に導入された中型免許では乗車不可。そのため’90年代前半頃まで中古市場で398cc版の方が人[…]
エアインパクトレンチ:手のひらに収まるサイズで500Nmを発揮。狭い場所で活躍する力自慢 ガレージにエアコンプレッサーを導入したら、まず揃えておきたいのがエアブローガンとエアゲージ、そしてインパクトレ[…]
カワサキの新世代モビリティが大阪万博で公開 2025年日本国際博覧会、通称「大阪万博」のカワサキブースで、未来のオフロードビークル「CORLEO(コルレオ)」が注目を集めている。バイクのように乗車する[…]
2ストエンジンの新時代を切り開いた名車 1980年代中頃、スズキのガンマ、ホンダのNSと、高性能レプリカが矢継ぎ早に出揃い、大ヒットを記録していた。 この潮流をみたヤマハはRZ250Rにカウルを装着し[…]
筑波サーキットにH-D Xたちが集合 H-D Xでのサーキット走行をおすすめしたい。X350はあきらかにXR750をモチーフとしたデザイン。「スポーツライディングを楽しんでほしい」というメーカーからの[…]
最新の投稿記事(全体)
新型スーパースポーツ「YZF-R9」の国内導入を2025年春以降に発表 欧州および北米ではすでに正式発表されている新型スーパースポーツモデル「YZF-R9」。日本国内にも2025年春以降に導入されると[…]
北米にもあるイエローグラフィック! スズキ イエローマジックといえば、モトクロスやスーパークロスで長年にわたって活躍してきた競技用マシン「RMシリーズ」を思い浮かべる方も少なくないだろう。少なくとも一[…]
アルミだらけで個性が薄くなったスーパースポーツに、スチールパイプの逞しい懐かしさを耐久レーサーに重ねる…… ン? GSX-Rに1200? それにSSって?……濃いスズキファンなら知っているGS1200[…]
他の積載方法とは異なる、シートバッグの利便性 2輪でツーリングをする際の荷物の積載方法は、①ストレッチコード/ネット、②タンデムシート上部に装着するシートバッグ、③後輪左右に設置するサイドバッグ、④車[…]
昨年の最終戦から連勝を続けた水野涼 2025年の全日本ロードレース選手権がようやく4月19日・20日に栃木県・モビリティリゾートもてぎで開幕しました。4月9日・10日には、PRE-TEST “Roun[…]
- 1
- 2