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2023年11月に各メディアでガソリン税の「トリガー条項」に関する報道があり、現在の石破総理の「ガソリンが高いことに問題意識がある」との発言から、50年近く前の「当分の間税率」なんていうふざけた名前のガソリン税に対し、さらに消費税を乗せるという意味のわからない状況にくさびを打つかに思われた。しかし、衆議院予算委員会で2025年度を審議を行うなか、暫定税率廃止についての議論はあいまいなまま──。どうなってるの?
●文: Nom(埜邑博道)
ガソリン価格が過去最高値に迫るのに補助金は……
ガソリン代の高騰が止まりません。
全国平均ガソリン価格が1Lあたり170円以上になった場合に、1Lあたり5円を上限にして燃料元売り業者に補助金が支給されていましたが、段階的にその補助金が縮小。1月16日にはさらに補助金が5円程度縮小され、資源エネルギー庁が公表した2月17日のレギュラーガソリンの平均価格は184.4円。しかし、関東在住のライダーが利用する頻度の高い、近郊の高速道路SAのレギュラーガソリン代は200円/Lというところも少なくありません。
筆者もよく利用する東名高速道の海老名SAのスタンドでは、レギュラーが201円/L、ハイオクは212円/Lで(2月20日現在)、ついにここまで上がったかと非常に驚きました。
自己防衛のために、割高な高速道路のSAでは給油しないというのが基本かもしれませんが、週末のツーリングの際にそれまで忙しくて給油できず、仕方なく割高なSAのスタンドを利用することもあるはずです。
高速道路の各SAでのガソリン価格。
そんなとき、現状と同様のガソリン代だった場合、タンク容量21Lのホンダ・CB1300シリーズなら4221円、ハイオク指定のカワサキ・Z900RS(タンク容量17L)だと3604円、30Lの巨大タンクを採用するBMW・R1300GSアドベンチャー(ハイオク指定)だと6360円! という高額になってしまいます。
まさに前代未聞のガソリン高に見舞われていますが、昨年末、政府がとりまとめた2025年度の税制改正大綱に「いわゆるガソリンの暫定税率は、これを廃止する」という文言が明記されたことは多くの方がご存じでしょうし、これで本来の税率に上乗せされている25.1円がなくなり、ガソリン価格も安くなると喜んだ方も多いと思います。
ところが安くなるどころか、前述のように数度にわたる補助金の減少で、下がるどころか高騰の一途をたどっています。
巨大な燃料タンクを搭載するがゆえに満タン6000円超えという憂き目に……。
暫定税率廃止の時期はいまだに明言されていない
現在、衆議院予算委員会で2025年度予算の審議が行われていますが、「年収の壁」、「教育費の無償化」、「高額医療制度」についての議論が活発に行われているのに対し、暫定税率廃止については議論らしき議論すらほとんど行われていない様相です。
2月4日に石破総理が1Lあたり200円を超えたことについて、「政府としてもガソリンが高いことについて、非常に問題意識を持っている。適切に対応するように対策を講じている」と説明をしましたが、2月18日の予算委員会では立憲民主党の森山浩行議員の暫定税率をいつ廃止するのかという質問に、加藤勝信財務相は「具体的な実施方法等については、関係者間で誠実に協議を進める」と述べるにとどまり、実施期限は示されませんでした。
廃止することを決めたはいいが、その方法、時期については何ら明確な方向が示されないまま、ズルズルと引き延ばされている感が否めません。
先の総選挙で少数与党となった自民/公明と、自分たちが主張する政策を実現して存在感をアップしようとする野党の綱引き(足の引っ張り合い?)が続き、その間にもガソリン価格は高騰したまま。
公共交通網が十分に整備されておらず、通勤や通学にマイカーを使用する地方の方々の生活に、このガソリン価格の高騰は大きな影響を及ぼしています。
このガソリン価格の高騰を受けて、サブスク形式でEV車と充電環境を通勤用に提供するHakobuneのサービスが注目されているそうです。
従業員のほぼ全員がクルマ通勤をしている工場があるユニカフェ(神奈川県)では、Hakobuneのサービスを利用。自宅に充電設備がなくても、就業中に会社で充電することで快適で、ガソリン代よりも安い費用での通勤を実現しているそうです。
こうやって国民は、さまざまな知恵を使って生活防衛をしているのに対し、夏の参議院選挙を控え自分たちの存在感/党勢の拡大のために政策を利用しているとしか見えないような与野党の攻防にはしらけてしまうばかりです。
当初から、2025年度の暫定税率廃止は無理という声が聞こえていましたが、このまま与野党の駆け引きが続くようならそれが現実になりそうな雰囲気です。
ガソリンを使用するバイク/クルマのユーザーだけが負担させられている25.1円の暫定税率。
道路整備のために使用される「道路特定財源」から、用途を道路以外に拡大した「一般財源」となったのが2009年。そして、暫定税率の批判を受けて、ガソリンの全国平均小売価格が160円/1Lを3カ月連続で超えた場合に暫定税率分を一時停止する「トリガー条項」も2011年に発生した東日本耐震災がきっかけで凍結されたままになっていました。
受益者負担の観点から、徴収された税金が道路整備に使われるならともかく、他の用途に使用されるなんて一種の詐欺のようなものです。
加えて、バイク/クルマを所有していると自動車税も納付しなければいけなく、バイク/クルマのユーザーはまさしく税金の重みに押し潰されそうです。
3月いっぱいの2024年度内成立を目指して、激しい議論が交わされるであろう衆議院予算委員会。その議論の過程や結論で、どの党が真剣に国民の生活に向き合っているかが見えてくるはずです。
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