
ホンダを除く日本の3メーカーにとって、1960年代までの主軸は2ストローク車だった。そんな中、国産の量産車として初めて水冷エンジンを導入、2ストの未来を開いたのがスズキの”水牛”、GT750だ。それでは開発秘話やモデル変遷を紹介していこう。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
スズキGT750 概要:対CBフォア、愛称”ウォーターバッファロー”
1969年に発売されたカワサキ マッハIIIに対抗するかのように、並列3気筒を選び、なおかつ750ccの大排気量と水冷を採用したのがスズキのGT750である。
しかし、パフォーマンス能力を重視したマッハIIIとは打って変わり、GT750のキャラクターは”ジェントル”そのもの。
開発目標は「最高出力67ps、最高速度180km/hで、低速から高速までフラットなトルクを生み出す」ことだった。つまり最高速度よりも、ツーリングバイクとしての余裕に重きを置いたということだ。
水冷の採用もパワー向上のためというより、ウォータージャケットでピストンまわりを覆うことでメカニカルノイズの低減を実現するためのもの。また、空冷だと中央シリンダーの熱が問題になると予想されたため、冷却の確実性を求めたという側面もある。
水冷は国産の量産車として初の試み。当時は空冷全盛で、水冷の採用には慎重だった時代だ。その中であえて水冷に挑戦したのは、スズキならではの、技術への探究心の表れだ。
初と言っても安全性への配慮に怠りはない。例えば転倒時にウォーターポンプが破損して、ライダーが熱湯を浴びることがないように、ポンプをクランクケース中央部に配置してホース類を短くし、車体中央近くに配置させるといった具合だ。
ちなみに、グランツーリスモとして名を馳せた”紳士”だったが、レースでは一転して猛々しさを剥き出しに。
1972年デイトナでは暴れ回って底力を見せ、マニアたちに軽快な重量車=スーパーバイクとしての印象を植えつけることに成功している。
【1971 SUZUKI GT750】■水冷2スト並列3気筒 ピストンバルブ 738cc 67ps/6500rpm 7.7kg-m/5500rpm ■235kg(乾) ■タイヤF=3.25-19 R=4.00-18 ●価格:38万5000円
【上質だった水冷2スト3気筒】重量増を嫌って、他社が消極的だった水冷エンジンを採用。多気筒/大排気量/高出力の先駆けだ。性能よりも上質さを追求してのことだったが、北米では力強い印象の「ウォーターバッファロー(水牛)」という愛称がつけられた。
もっとも目立つメーターの中央上部に水温計を配し、水冷エンジンであることをアピール。キロメーター表示の速度計で80km/hから目盛りが赤いのは国内仕様だけだ。
GTはグランドツーリングの意。性能一辺倒ではない上質な性格を表した車名だ。
スズキGT750の系譜
【1973 SUZUKI GT750 [K]】初期型のツーリーディング式ドラムブレーキから油圧式のダブルディスクブレーキに変更。
【1977 SUZUKI GT750 [B]】最終型はB。それまでにCVキャブレターの採用やマフラーエンドコーン廃止など小変更が行われた。
スズキGT750 兄弟モデル
【1972 SUZUKI GT380】兄貴分の750/550と同様の2スト3気筒エンジンを搭載するが、その性格はツアラー的なもので車格もやや大柄。シリンダーヘッドには走行風を積極的に取り入れて冷却するラムエアシステムを備え、3気筒ながら採用された4本出しマフラーも堂々とした印象を与えた。1975年10月に中型限定免許(当時)が施行されると、再び人気が上昇。4スト4気筒の軽快なGR400と並んで、1970年代のスズキを代表する珠玉の中型マシンだ。
【1972 SUZUKI GT550】GTシリーズ最後発のミドルクラスで、初期型からディスクブレーキを採用。GT380と同様の空冷3気筒を搭載。
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