
現代では市販車にも当たり前の様に採用されている集合マフラーだが、その二輪用を世界で初めて作ったのはあのヨシムラである。いまから約50年前、Z2乗りだった筆者も噂の集合管を求め、ヨシムラパーツショップ加藤に走った1人であった。
●文:ヤングマシン編集部(牧田哲朗) ●写真:YM Archives
“ヨシムラ”がまだ世間で知られていない1970年代初頭のお話
世界初となる二輪用の集合マフラーが登場したのは、1971年のアメリカAMAオンタリオでのレース。当時のバイク用マフラーは1気筒につき1本出し(CB750フォアやZ1/Z2の4気筒車なら4本出し)だったんだけど、ヨシムラが持ち込んだのは軽量化を狙って自動車の様にエキパイを集合させたマフラーだった。かのポップ吉村(親父さん)のひらめきによるものだったんだけど、結果的に軽量化だけでなくパワーも向上。ちなみにこれは、後に排気脈動などといった理論が出てくる前のお話しだ。
“ヨシムラ”といえば、今やバイク乗りなら誰でも知っているけれど、私が18歳ぐらいだった1970年代初頭では、まだレースをやっている人ぐらいにしか知られていなかった。初めての出会いは、私のバイクの師匠がヨシムラを付けたZ2で目の前を通り過ぎたこと。とにかく今まで見たことのないその集合管には衝撃を覚えた。ほかとは明確に違う造形や音はもちろんのことながら、ヤングマシンの富士スピードウエイテストに参加した師匠から、「最高速が伸びただけじゃなく燃費も伸びた」という結果を聞いて、私の頭に初めて“ヨシムラ”という名前が刷り込まれた。
ヨシムラの集合管を装着したZ2(ヤングマシン本誌1974年11月号より)。
確か機械曲げで3万9000円ぐらいだった
当時のヨシムラは親父さんがアメリカに進出していて、国内では次女・由美子さんの旦那さんでもある加藤昇平さん(現ヨシムラジャパン加藤陽平社長の父)が「ヨシムラパーツショップ加藤」を設立していた。私は知り合いのバイク屋から軽トラを借りて、さっそくオープンしたてのショップへ向かった。手書きの小さなルート看板があり、着いたところは厚木郊外の普通の民家。昇平さんが対応してくれて、ヨドコウのような小屋から集合マフラーを持ってきてくれた。当時のレーサーというとギラギラしてて貪欲で、レース資金を得るためにがむしゃらに働くって人が一般的だったけど、昇平さんはスマートで温厚で、おっとりした坊っちゃんというイメージだったね。
手にした集合管は機械曲げのスチール製で、ささやかなサイレンサーが内蔵されていた。確か機械曲げが3万9000円ぐらいで、手曲げが+2万円ぐらい高かったと記憶している。当時のパイプベンダーは貧相なものだったから曲げもスムーズじゃなかったし、一番アールがきついエキパイ部分はシワも寄っているような仕上がりだった。試してみると、とにかく軽くて抜けもよく、まだ世間ではほとんど出回っていない集合マフラーは、勇ましいサウンドとスリムなスタイルで注目を浴びたものだった。
ただ、元々は性能第一のレース用なのでメンテナンス性などは考慮されておらず、オイル交換の度に取り外す必要もあったし、エキパイの曲げのきつい部分は温度も上がりサビが凄かった。スチールブラシでサビを落として耐熱塗料で再塗装というのが、オイル交換毎にやる定期作業になったね。
ヨシムラが特許を取っていたら歴史は違っただろうね
後にレースでもサイレンサーの着用が必須になり、昔のような直管型から現在では見慣れたサイレンサー付属型になるんだけど、1980年代のバイクブーム期ではヨシムラ以外にも集合マフラーメーカーも乱立した。集合管のパイオニアのヨシムラも集合方式を変更したサイクロンを投入したり、エキパイ部の排気圧カの高い部分で他のエキパイを排気干渉させ、プリチャンバーを設けるデュプレクスサイクロンを登場させるなど、常に最先端の技術で集合スタイルを進化させてきた。もし、ヨシムラが最初に集合管の特許を取っていたら……バイクのスタイルもマフラー市場も今とはまったく違うものになっていたかもね。現在でも国内マフラーメーカーのトップをひた走るヨシムラが、バイク業界に残した功績は大きい。
10代の牧田少年を虜にしたヨシムラ集合管装備のZ2がこちら。形は現代のヨシムラストレート管が継承するスタイルながら、当時モノはまさに直管的シンプルさ。サイレンサーにはネームプレートもなく素材も加工も素朴ながら、なにやら物々しい独特の雰囲気がある(ヤングマシン本誌1974年11月号より)。
Z2用のヨシムラ集合管のテストは、まだ30°バンクが使用されていた’74年の富士スピードウェイで行われ、同時比較のノーマル車より+20km/hと-11kgを記録した(ヤングマシン本誌1974年11月号より)。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(名車/旧車/絶版車)
様々な可能性が試された個性の時代 現代から過去を振り返って見ると、今に連なるメインストリームのマシン達が当然のように歴史を作ってきたように錯覚してしまう。しかし時代の王道を行くマシンの影には、無数の異[…]
浪漫の塊だったレプリカ 年末、あるいは正月にフランスのパリをスタートし、アフリカ大陸を走破してセネガルのダカールを目指す「パリ・ダカールラリー」(2009年からはコースを南米に移して開催)。1978年[…]
再現という行為の本質 第18回モンキーミーティングの会場には数多のモンキー系カスタムが集まり、綺羅星のごとく会場を埋め尽くしたカスタムモンキーの中に一際目を惹く1台があった。 それは伝説的名車であるホ[…]
特殊シリコーン被膜で穴を埋めてサビを防ぐメッキングの可能性を追求 平滑で均一に見えるクロームメッキ被膜には無数の穴があり、そこから浸入した水分によりサビが生じるメカニズムに注目し、特殊シリコーン被膜で[…]
400cc4気筒ブームの立役者、第3世代の直4を実現したカワサキの戦略 Z1/Z2系からZ650のザッパー系に続くカワサキ直4の第3弾がZ400FX。1980年代初頭に日本で巻き起こった空前のバイクブ[…]
最新の関連記事(ヨシムラ)
電子制御で生まれ変わった400cc単気筒の傑作DR-Z4S/4SM かつて4ストロークモトクロッサーの潮流の中で誕生し、多くのファンを魅了したDR-Z400SとDR-Z400SM。厳しい排出ガス規制に[…]
ネオクラシックKATANA唯一の不満点 令和2年排出ガス規制への適合や、電子制御システムS.I.R.S.の搭載により、現行KATANA(8BL-EK1AA)の完成度は極めて高い。150psを発揮する水[…]
高剛性と軽量化を両立したステンレスブラケット 今回ヨシムラがリリースしたキットで特筆すべきはメインブラケットの素材と構造だ。ここには高強度かつ耐腐食性に優れたステンレス材が採用されている。フェンダーレ[…]
デイトナ辻本車の雄姿が現代に完全復活! 2024年の第51回東京モーターサイクルショーでヨシムラが発表した「復刻パーツ企画」がついに本格始動! このプロジェクトは「純正互換パーツ」「ヨシムラパーツ」「[…]
歴史遺産・油冷GSX-Rを完調状態で後世に バイクブーム全盛期だった1980年代から、はや40年以上。とっくに純正パーツの供給も途絶え、そのまま埋もれ去っていく当時の車両は数知れず。その一方で「愛車と[…]
人気記事ランキング(全体)
【魅力1】30年ぶりの4気筒フルカウルに最新「Eクラッチ」を融合 「4気筒の高周波サウンドを響かせながら、風を切って走りたい」。そんなフルカウルファンの渇望を満たすCBR400R FOUR E-Clu[…]
開店休業状態のランボとBMWがタッグを組むのだが… M1をざっくり説明すると、1976年にBMWがグループ4/5に参戦可能なマシンの開発に乗り出し、当時の趨勢(すうせい)だったミッドシップを画策。とは[…]
未踏の地へ。30Lタンクを備えた「V4 ラリー」の絶対的安心感 長距離ツーリングの最中、「ガソリンスタンドが見つからない」「足つきに不安がある」とストレスを感じた経験はないだろうか。 V4 ラリーは、[…]
SEに新色シルバーが登場。スペックと価格は据え置き 「毎年モデルチェンジをされると、いつ買えばいいのか迷ってしまう」。そんなライダーにとって、2027年モデルは非常に安心できる内容となっている。 結論[…]
気温45℃再現ブースで驚異の-30℃冷却能力を体感してみた ウインドコア ICE&HEATERペルチェベスト こちらはICE&HEATERペルチェベスト。身体を直接冷やす、-30℃の冷[…]
最新の投稿記事(全体)
様々な可能性が試された個性の時代 現代から過去を振り返って見ると、今に連なるメインストリームのマシン達が当然のように歴史を作ってきたように錯覚してしまう。しかし時代の王道を行くマシンの影には、無数の異[…]
人生を変える大きな第一歩になるかも!? 初めてのハーレー体験ができる公式イベント 「次のハーレーはどれにしようか」と、悩んでいる既存ユーザーたちはもちろん、まだハーレーに乗っていない人も大歓迎なのが、[…]
ショートパンツ×素足にGSブーツ?!みんなが気になるF450GSカラーラインナップ! 皆様こんにちは~指出瑞貴です! 絶賛梅雨シーズンの中ではありましたが、6/26に開催された「BMW NIGHT […]
レースを戦うために研ぎ澄まされた、妥協なきスペック 「最新の電子制御と、エンジンを限界まで回し切る快感を両立した生粋のサーキット用レーシングマシンが欲しい」。そんなハードコアなスポーツ走行愛好家にとっ[…]
2027年モデルSEに精悍なブラックが登場。価格とスペックは据え置き 「毎年仕様が変わると買い時がわからない」「また値上げしてしまうのでは」。そんな不安を抱えて購入を迷っていたライダーにとって、今回の[…]
- 1
- 2







































