ドゥカティは、『ドゥカティ・ワールド・プレミア2025』の第2弾として、9月19日(現地時間)に『Multistrada V4(ムルティストラーダ V4)』とその上位モデル『Multistrada V4S』、さらに派生モデルとなる『Multistrada V4 Pikes Peak(ムルティストラーダV4パイクスピーク)』の2025年モデルを発表した。
●文:ヤングマシン編集部(山下剛) ●写真/外部リンク:ドゥカティジャパン
熟成度が深まったアドベンチャーツアラー
ムルティストラーダはドゥカティのアドベンチャーツアラーで、2021年のフルモデルチェンジで1158cc水冷V型4気筒エンジン『V4グランツーリスモ』を搭載した。2025年式ムルティストラーダV4は、広範囲にわたるアップデートによってあらゆる道を走破する性能と安全性、快適性を熟成させた。おもなアップデート内容は──
- V4エンジン改良による燃費向上
- フェアリング改良による空力性能向上
- 前方衝突警告機能追加による安全性向上
- ヘッドライト機能の進化による安全性向上
- 各種電子制御デバイスの性能向上
- 自動車高低下機能による安全性向上(Sのみ)
V4グランツーリスモエンジンは、逆回転クランクシャフト、ボア×ストローク、最高出力、最大トルク、またそれぞれの発生回転数などの仕様に変更はないが、軽量化によって従来型のムルティストラーダV2(2気筒)よりも1.2kg軽くなった。
アイドリング時にリアバンク(車体後方のシリンダー)を停止する機能は強化され、エクステンデッドディアクティベーション(強化版シリンダー休止機能)へ進化した。アイドリング時だけでなく、低速走行中もリアバンクを休止させるもので、従来型と比較してCO2排出量と燃料消費量を最大6%低減。環境に与える影響を減らすとともに、航続距離も伸ばしている。これによって新しい排ガス規制ユーロ5+に対応している。
エンジンのメンテナンスサイクルは延長され、オイル交換は1万5000km毎、バルブクリアランス点検は6万km毎になった。
フェアリングデザインは従来型を踏襲しつつ、よりシャープとなり、916を源流とするドゥカティスーパーバイクに通じるクロスオーバースタイルとなった。さらにフェアリングの下に設けたデフレクターによってライダーの膝あたりへの走行風を増量すると同時に、エンジンの放熱を効率的に排出する。これは横方向に2個のラテラルコンベアによって相乗効果を生み、空力性能を高めることでとくに高速巡航時のライダーとパッセンジャーの疲労を軽減する。
電子制御デバイスは、『ドゥカティビークルオブザーバー(DVO)』を新たに導入することで、各種デバイスの精密さをさらに向上。DVOは慣性プラットフォームのデータを統合する機能で、車体各部にある70個のセンサーの入力をシミュレートし、車体に作用する路面からの入力と、さまざまな走行条件で車体が耐えうる荷重を予測する。
これによってコーナリングABS、ドゥカティトラクションコントロール(DTC)、ドゥカティウィリーコントロール(DWC)の作動をより正確に、緻密にすることに成功した。
ブレーキ関連では、フロントとリアのブレーキ配分を制御して車体を安定させる『エレクトニックコンバインドブレーキシステム(eCBS)』を新採用した。フロントブレーキをかけるとリアブレーキも作動し、制動時の車体安定性と安全性を高める機能だ。逆にリアブレーキをかけたときもフロントブレーキが作動し、コーナリング時の安定性を向上。緊張を感じることなくコーナリングに集中できるうえ、よりタイトな走行ラインをトレースできる。また、ブレーキシステムではリアディスクが従来型の265mmから280mmへ大径化された。
レーダー機能も強化され、従来型が搭載していたアダプティブクルーズコントロール、ブラインドスポット検知機能に加えて『前方衝突警告機能』がプラスされた。これは前走車との車間距離が短くなって衝突の危険が高まった際に、メーターにインジケーターを表示することでライダーへ警告を発する機能だ。
ライディングモードは、従来のスポーツ、ツーリング、アーバン、エンデューロに加えて、『ウェット』が追加された。文字どおり濡れた路面で効果的なモードで、スロットルレスポンスは穏やかになり、最高出力は115psに制限され、ABSやトラクションコントロールその他のデバイスも連動する。また、従来から引き継ぐそれぞれのモードも、より安全かつ快適な走行フィールへと改良されている。
夜間走行のコーナリング時にヘッドライトの照射範囲を最適化するドゥカティコーナリングライトに加え、フロントホイールの影の領域を減らす『ヘッドライトクラスター』を新たに装備した。これにより、夜間走行時の視認性も向上させ、さらに『カミングホーム』は、イグニッションをオフにした後もロービームヘッドライトを数秒間点灯する。
V4Sに搭載される電子制御サスペンション『ドゥカティスカイフック(DSS)EVO』も進化した。フロントフォークに備えたセンサーが路面の凹凸などを検知したデータを基に車体の挙動を予測し、リヤサスペンションの減衰力を自動調整する。これにより荒れた路面やバンプなどをスムーズに通過できるようになった。また、車体姿勢を一定にするセルフレベリング機能を持つほか、どのライディングモードを選んでいても走行中に任意のサスペンション設定に変更することも可能となっている。
DSS EVOには『自動車高低下』機能も新たに採用している。走行中に車速が10km/h以下になると最大で30mm車高を下げるものだ。下がった車高は50km/hを超えると解除され、通常の車高に戻る。これにより停車時、低速時の足つき性が向上し、転倒の危険を軽減する。
車体関連も熟成
車体関連では、フレームやスイングアームに変更はないが、スイングアームピボットを従来より1mm上げたことで、アンチスクワット効果を向上。タンデムや積載時の走行安定性を高めている。また、パニアケースとトップケースの装着位置を従来型よりも後方へ移設したことで、同乗者の快適性を向上させた。
なお、サスペンションはV4、V4Sともにマルゾッキ製が装着される。V4は50mm倒立フォークとリザーバータンク付きモノショックで、前後ともフルアジャスタブル。リヤサスペンションのプリロード調整幅は12~20mmと従来型よりも広くなった。V4Sは前後とも電子制御式となるが、フロントフォークのプリロードのみ手動調整となる。
『ムルティストラーダV4パイクスピーク』は、フロントホイールを17インチとしてリアホイールをワイド化(6.0×17)していること、片持ち式スイングアームを装備すること、前後サスペンションはマルゾッキ製を採用するV4/V4Sとは異なり、オーリンズ製スマートEC 2.0サスペンションを装着することが特徴だ。これらにより、パイクスピーク仕様はオンロードでの走行性能を重視したモデルとなっている。
2025年式となる新型では、スタンダードV4と同様の改良に加えて、MotoGPやWSBK、モトクロスからインスパイアされたドゥカティコルセ専用カラーが新たに採用された。また、前後ホイールは新デザインとなるマルケジーニ製Y字5本スポークとし、ピレリ製ディアブロロッソ4スポーツロードタイヤを装着する。
EU諸国では2024年10月から販売が開始されたが、日本国内への導入時期は未定だ。
カラーバリエーション
車体色は、スタンダードのV4がドゥカティレッド(赤)のみで、V4Sにはそのほかにスリリングブラック(黒)とアークティックホワイト(白)の3色展開となる。また、V4Sではワイヤースポークホイールかアルミ鍛造ホイール(標準のアルミ鋳造よりも2kg軽量)を選択することが可能だ。
ドゥカティ ムルティストラーダ V4
ドゥカティ ムルティストラーダ V4S
ドゥカティ ムルティストラーダ V4パイクスピーク
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
最新の関連記事(ドゥカティ)
ミドルSSの究極を目指しフルチェンジ パニガーレはドゥカティが誇るスーパーバイクで、2018年からはV型4気筒エンジンを搭載し、その戦闘力を高めるとともに車名がパニガーレV4となった。そして2020年[…]
スクランブラー誕生10周年。スタンダードモデルと特別仕様車を発表 ドゥカティ スクランブラーは、2014年に登場したネオクラシックシリーズで、1960~1970年代に人気を博したモデルをモチーフとした[…]
ライダーを様々な驚きで包み込む、パニガーレV4S 5速、270km/hからフルブレーキングしながら2速までシフトダウン。驚くほどの減速率でNEWパニガーレV4Sは、クリッピングポイントへと向かっていく[…]
全日本ロードレース最高峰クラスで外国車が優勝したのも初 全日本ロードレース選手権シリーズ後半戦のスタートとなる第5戦もてぎ2&4レースで、ついにDUCATI Team KAGAYAMAの水野涼[…]
駒井俊之(こまい・としゆき)/1963年生まれ。バイクレース専門サイト「Racing Heroes」の運営者。撮影から原稿製作まで1人で行う。“バイクレースはヒューマンスポーツ”を信条に、レースの人間[…]
最新の関連記事(新型アドベンチャー/クロスオーバー/オフロード)
2023年モデルで復活した「トランザルプ」の名跡 ホンダは欧州で「XL750トランザルプ」の2025年モデルを発表。アフリカツインにインスパイアされたという2眼LEDヘッドライトを採用し、バイオエンジ[…]
グラフィック変更のLと、青いシートでイメージチェンジしたラリー ホンダは欧州で、水冷単気筒エンジン搭載のトレールモデル「CRF300L」とアドベンチャーモデル「CRF300ラリー」の2025年モデルを[…]
1位:PG-1/ハンターカブ/クロスカブ比較インプレ ヤマハの125ccクラスレジャーバイク「PG-1」のタイおよびベトナムでの発売に合わせ、CT125ハンターカブ、クロスカブ110との比較試乗をレポ[…]
トラベル・エンデューロの最高峰に自動クラッチ制御が装備! BMWモトラッドのロングセラーモデルであるGSシリーズ。その最上位モデルにあたるのがGSアドベンチャーだ。初代モデルの登場は’02年のR115[…]
※タイトル写真は欧州仕様 デイタイムランニングライトにウインカーを統合 ホンダが新型「X-ADV」を国内でも正式発表。EICMA 2024で初公開されたもので、ヘッドライトまわりを含むフェイスリフトに[…]
人気記事ランキング(全体)
ファンバイクは”個性”重視。けっこう選びやすい ホンダの125ccには本格スポーツのCB125Rがあるし、原付二種まで範囲を広げたらクロスカブ110も入ってくるし、スクーターやビジネス車(公道走行、一[…]
いい加減さがいい塩梅!? ダートで遊べるPG‐1 「個人車両なので頼むから無理はしてくれるな…」という編集担当の目を盗んでダートセクションにPG -1を連れ込んでみたら、これが何だか楽しくて仕方ない([…]
ホンダは欧州で「GB350S」を発表。欧州では久々に『GB』の名が復活することになる。 標準モデルのGB350に対し、ややスポーティなアレンジがなされたGB350Sは、日本などでGB350S、最初に登[…]
早くも番外編、2017年の東京モーターショーで同時公開された3台のカスタマイズモデルだ! 2017年10月25日、東京モーターショーでZ900RSが世界初公開されると同時に、Z900RSカスタムプロジ[…]
全ての個体にシリアルナンバー入り カワサキドイツの設立50周年を記念した特別モデルが登場した。1975年にカワサキドイツが設立されてから間もなく50周年を迎えるが、すでに2025年モデルとして登場して[…]
最新の投稿記事(全体)
おお、デカ目! 北米セローはXT250の名で存続、極太タイヤのTW200は懐かしの四角ライト 日本国内では、2020年7月31日にセロー250ファイナルエディションの最後の1台が出荷されてから4年が経[…]
43年で歴史に幕……と思ったらタイで続いてるよ! 平成32年排出ガス規制の壁、ABS義務化、そして灯火類の追加レギュレーション……。日本ではさまざまな理由から継続生産ができなくなり、2021年モデルを[…]
トルク強化のエンジンアップデート+電サス新採用ほか ホンダは新型「NT1100」の国内モデルを2025年1月23日に発売すると発表した。2022年に初登場したNT1100は、CRF1100Lアフリカツ[…]
SC77の4気筒エンジンを搭載し、SPは出力6psを上乗せ ホンダは、EICMA 2023(ミラノショー)でプロトタイプを公開していた新型ネイキッドモデル「CB1000ホーネット」および上級版の「CB[…]
ワイヤレス充電が可能な『スマートフォンホルダー+e』 カンタン電源取り出し ブレーキスイッチとフレームのボルトに共締めするだけの簡単取り付け。メインキー連動でバッテリー上がりの心配もありません。 セン[…]
- 1
- 2