
カワサキは欧州と北米で、948cc並列4気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッド「Z900」「Z900 SE」の2025年モデルを発表した。エンジンやフレーム、足まわりにまで手が入り、デザインもほぼ全面リニューアル。ヘッドライトは3眼になった。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ)
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”
カワサキは、2017年にZ750→Z800のさらなる後継車として948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」を発売し、1972年のZ1から連綿と続く900ccクラスの4気筒マシンの最新の姿を提示した。バリエーションモデルとしてオーリンズ&ブレンボで足まわりを強化した「Z900 SE」も追加し、現在に至るまで欧州のアッパーミドル級ネイキッドで不動の人気を博している。
そしてカワサキが2025年モデルとして発表したのは、全身に手が入った新型「Z900」「Z900 SE」だ。
Z900 SE(欧州仕様)
鋭い眼光の“凄みデザイン”を磨き上げ、エンジンはカムプロファイルの変更や電子制御スロットルの新採用で中速域の力強さを増し、IMU搭載など各種電子制御も最新に。フレームやエルゴノミクスも改良されたほか、カワサキとして初めて音声コマンドとターンバイターンナビゲーション表示に対応したメーターを採用している。
欧州と北米ではカラーバリエーションが微妙に異なり、いずれ導入が期待される日本仕様がどのようなラインナップになるのか興味深いところだ。
なお、北米ではZ900が従来から+100ドルの9999~1万299ドル、Z900 SEは+450ドルの1万1849ドルになっている(欧州は未発表)。発売時期は2025年冬。
なお、北米&欧州の発表から半日後にカワサキモータースジャパンは日本への導入に向けて準備中と発表した。価格や発売日については調整中とのことで、明らかになり次第改めてお届けしたい。
電子制御スロットルを採用し、機能拡張したエンジン
カワサキのマジックナンバーである900を受け継ぐ4気筒エンジン。最高出力&最大トルクの発生回転数は従来と変わらないが、艇中回転域の力強さが増している。
エンジンは最高出力125ps→124psとわずかにパワーダウンしているが、カムシャフトのプロファイル変更と電子制御スロットルを採用したことにより低回転域のトルクを増強するとともに扱いやすさを増した。燃費は17.54km/L→20.83km/Lと16%も改善した。
また、吸排気音にこだわったエアボックスやマフラー、軽い操作感とシフトダウン時の後輪スリップを抑制するアシスト&スリッパークラッチなどは従来型から継承している。
電子制御関連ではIMU(慣性計測ユニット)を採用したことで、新たにKCMF(カワサキコーナリングマネジメントファンクション)によるエンジン&車体のトータルマネジメントを実現。KTRC(カワサキトラクションコントロール)やコーナリング対応ABS、1500rpmから作動する双方向KQS(カワサキクイックシフター)といった新採用の機能を一括して管理する。
このほか、クルーズコントロールも新たに搭載した。
フレームの改良と足まわりの強化
剛性バランスの最適化やシートレール形状の変更を受けた。
メインフレームはヘッドパイプ周辺のガセットを変更して剛性バランスを最適化。シートレール形状をフラットにすることでシートクッションの厚みを増しながら足着き性も確保している。
前後サスペンションは設定変更を受けたほか、フロントブレーキには新たにニッシン製ラジアルマウントキャリパーを採用。リヤブレーキはパッドの摩材とブレーキホースの素材が変更された。前後タイヤは新たにダンロップ製スポーツマックスQ5Aを採用している。
ハイグレードモデルのZ900 SEについては、ゴールド仕様になった倒立フロントフォークにブレンボ製M4.32ラジアルマウントモノブロックキャリパー(Z H2と同スペック)を組み合わせ、ニッシン製ラジアルポンプマスターシリンダーを奢る。リヤショックはリモート式プリロードアジャスターなどを備えたオーリンズ製S46だ。
このほかにも、Z900 SEには専用ボディカラーやツートーンシート、フロントカウル内のUSB-Cソケットなどを追加装備する。
デザイン性と居住性を向上したボディワーク
エルゴノミクス(人間工学)の領域も改良を受けた。シートは厚みの増したウレタンを採用したことでクッション性を増し、快適性を向上。同時に前半を絞り込み、足着き性を確保している。また、スポーツライディング時の大樹移動のしやすさも考慮されている。シート高は欧州仕様で830mmになっているが、おそらく日本仕様では欧州のローシート相当の810mmになるだろう。
ハンドルバーはアルミ製のファットバーを採用。スイッチボックスも新しくなり、従来モデルのメーターまわりのボタンを廃止して操作系を手元に集約した。
ヘッドライトは新たにコンパクトな3眼タイプとし、ロービームで上側の2灯、ハイビームで下側中央の1灯が点灯する。よりシャープになった表情には、コンパクトなメーターカバーも貢献している。
ラジエターシュラウドは『Z』のロゴが刻まれたメタルプレートを配したのも新しい印象を与えている。燃料タンクカバーはシュラウドと分離され、ニーグリップ部分はフレームが露出するほどスリムに。シルバーのプレートが追加されたキーシリンダー周辺のデザインやシートレザーの変更、よりショートになったテールセクションのデザインも見どころだ。
ウインカーは前後ともLED。テールランプは新たにLED導光タイプとし、横長の新たなイメージを付加している。
フルデジタルの5インチTFTディスプレイを採用
メインスイッチまわりなどに加飾を施したコックピット。
メーターは2つの表示モードを持つ5インチTFTディスプレイを新採用。背景色は周囲の明るさによって白または黒に自動的に切り替わる。表示項目は速度、エンジン回転、ギヤ段数、シフトライト、燃料残量計、オド/デュアルとリプ、瞬間/平均燃費、航続可能距離、平均速度、合計走行時間、水温計、時計、電圧計、KQS、クルーズコントロール、メンテナンス通知、ライディングモード、スマートフォン連携機能など多岐にわたる。
注目はカワサキとして初めて採用するボイスコマンド機能とターンバイターンナビゲーションの実装だ。新バージョンのライディオロジーアプリによってスマートフォンと連携することによって実現する機能で、さらにスマートフォン画面にナビゲーションマップ、メーター画面にターンバイターンを同時に表示することも可能だ。
このほか、ライディオロジーアプリによって車両情報の管理やライディングログ(GPS対応)、電話の着信通知、車両の各種設定などもできる。
KAWASAKI Z900 / SE[2025 U.S. model]
KAWASAKI Z900[2025 U.S. model]Metallic Spark Black/Metallic Carbon Gray/Ebony
KAWASAKI Z900[2025 U.S. model]Galaxy Silver/Metallic Spark Black/Phantom Blue
KAWASAKI Z900 SE[2025 U.S. model]Metallic Matte Graphite Gray/Ebony/Metallic Graphite Gray
KAWASAKI Z900 SE[2025 U.S. model]Metallic Matte Graphite Gray/Ebony/Metallic Graphite Gray
KAWASAKI Z900 SE[2025 U.S. model]Metallic Matte Graphite Gray/Ebony/Metallic Graphite Gray
KAWASAKI Z900 / SE[2025 EU model]
車名 | Z900 | Z900SE |
全長×全幅×全高 | 2065×830×1075mm | ← |
軸距 | 1450mm | ← |
最低地上高 | 145mm | ← |
シート高 | 830mm | ← |
キャスター/トレール | 24.7°/110mm | ← |
装備重量 | 213kg | 214kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4バルブ | ← |
総排気量 | 948cc | ← |
内径×行程 | 73.4.0×56.0mm | ← |
圧縮比 | 11.8:1 | ← |
最高出力 | 124ps/9500rpm | ← |
最大トルク | 9.9kg-m/7700rpm | ← |
始動方式 | セルフスターター | ← |
変速機 | 常時噛合式6段リターン | ← |
燃料タンク容量 | 17L | ← |
WMTCモード燃費 | 20.83km/L | ← |
タイヤサイズ前 | 120/70ZR17 | ← |
タイヤサイズ後 | 180/55ZR17 | ← |
ブレーキ前 | φ300mmダブルディスク +4ポットキャリパー | ← |
ブレーキ後 | φ250mmディスク +1ポットキャリパー | ← |
参考価格(※北米) | 9999~10299ドル | 11849ドル |
車体色 | 灰×緑、黒×灰、灰×赤 (北米=黒×灰、銀×黒×青) | 灰×黒 (北米仕様も同じ) |
発売時期(※北米) | 2025年冬 | ← |
Z900 SE の専用装備
豊富な純正アクセサリー
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI] | 新型ネイキッド)
2024年モデル:待望の国内導入初年度 XSR125は、可変バルブシステム=VVAを採用した水冷単気筒エンジンをスチール製デルタボックスフレームに搭載し、倒立フロントフォークやアシスト&スリッパークラ[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは、948cc並列4気筒エンジンを搭載したスーパーネイキッド「Z900」および上級モデル「Z900 SE」[…]
待望のビモータ第2弾がいよいよ上陸、走行性能を極めたハイパーネイキッドを見よ! カワサキとビモータがコンビを組んだのは2019年。KB4を皮切りに現在では6車種をラインアップしているが、カワサキモータ[…]
ニンジャ400と同日発売のストリートファイター カワサキモータースジャパンは、Z250と共通の車体に398ccの並列2気筒エンジンを搭載し、タイヤをラジアルに換装したストリートファイター「Z400」の[…]
Z1、GPz900R、Ninja ZX-9Rから連なる“マジックナイン”の最新進化系 カワサキは昨秋、欧州でZ750→Z800に連なる後継車として2017年に948cc並列4気筒エンジンを搭載したスー[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
2019年モデル:2本立てで復活 一時は2017年モデルのファイナルエディションを最後に、一部マーケット(インドネシア等)向けを除き、生産が終了していたが2019年モデルから国内でも復活。 空冷773[…]
2024年モデル:待望の国内導入初年度 XSR125は、可変バルブシステム=VVAを採用した水冷単気筒エンジンをスチール製デルタボックスフレームに搭載し、倒立フロントフォークやアシスト&スリッパークラ[…]
2022年モデル概要:赤フレームに白ボディが新鮮! 並列4気筒エンジンを搭載し、アグレッシブな「Sugomi」デザインと「エキサイティング&イージー」な走りがウリのZ900。KTRC(カワサキトラクシ[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
人気記事ランキング(全体)
電子制御スロットルにアナログなワイヤーを遣うベテラン勢 最近のMotoGPでちょっと話題になったのが、電子制御スロットルだ。電制スロットルは、もはやスイッチ。スロットルレバーの開け閉めを角度センサーが[…]
勝手に妄想、クーリーレプリカ! スズキの『8』プラットフォームに新顔の「GSX-8T」と「GSX-8TT」が登場した。まずは欧州や北米で発売され、順次日本にも導入の見込みだ。 この新型については以前ヤ[…]
美しい孔雀の羽根の色味が変わる特殊ペイントで仕上げた新グラフィック 『エクシード-2』は、カブトがラインナップするオープンフェイスの上級モデルで、赤外線(IR)と紫外線(UV)を大幅にカットしつつ、空[…]
ホンダのスポーツバイク原点、CB72とマン島T.T.イメージを詰め込んだクラブマンだった! ご存じGB250クラブマンは1983年の12月にリリース。同じ年の4月にデビューしたベースモデルのCBX25[…]
手軽な快速ファイター 1989年以降、400ccを中心にネイキッドブームが到来。250でもレプリカの直4エンジンを活用した数々のモデルが生み出された。中低速寄りに調教した心臓を専用フレームに積み、扱い[…]
最新の投稿記事(全体)
特別な店舗のオープンに向けた特別な1台 関西/中部エリアで6店舗を運営するモトラッドミツオカグループ。新装オープンした堺店は、国内のBMW Motorradの正規ディーラーの中でも最新の内装と設備が自[…]
ツーリングに必須レベルの各種ガジェット Kaedear スマートレコードディスプレイ KDR-D22:15%OFF CarPlayとAndroid Autoに対応し、スマホを触らずにナビや音楽操作がで[…]
決勝で100%の走りはしない 前回、僕が現役時代にもっとも意識していたのは転ばないこと、100%の走りをすることで転倒のリスクが高まるなら、90%の走りで転倒のリスクをできるだけ抑えたいと考えていたこ[…]
ホンダ・スズキと同じく、浜松で創業した丸正自動車製造 中京地区と同様に、戦後間もなくからオートバイメーカーが乱立した浜松とその周辺。世界的メーカーに飛躍して今に続くホンダ、スズキ、ヤマハの3社が生まれ[…]
先の道行きが想定しやすい縦型モニター 2023年発売のAIO-5を皮切りに、だんだんと普及しつつあるバイク用スマートモニター。これまでは横型の表示が多かったが、このたびMAXWINから縦型モニタータイ[…]
- 1
- 2