
全国各地で熱中症警戒アラートが発令されるほどの猛暑が続く、2024年の夏。しかし夏場であっても、基本的にバイクに乗るときは長袖長ズボン/ヘルメット/グローブなどを着用しなければいけません。その際に特に気をつけたいのが、”かくれ脱水”と呼ばれる症状。いったいどのような症状なのでしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
熱中症の前触れ? ”かくれ脱水”とはいったい何なのか
”かくれ脱水”は、身体の1〜2%の体液が失われているにもかかわらず、脱水症状がはっきり出ず、自覚のない状態のことをさします。
バイクを運転中に、トイレの回数を少なくするために水分補給を控えたり、屋外でのランニング/ジョギングで、汗はかいているものの不調を感じていない状態、といった状況が、かくれ脱水になりやすいケースとして挙げられます。
不調でない場合ならばこのままでも問題ないのではないか、と思う人もいるかもしれません。しかし、そのまま身体から水分が失われ続けると、脱水症が悪化してしまいます。
脱水症の症状例としては、軽度の場合はめまい/ふらつき、中等度では頭痛/胃のむかつき、そして高度では意識障害/痙攣などが挙げられます。重度になると臓器不全などを引き起こして、ショック状態となる可能性も少なくありません。
また、それに気温/湿度の上昇といった要素が加わることで、重度の熱中症へつながってしまう場合もあります。
脱水症と聞けば、炎天下の屋外で激しい運動/労働をしたときに起こるもの…と考える人も少なくないでしょう。実際、夏場に脱水症を訴える人は多く、近年は特にテレビ/SNS等でも脱水症に警戒する旨が多く報道されています。
しかし脱水症は、炎天下の屋外で激しい運動/労働をしたときだけに起きるわけではありません。
そもそも人間の身体は、体重のおよそ60%相当が水分/塩分/電解質が混ざった体液からできています。そこから発汗/排泄など目に見える形で水分が失われるわけですが、じつはそれ以外にも呼吸や皮膚から水分を失っており、これを”不感蒸泄”と言います。
この不感蒸泄、体温が1℃上昇するとおよそ15%増えるとされています。つまりライダーは、長袖上下/ヘルメット/グローブ等を着用しているというだけで、体内の水分量が減りやすい状態に晒されているといえます。
さらに、夏バテによって食欲が落ちてしまい、食事からの水分が摂りにくくなってしまうと、ますます体内の水分量は減少してしまいます。
ところで、脱水症と熱中症は症状が似ていますが、その要因には少し違いがあります。
まず脱水症の場合、体液が汗で失われ、かつ補給ができていない場合に発症し、前出のような症状が現れます。
一方の熱中症は、気温の高い環境で生じる健康障害の総称をさし、体温調節が働かなくなる/体温上昇/めまい/けいれん/意識障害といった症状が起こります。
どちらもカギとなるのは水分と塩分。つまりかくれ脱水、ひいては脱水症状を防ぐことが熱中症の予防につながるということになります。
ちなみに、脱水症を予防するには、1日におよそ1.2〜1.5Lの水分を6~8回に分けて摂ったほうがよいとのこと。
また糖尿病/高血圧といった持病がある人は、あらかじめ主治医に注意点を尋ねておくべきしょう。
さて、日常生活においては、適宜食事/飲水することで身体に必要な水分量を補給し、調整することができますが、バイクを運転している状態だとそう簡単にはいきません。
125cc以下のバイクの場合、ホンダ ディオ110やヤマハ ジョグ125などのように、500〜600ml容量のペットボトルを入れるインナーボックスが備わっているものがあります。
こういったバイクに乗っている人は、信号待ち/路肩に停車してすぐに水分補給しやすいですが、もちろんそうでないバイクに乗っている人もいるでしょう。
すぐに水分補給ができない場合は、エアコンの効いた屋内でのこまめな休憩/塩分/水分の補給を定期的に行うことがより一層求められます。また、“◯分ごとに水分補給/休憩する”と決めたり、飲料水ではなく経口補水液を選ぶのもおすすめです。
かくれ脱水を予防することが、最終的には熱中症を防ぐことにつながります。まだ不調を感じていないからと過信せず、定期的な休憩/水分補給を行って楽しいバイクライフを過ごしましょう。
※本記事は2023年8月12日公開記事を再編集したものです。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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