
バイクやクルマが高速道路でガス欠を起こして停車すると、違反点数2点と7000円の反則金が科せられます。押し歩きできるバイクの場合、仮に道路上で停まってしまっても路肩への退避は比較的容易ですし、路肩に緊急停車しても通行の迷惑にはなりにくいようにも思えますが、いったいなぜ高速道路ではバイクのガス欠も交通違反になってしまうのでしょうか?
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
高速道路でのガス欠は追突事故や二次的事故の原因に
高速道路上は、一部の例外を除き原則として駐停車禁止です。突発的な故障/急病などのやむを得ない場合は高速道路上での駐停車が認められるものの、ガス欠/オイル不足/冷却水不足などの故障による停車は、“高速自動車国道等運転者遵守事項違反”として罰せられます。
これらの内容は道路交通法第75条の8項/10項に記載されていますが、違反になる具体的な理由までは明記されていません。しかしその理由は明白と言えるでしょう。
高速道路上でのガス欠による急なスローダウンや路肩への駐停車は、追突事故などを誘発する恐れがあるためです。
路肩の端に停車している状態のバイクであれば、追突事故に発展する危険性はクルマほど高くないものの、クルマよりも走行中の被視認性が劣るバイクは、ガス欠によるスローダウンが起こると追突される危険性がかなり高くなります。
もし追突事故や接触事故が起これば、身体を露出させているライダーはひとたまりもありません。
また後続車のブレーキによって運良く命は助かったとしても、その後ろで自動車同士の玉突き事故などが起これば、ライダーの重大な過失になる可能性もあります。
ガス欠などによる停車はもちろん、走行速度が高い高速道路上での駐停車や車両トラブルは、周囲の車両も巻き込む二次的事故の危険があるため、相応の厳しい罰則が規定されています。
またバイクにとって、エンジンとは単なる動力源ではなく、バランスを取るためにも必須のもの。
高速走行中にエンジンが停止すると、バイクは駆動力を失ってしまい、とても不安定な状態に陥ってしまいます。
仮にカーブの途中でエンジンが停止すれば、バンクしたバイクを起こす手段がひとつ減ることになり、上手く姿勢を立て直せなければ転倒は必至です。
さらに、構造上の理由からガス欠を起こしやすい点もバイクの特徴です。
近年のバイクには燃料計が搭載されていますが、古いバイクの場合、警告灯しか備わっていなかったり、そもそも燃料計が備わっていなかったりするものも多いため、余計に燃料切れが起こりやすい傾向にあります。
中でも燃料タンクの容量が少ないバイクや燃費が悪いバイクほど、高速道路走行はガス欠に対して注意が必要です。
実際、高速道路における2輪車を対象としたJAFの出動理由は“ガス欠”が1年を通してもっとも多いとのことです。
電動バイクの”電欠”も違反になってしまうの?
電動バイクの場合も同様に、駆動バッテリー切れ(電欠)は追突事故/転倒事故などのリスクを高めることに。
電動バイクには必ずバッテリー残量計が備わっていますが、ガソリンエンジンを搭載したバイクよりも航続距離が短いため、高速道路上での電欠には細心の注意を払う必要があります。
ちなみに、電動バイクや電気自動車の高速道路上での電欠も、もちろん道路交通法違反。ただし現在は普及の過渡期であり、道路交通法には「ガス欠(燃料)」の記述はあっても「電欠」の記述がありません。
そのため実際のところ、電動バイクの電欠が違反として取り締まられるかどうかについては、現場の警察官によって判断が分かれるようです。しかし高速道路上での電欠は、ガス欠と同様に危険であることに変わりはありません。
なお、路上でのガス欠を防ぐためには、以下の3つの対策が有効です。
- 燃費/最大航続距離の把握
- 定期的な燃料計のチェック/燃料残量の把握
- 高速道路に乗る前に燃料満タン/トリップメーターのリセット
燃料計があるバイクなら、1Lの燃料で走行できる実距離を知っておけば、燃料残量からおおよその走行可能距離を知ることができます。ただしバイクの燃料計は正確性に欠けることもあるため、走行中は定期的に燃料計をチェックしつつも、表示される残量は参考程度に留めましょう。
燃料計がないバイクは、ガソリン満タンで走行できる最大航続距離を把握しておくことが大切です。高速道路に乗る前に燃料を満タンにして、トリップメーターをリセットしておけば、おおよその給油タイミングを知ることができます。
どちらの場合でも大切なのは、“高速道路に乗る前に燃料を満タンにしておく”ことと“燃料が少なくなったら早めに給油すること”です。
高速道路のサービスエリア/パーキングエリアにあるガソリンスタンドは、おおよそ50km間隔で接地されていますが、なかには100km以上ガソリンスタンドが存在しない区間も全国に数か所あります。ツーリングなどに出かける前には、走行区間がこうしたガソリンスタンド空白区間に該当しないか確認しておくとよいでしょう。
また近年は、こうしたガソリンスタンド空白区間の問題を解消するために、ETC2.0を装着している場合に限り、高速料金はそのままで一時退出が認められる場所もあります。
高速道路でのガス欠を防ぐためには、限られた給油タイミングを逃さないことに加え、こうした道路事情を知っておくことも大切です。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
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