
山間部や海辺を走行していると、黄色の看板に動物のイラストが描かれた警戒標識を目にします。この「動物飛び出し注意」の標識は、その名のとおり動物への注意を促すためのもの。全国各地をツーリングするライダーなら、それだけ多くの動物飛び出し注意の標識も目にしていることでしょう。
●文:ヤングマシン編集部(ピーコックブルー)
地域によって異なる「動物飛び出し注意」の標識
「動物飛び出し注意」の標識は、シカ/タヌキのイラストが描かれた標識が一般的ですが、その地域特有の動物が描かれていたり、なかには絶滅危惧種/天然記念物などが描かれた珍しい標識もあり、そのバリエーションはとても豊富です。
生態系が隔離された沖縄/小笠原などの離島では、絶滅危惧種/天然記念物が多く生息していることもあって、標識も独特です。また、本州と海で隔たれた北海道/九州/なども固有の動物が多く、本州に比べて標識のバリエーションも豊か。
いずれの場所も、ライダーなら一生に一度は行ってみたい場所に挙がる人気のツーリング地ですが、それぞれの地域特有の「動物飛び出し注意標識」はどのようなデザインなのでしょうか。
北海道
北海道には、ヒグマ/キタキツネ/エゾシカ/エゾヒキガエルといった固有の動物が生息しており、標識のイラストも本州とは異なる独特な意匠が採用されています。
また酪農が盛んな北海道では、ウシの標識も白黒模様のホルスタインのイラストが多いようです。
なかでも希少なのが、北海道東部の釧路湿原周辺にある特別天然記念物タンチョウの標識。阿寒郡鶴居村にはタンチョウとシカの両方が描かれた珍しい標識もあります。
特別天然記念物であるタンチョウが描かれた標識。北海道ならではの標識と言える。
九州
宮崎県・対馬島には天然記念物のツシマヤマネコの標識が、また鹿児島県・奄美大島には、特別天然記念物のアマミノクロウサギ/天然記念物のケナガネズミの標識があります。
アマミノクロウサギは、鹿児島県奄美大島と徳之島の2島にのみ分布しているとされる希少な生物だ。
一般的なネコやウサギの標識とは異なり、それぞれの動物の身体の模様や耳の形などの特徴を細かく描写している点が、これら希少動物の標識の大きな見どころといえるでしょう。
また天然記念物ではありませんが、宮崎市フェニックス自然動物園周辺には、全国でも珍しいクジャクの標識があります。とはいえ九州に野生のクジャクが生息しているわけではなく、これは施設から脱走したクジャクへの注意を促すための標識です。
沖縄
ツーリング先としても人気の沖縄は、天然記念物の宝庫であり、それだけ走行にも注意が必要求められます。
沖縄本島には、国の天然記念物となっているヤンバルクイナ/リュウキュウヤマガメ/イボイモリ/オキナワイシカワガエルなどの標識が設置されています。
また、日本最南端の石垣島にはイリオモテヤマネコ、その手前の宮古島では絶滅危惧種のヤシガニの標識もあるようです。
希少な生物が多く生息している沖縄は、「飛び出し注意」標識のデザインもそれだけ多い。
小笠原諸島
沖縄と同じく、東京都に属する小笠原にも天然記念物の動物が多く生息しており、固有の標識が多くあります。
標識として設置されているのは天然記念物のオカヤドカリ/アカガシラカラスバトと特別天然記念物のハハジマメグロです。
また、天然記念物以外では野ヤギの標識があるのも小笠原の特徴で、落石注意とヤギのイラストが組み合わされた変わった標識も存在します。
「オカヤドカリ横断注意」の標識は、少しデフォルメしたデザインで描かれているのも特徴的
コウノトリにツチノコも!? 本州にも珍しい動物注意の標識が
珍しい動物飛び出し注意の標識があるのは以上の地域だけでなく、本州にも希少な標識は存在します。
東京都や神奈川県には、全国でも数箇所にしかないカルガモ横断注意の標識があったり、岐阜県東白川村には幻の珍獣とされるツチノコの標識、兵庫県朝来市周辺には特別天然記念物コウノトリの標識があります。
カルガモ横断注意の標識は、近隣住民の声があがったことにより設置されたことでも注目を集めた。
ちなみに、本州でよく見られる標識の代表はカモシカ/タヌキ/サル/ウサギなどで、地域によってはクマ/イノシシ/ウシ/キツネ/リスなどの標識も存在します。よく見るこうした標識も、地域によってデザインにアレンジが加えられている点も面白いところです。
それぞれの地域ごとの特色が溢れる動物飛び出し注意の標識を楽しむのも、ツーリングの隠れた楽しみのひとつ。とはいえ、実際にシカなどの大型動物が飛び出してきた場合、バイクだと大きな事故につながりかねません。これらの標識のある場所では、十分に前方注意して走行することを心がけましょう。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
最新の関連記事(交通/社会問題)
1. 山梨県の三ない運動と坂本先生の革新的な安全教育 山梨県は公共交通が不便だったこともあり全県的な三ない運動は実施されず、多くの高校でバイク通学が行われ、各校ごとに“乗せて教える”教育が施[…]
2021年に底を打ったバイク盗難の件数は近年、再び上昇傾向にある。2021年の7569件に対し、2024年は1万1641件まで増加しており、原付一種/原付二種が89%を占めているという。[…]
原付一種の新区分「新基準原付」とは? ガソリン原付一種は、排ガス浄化装置である触媒性能の問題により国内第4次排出ガス規制(ユーロ5相当)をクリアできないため、2025年10月末日に生産終了となり、以降[…]
白バイ隊員になるには 白バイに乗るためには、あたり前のことですが大型自動二輪免許の取得が必要です。とはいえ、警察官になる時点で取得していないとダメかといえば、そうではありません。後から取得する手間が減[…]
バイクを取りまく、さまざまな環境の向上を目指す バイク(二輪車)ユーザーがより安全で快適なバイクライフを過ごせる社会をめざし、二輪車を取りまく環境の向上のために活動している日本二普協。 同協会安全本部[…]
最新の関連記事(バイク雑学)
オートバイって何語? バイクは二輪車全般を指す? 日本で自動二輪を指す言葉として使われるのは、「オートバイ」「バイク」「モーターサイクル」といったものがあり、少し堅い言い方なら「二輪車」もあるだろうか[…]
【燃料タンク容量考察】大きければ良いってもんではないが、頻繁な給油は面倒だ 当たり前の話ではあるけれど、燃費性能とともに、バイクの航続距離(無給油で連続して走れる距離)に関係してくるのが、燃料タンクの[…]
バイクいじりで手が真っ黒、そんな時どうしてる? バイクいじりにつきものの、手の汚れ。 特に、チェーンのメンテナンスやオイル交換など、油を使った作業となるとタチが悪い。 ニトリル手袋やメカニックグローブ[…]
白バイ警察官になるためのファーストステップ、必要なのは執拗なアピールや根回し!? 警察官になっても、すぐに白バイ警察官になれる訳ではありません。白バイ警察官になるには、まず「白バイ隊員になりたい」と希[…]
シート後部、リヤ両サイドにある白バイの計3つのボックス 白バイのボックスは3つあります。荷物を入れるためのサイドボックス、無線機を入れる無線機ボックスがあり、サイドボックスは車両後部の左右に1つずつ、[…]
人気記事ランキング(全体)
低く長いデザインが個性マシマシ! レトロモダンなボバークルーザー 中国から新たな刺客がやってきた! ベンダは2016年設立の新興メーカーで、独自設計のエンジンを搭載したクルーザーを中心に、ネイキッドな[…]
ネイキッドブームの立役者もライバル続出で遂に対抗刷新! 1989年、カワサキがリリースしたZEPHYR(ゼファー)は、レーサーレプリカ熱が冷めたタイミングもあって、瞬く間に400ccクラスの販売トップ[…]
フレディ・スペンサー、CB1000Fを語る ──CB1000Fのインプレッションを聞かせてください。 とにかくすごく良くて、気持ちよかったよ。僕は何年もの間、新しいバイクのテストをしてきた。HRCのテ[…]
ゼファーとは真逆のコンセプトで独り勝ちを掴む! 1989年のカワサキZEPHYR(ゼファー)をきっかけに、カウルのないフォルムをネイキッドと呼ぶカテゴリーが瞬く間に人気となった。 続いて1991年に、[…]
前年モデルでTFTディスプレイを獲得した無印 北米スズキは、2005年型GSX-R1000(通称K5)由来の痛快な並列4気筒エンジンを搭載するスポーツネイキッド「GSX-S1000」およびスポーツツア[…]
最新の投稿記事(全体)
トップス&インナー 機能性抜群な冬用パーカー JK-630:1万3000円台~ 伸縮性の高い透湿防水生地を使用したウインターパーカー。保温性に優れた中綿入りなので、暖かさをキープし快適なライディングを[…]
1903年以降、ナンバーはずっと使い続けることができる英国 ナンバープレートがオークションなどの売り物になること、じつはイギリスではさほど珍しいものではありません。 イギリスでは一度登録したナンバーを[…]
ライダーの「不安」を解消する全方位監視性能 「Driveman DD-1000」の開発責任者は、「秋のライダーが直面する『後方の不安』と『夜間の不安』、この両方を解消したいという想いで開発した」と語っ[…]
秋向けライディングギア 機能性抜群なライディングパーカー JK-604:1万2000円台~ ヨーロッパで人気の気軽にはおれるケブラー裏地入り、スリーシーズン向けスエットパーカ。肩と肘にはCEレベル2ソ[…]
テレスコピック×フラットツインは1300cc化でより軽やかに! まず正直に言うと、残念ながらR1300RS&Rの試乗はフルウエットのみで、試乗時間も2台合わせて45分という限られた時間だった。各車のお[…]
- 1
- 2