
漢カワサキと呼ばれることもある“モーターサイクルのカワサキ”が、新種の電動3輪ビークルを発売する。電動アシスト自転車仕様のノスリス/ノスリス カーゴ、そしてフル電動車のノスリスeがラインナップされ、ノスリスは5月20日に発売済み。カーゴ/eも、それぞれ6月/7月に発売される。
●文:ヤングマシン編集部(ヨ) ●写真:真弓悟史 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン noslisu
電動アシスト自転車×2機種、フル電動自転車×1機種をラインナップ
カワサキは、新種の電動3輪ビークル「ノスリス」シリーズを順次発売する。2021年にはクラウドファンディングで電動アシスト自転車版とフル電動版(ナンバー付き・ミニカー登録)が先行発売され、アシスト版100台、フル電動版50台が即日完売。そして今回は、電動アシスト自転車バージョンに大きな荷物も積載できる“ノスリス カーゴ”を追加した3機種ラインナップとして、ついに通常販売へ。
電動アシスト自転車のノスリスは5月20日に発売済みで、フル電動車のノスリスeは6月頃、ノスリス カーゴは7月頃に発売を予定されている。
この発売に先立って、エリミネーターのプレス向け試乗会場でノスリスの試乗会も行われ、3車に試乗できたのでその模様をお伝えしたい。
左から、ノスリスe(フル電動自転車)、ノスリス カーゴ(電動アシスト自転車)、ノスリス(電動アシスト自転車)。
転ぶ気がしない?! 傾けながらハンドルを“切って曲がる”という新しいフィーリング
電動アシスト自転車仕様の『noslisu(ノスリス)』は、通常の電動アシスト自転車のような車体後ろ半分に対し、ステアリングヘッドが異様に低いフレームと前2輪の構成としているのが特徴的。動力源にはインホイールモーターを採用しており、前カゴは普通の自転車と同様にハンドルの前に設置される。
電動アシスト自転車のノスリス(noslisu)。
走行モードを切り替えることが可能な点は普通の電動アシスト自転車と同様だが、前輪のフィーリングは大きく異なる。20インチの左右ホイールは平行する2本のアームで支えられ、ステアリング用のロッドやそれぞれの車輪のディスクブレーキ、そして車体を直立した状態でロックできるディスクブレーキのようなものが目をひく。余分な車体の傾きを抑えるスプリングなども面白いアイデアだ。
漕ぎ出してからすぐに感じるのは、フロントの安心感。前2輪でガッチリと支えられ、路面の凹凸が気にならずフラフラする感じもまったくない。
少し面喰ったのは、普通の2輪車だと車体を傾けた際にステアリングが追従して切れていくものだが、このノスリスの場合はそうした特性を付与していないとのことで、自分でハンドルを切っていく必要があるという点だ。また、ハンドルの切れ角や車体のバンク角も控え目で、あくまでもゆるやかな走りを前提としていることがわかる。我々のようなバイク好きガチ勢に向けた商品でないことは明らかだ(笑)。
頭を少し切り替えて、家人が乗るような場面を想定しながら走ると、フロントの安定感と電動モーターによる巧みなアシストに改めて気付く。これなら多少の坂道をものともせず、大量の食材などを 買ってしまっても安心して積載することができそうだ。ベースはあくまでも自転車ながら、どこか四輪のような安定感が味わえるのが新しい。
走行モードはパワー/標準/エコがあり、最もアシストが強力な“パワー”では0~10km/hまで人の力1に対しアシスト力2を発生。その後24km/hまでアシスト比率を徐々に減少させ、24km/hに到達するとアシストが0になる。
普通自動車免許で運転できるノスリスe
次にフル電動ビークルの『noslisu e(ノスリス イー)』である。いちばんの特徴はミニカー登録になっていることだろう。道路運送車両法では第一種原動機付自転車だが、道路交通法上の区分では普通自動車になり、運転するには普通自動車免許(AT限定可)が必要だ。法規上はヘルメット装着の義務がないことになるが、もちろんカワサキとしてはヘルメットを推奨しているし、筆者としてもノーヘルで走りたいとは特に思わなかった。
フル電動自転車ビークルのノスリス イー(noslisu e)
こちらはフロントの荷台を前輪の間に接地することでより低重心になっており、人力+αが基本の電動アシスト自転車に比べて、より安定性を高めている。
走行モードによって最高速度20km/hリミッターが掛かるモードと、速度リミッターが掛からないモードがあり、加速はどちらも同等。狭いクローズドエリアでの走行だったが、リミッターなしで30km/hあたりまでは確認できた(公称最高速度は約35km/h)。ちなみに電源オフで公道を人力走行すると違法になるので注意が必要。ただし、電源オンで灯火類が正常作動する状態にしておけば、人力走行してもその限りではないらしい。
モーターによる加速は、バイクのような回転するアクセラレーターではなく、ATVやマリンジェットなどに近いレバー式で制御する。加速力は段階的に発生するものではなく、レバーによるオン/オフのみ。バイクに比べれば圧倒的に穏やかな加速力なため、0か1かの制御でも全く問題は感じない。慣れてきたら“どの地点から加速するか”という走りの組み立てめいたものも楽しめる。
また、モーター駆動で加速力や登坂力が不足する場合は、人間がペダルを漕いでマシンをアシストすることも可能。登り坂ではかなり有効だという。
電動の原付一種バイクに近い使い勝手で、自転車のような気軽さもあり、満充電時の走行距離47.4kmはかなり安心感がある。
特異な見た目ながら高い実用性が期待できる“カーゴ”
最後に試乗したのは、巨大なカマキリのようなノスリス カーゴ。こちらはステアリング軸と前輪の操舵軸が大きく離れていて、その間に巨大な積載スペースを備えた電動アシスト自転車だ。
電動アシスト自転車のノスリスカーゴ(noslisu cargo)
車体寸法や走行距離については未発表だが、前後20インチのタイヤとワイヤー式ディスクブレーキを備えているところは他の2機種と共通である。
離れたところにある前輪をリンクロッドを介して操舵するので、通常のノスリスよりも手応えは強め。また、大回りするフロントが遠く、小回りするリヤの真上近くに着座していることから、それなりに内輪差を意識する必要がある。
面白いクセのある乗り物だが、大きな荷物を積載できるのが最大のメリット。街中で見たことあるウ●バーイーツのアレに似た黒いボックスに25kgの重りを積んでも、車体中心の低いところに積載しているからか、安定性に大きな影響は感じない。これは都市部におけるウー●ーイーツやネット通販などの配達業務にも十分使えそう。リヤカーのように常に後ろを警戒しなければならない不安感からも解放されそうだ。
もし個人で所有するなら、アウトドア的な使い方も面白いだろうか。予備バッテリーを積んで郊外の河川敷に簡易キャンプをしに──なんて場面も目に浮かぶ。
Kawasaki noslisu (電動アシスト自転車/免許不要)
Kawasaki noslisu
Kawasaki noslisu 主要諸元■全長1635 全幅600 全高960 サドル高760-960(各mm) 車重28kg(バッテリー1.9kg込み)■定格出力180W 走行距離:エコモード53.0km/標準モード47.4km/パワーモード33.1km バッテリー電圧/容量25.4V/9.8Ah 満充電時間約5時間■タイヤサイズ前後=20インチ ●価格:36万3000円(バッテリー/充電器含む) ●色:ウララブルー、メタリックフォースシルバー ●発売日:2023年5月30日
Kawasaki noslisu e(フル電動/要普通自動車免許[AT限定可])
Kawasaki noslisu e 主要諸元■全長1790 全幅695 全高985 サドル高815-960(各mm) 車重35kg(バッテリー3.6kg込み)■定格出力500W 走行距離:47.4km(モード2) バッテリー電圧/容量48V/14.7Ah 満充電時間約5時間■タイヤサイズ前後=20インチ ●価格:43万100円(バッテリー/充電器含む) ●色:メタリックスパークリングゴールド ●発売日:2023年6月
Kawasaki noslisu cargo(電動アシスト自転車/免許不要)
Kawasaki noslisu cargo 主要諸元■全長/全幅/全高/サドル高/車重:未発表 バッテリー重量1.9kg)■定格出力180W 走行距離:未発表 バッテリー電圧/容量25.4V/9.8Ah 満充電時間約5時間■タイヤサイズ前後=20インチ ●価格:41万4700円(バッテリー/充電器含む) ●色:メタリックフォースシルバー ●発売日:2023年7月
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
シンプルな前2輪+後1輪構成の電動アシスト/フル電動3輪ビークル 川崎重工は、2020年9月に社内公募制度「ビジネスアイディアチャレンジ」の第1号案件として選定した「noslisu(ノスリス)」をクラ[…]
車体の中央に積む、だから安定する カワサキモータースは、電動3輪ビークル「noslisu(ノスリス)」シリーズの新モデル「noslisu 電動アシスト自転車カーゴ仕様」(以下、ノスリス カーゴ仕様)を[…]
謎の3輪車、状況証拠からしてカワサキ製で間違いなし! ここで取り上げる謎の3輪バイク「NL‐TR1」は、'20年10月に開催された神戸ニューオーダーチョッパーショーに出展されていた車両。カスタムショー[…]
意欲的な電動化で脱炭素の先端を突っ走る(カワサキモータース 伊藤浩社長) 現在、日本のバイクメーカーで、もっとも脱炭素に積極的なのがカワサキだ。'21年10月に川崎重工から分社化し誕生した「カワサキモ[…]
限りなく市販に近いカタチで、EV ニンジャとZがEICMAに登場! 「EVをやるにしても最初からニンジャかZと決めていました。カワサキのイメージはスクーターではありませんから」と、カワサキの先進技術[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
9/10発売:スズキ アドレス125 まずはスズキから、原付二種スクーターの定番「アドレス125」がフルモデルチェンジして登場だ。フレームを新設計して剛性を高めつつ軽量化を実現し、エンジンもカムシャフ[…]
一線から退くことすらファンが許さなかった「革新モデル」 世界最速を目指したZ1発売から10年余り、ついにカワサキは水冷4気筒エンジンを搭載するGPz900Rを1984年に発売。北米モデルはNinja([…]
最新の関連記事(新型EV/電動バイク)
両手を自由に使うことができる、新パーソナルモビリティ ホンダが2025年9月24日より、法人向けに販売を開始したのがパーソナルモビリティの「UNI-ONE(ユニワン)」です。 法律的には「移動用小型車[…]
ホンダ初の本格的電動モーターサイクルが間もなく……? 2024年秋のEICMAで世界初公開された電動二輪車のコンセプトモデル「EV Fun Concept(イーヴィー ファン コンセプト)」は、202[…]
50ccクラスは16歳から取得可能な“原付免許”で運転できるほか、普通自動車免許でもOK バイクを運転するための免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大[…]
「走る」を変える次世代の相棒 一般的なガソリンバイクが燃料を燃焼させてエンジンを駆動するのに対し、電動バイクはバッテリーに充電した電気でモーターを回して走行する。そのため、排気ガスを一切排出しない、環[…]
コスパも高い! 新型「CUV e:」が“シティコミューターの新常識”になる可能性 最初にぶっちゃけて言わせてもらうと、筆者(北岡)は“EV”全般に対して懐疑的なところがある者です。カーボンニュートラル[…]
人気記事ランキング(全体)
どうする? スクーターのエンジンがかからない ※これはまさに、筆者が直面した実話です。我が家のスクーター(TODAY)に乗ろうと思って、車庫から引っ張り出しました。ちょっと久しぶりですね。エンジンをか[…]
カスタムスピリットから生まれた英国ブランド まずMUTT Motorcyclesというブランドについておさらいしておこう。2016年、英国バーミンガムでカスタムビルダーのWill RiggとBenny[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
最新の投稿記事(全体)
随所に専用部品を投入したZシリーズ初のR仕様 Z1000の派生/上級機種として’78年に登場したZ1‐Rは、評価がなかなか難しいモデルである。まず当時の流行だったカフェレーサーの手法を取り入れながら、[…]
125ccクラス 軽さランキングTOP10 原付二種は免許取得のハードルも低く、手軽に楽しめる最高の相棒だ。とくに重要なのは「軽さ」だろう。軽ければ軽いほど、街中での取り回しは楽になるし、タイトなワイ[…]
“思い出の1台”に乗りたい バイクメーカーがニューモデルを開発する際は、ユーザーがそれを受容できるか、あるいは新たなマーケットを作り出せるかが重要。レーサーレプリカもネイキッドも、それがウケると分かっ[…]
用品から観光までバイクライフが広がる一日 「茶ミーティング」の最大の魅力は、その出展ブースの多様性にある。国内外のオートバイメーカーや用品メーカー、卸商といった我々ライダーにはお馴染みの企業が多数参加[…]
日本の免許制度を考慮してナナハン4気筒と同時開発 GS750の弟分。世間にはそういう見方をする人がいるけれど、’76年から発売が始まったGS400を弟分と呼ぶのは、少々語弊があるのかもしれない。なんと[…]
- 1
- 2