
’80年代を通じて過熱し続けたレーサーレプリカブーム。このスペック至上主義の時代には、わずか1馬力の差がマシンの命運を分けることもままあった。本記事ではホンダのレーサーレプリカ大本命、VFR400Rとその後継であるRVFを取り上げる。※本記事はヤングマシン特別号 青春単車大図鑑からの転載です。
●文:ヤングマシン編集部
勝利しか認めぬホンダの本気〈ホンダ VFR400R〉
世界初の水冷V型4気筒を搭載したマシンは、’82年に登場したホンダVF750マグナ/セイバーとなるが、400クラスでは同年12月発売のVF400Fが最初であった。このVF400Fはレースでも強く、全日本TT-F3ではFZRから年間タイトルを奪取。’85年以降、3年連続でチャンピオンを獲得している。
’86年、ワークスレプリカとして、またVFの後継として車名も新たに登場したのが、このVFR400R(NC21)だ。心臓部はVFと同様のボア×ストロークを持つ水冷90度V4だが、動弁系を高回転時の伝達ロスが少ないカムギアトレーンに一新した全くの別物。これを搭載するアルミフレームは、2本の極太メイン部材を持つとともにエンジン自体を剛体の一部としたダイヤモンド式ツインチューブを採用。待望のフルカウルを身にまとい、優れた操縦性を実現した。
’87年にはワークスRVFと同様の片持ちスイングアーム=プロアームを装備したII型へチェンジ(NC24)。さらに’89年にはⅢ型へ進化。これはTT-F1レプリカのVFR750R(RC30)の400㏄版と言えるモデルで、型式名のNC30の名がよく知られている。初代から人気を博していたが、NC30で一段とセールスを伸ばした。
’94年にはRVF(NC35)に刷新。これが事実上の最終型となった。
【’86 HONDA VFR400R】■水冷4ストV型4気筒 DOHC4バルブ 399cc 59ps/12500rpm 4.0kg-m/10000rpm ■164kg ■タイヤサイズF=120/60R17 R=150/60R18 ●当時価格:74万9000円 ※諸元は’89年式
独特なサウンドを奏でる水冷90度V4。2気筒並みのスリムさとカムギアトレーンが特徴だ。
750クラスに匹敵する極太の目の字断面アルミフレーム。ラジエターはアルミ製で上下2段に配置する。
【お楽しみ特別仕様】II型では8耐男のガードナーになりきれるロスマンズ、III型ではVFR750R/RC30カラーを用意。[写真左 ロスマンズ/写真右 RC30カラー]
【エンデュランススペシャルカラー】’92年の8耐はガードナー+RVFが制覇。そのOKIカラーを再現。
ホンダ VFR400Rの系譜
’86 ホンダ VFR400R:伝家の宝刀カムギアトレーン
【’86 HONDA VFR400R】常勝レーサーRVFのレプリカとして登場。ホンダ独自のカムギアトレーン+水冷V4を搭載。
’87 ホンダ VFR400R:プロアームや集合管を採用
【’87 HONDA VFR400R】両持ち式から片持ち式のプロアームに。集合管を採用し、トルクは3.7→4.0kg-mにアップ。
’89 ホンダ VFR400R
【’89 HONDA VFR400R】シリーズ決定版となったNC30は本年式から。2眼となり、5角断面フレームやバックトルクリミッターを装備。マフラーは左出しに。
’90 ホンダ VFR400R
【’90 HONDA VFR400R】前後サスペンションの強化が施され盤石の体制に。
派生モデル:’86 ホンダ VFR400Z
【2眼は耐久イメージ!?】カウルレスのZは、RC30に先駆けて2眼を採用。Rより3万円安く、ハンドリングも軽快だった。
400最強の座は後継機へ〈ホンダ RVF〉
’94年に全面改良されたVFRは、車名をワークスと同じRVFに変更。V4はレスポンスを向上し、新設計フレームに搭載。倒立フォークやラムエアのほか、リヤ17インチを採用した。400レプリカの決定版として’99年頃まで販売された。’96年型でグラフィックを変更したが、諸元に変更はない。
【’94 HONDA RVF】■水冷4ストV型4気筒 399cc 53ps/12500rpm 3.7kg-m/10000rpm ■165kg ●当時価格:78万円
【’96 HONDA RVF】
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