59年前にポップが作った耐久マシンを来年のヨシムラ70周年に鈴鹿で走らせたい
「話は変わりますが、昨年の7月に、アメリカのアラバマ州にある『バーバー・ヴィンテージ・モータースポーツ・ミュージアム』というところから、8耐が始まる前の’64年に行われた18時間耐久レースに出場したウチのマシンを手に入れたので、本物かどうか見てほしいという連絡があって見に行ってきました。本物でした。18時間耐久には2台エントリーしていて、ミュージアムにあったのは16時間までトップを走っていた250ccのCB72で、レースはセカンドチームのCB77が優勝したんです。このCB72をレストアして、今年の10月にアメリカで開催するイベントで走らせ、その後、ウチの創立70周年に当たる来年に日本の鈴鹿で走らせようという話をしています」
いまから59年前にポップがチューンしたマシンが現存していて、それを走らせようとしている人たちがいる。古いものに価値を見出して、大切にする文化が欧米にはしっかり息づいているのだ。
「なんでそういうことになっているかというと、アメリカ、ヨーロッパもヴィンテージものには税金がかからないんですよ。日本にもコレクターはいるんですが、税金を取られちゃうからなかなか表に出てこない。逆に欧米では、税金の優遇もあってちゃんとヴィンテージが商売になっているから、そういうバイクもどんどん集まってくるんですね。
もしもエンジンが本当に禁止になると、いまあるエンジンのバイクはとても貴重なものになって、どんどん海外に流失してしまうかもしれない。それは防がないといけません」
ポップの時代から連綿と続く世界的チューナーのヨシムラだからこそ、新しいものへのチャレンジと同時に、歴史を作ったものへのリスペクトも忘れていない。日本のモータースポーツ、そしてエンジンチューニングを担ってきた第一人者の言葉は重く、熱いものだった。
バーバー・ヴィンテージ・モータースポーツミュージアムが所蔵するポップ吉村が手掛けた’60年代の耐久マシン。右の赤いマシンは18時間耐久に出場したCB72で、今年10月に開催予定のイベントで走らせるために現在レストア中。写真左のマシンもポップがチューンした耐久マシンで、18時間耐久レースにも出場。ヨシムラR&DのYouTubeチャンネルでこれらマシンの映像が見られる。
’50年代からエンジンチューニングを始めた不二雄さんの父親であるポップこと吉村秀雄さん(故人)。勘と経験だけでエンジンを凄まじい速さに仕上げる手腕から、「ゴッドハンド(神の手)」という称号で呼ばれた。
吉村社長の提言
- EWCの王座を奪回する
- エンジンはなくならないしなくさないようにしていく
- EV用のパーツにもチャレンジしていく
記事中で紹介したヨシムラR&Dの動画
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。
あなたにおすすめの関連記事
"ゼロエミッション東京"実現に向け、非ガソリン化を推進 多くのライダーが知っての通り、東京都は'50年の世界のCO2排出量実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション東京」の実現を目指し、'30年までに温室効[…]
約500万人が便利に利用している原付一種の存続を強く訴えていく 全国オートバイ協同組合連合会(以下AJ)は、日本全国の約1600社のバイクショップが加盟する都道府県単位の協同組合で組織される団体で、大[…]
MFJはレースのためだけの組織ではなくツーリングも事業内容のひとつなんです MFJはレースのための組織で、一般ライダーとは接点がないように思っている方が多いと思うが、事業案内には「ツーリング」という一[…]
高速料金問題は自民党PTの1丁目1番地。12年かかって一歩進んだと思います 2022年4月3日からスタートした“ETC二輪車定率割引”。土日祝日限定/事前に専用サイトで自分のETC機器を登録/片道10[…]
保有台数500万台のユーザーが今もいる! 4月4日に投稿した「令和5年度の課題①高速道路料金」に続く課題②としてお届けするのは、「原付」問題です。 手軽な乗り物として1980年代には年間200万台に迫[…]
最新の関連記事(ヨシムラ)
デイトナ辻本車の雄姿が現代に完全復活! 2024年の第51回東京モーターサイクルショーでヨシムラが発表した「復刻パーツ企画」がついに本格始動! このプロジェクトは「純正互換パーツ」「ヨシムラパーツ」「[…]
歴史遺産・油冷GSX-Rを完調状態で後世に バイクブーム全盛期だった1980年代から、はや40年以上。とっくに純正パーツの供給も途絶え、そのまま埋もれ去っていく当時の車両は数知れず。その一方で「愛車と[…]
HAYABUSA X-1[2000]:世界最速マシンをレーサーレプリカ化 全日本ロードレース選手権で1999年に設立されたS-NK(Xフォーミュラ)に、ヨシムラは発売されたばかりのスズキGSX1300[…]
完成車メーカー「ヨシムラ」への布石 油冷エンジンを搭載するGSX-R750の開発に深く関わり、デビューイヤーの1985年から3年連続で全日本TT-F1クラスでチャンピオンを獲得したヨシムラ。すでにレー[…]
当時を思わせながらも高次元のチューニング ◆TESTER/丸山 浩:ご存知ヤングマシンのメインテスター。ヨシムラの技術力がフルに注がれた空冷4発の完成度にホレボレ。「この味、若い子にも経験してほしい![…]
人気記事ランキング(全体)
念願のWYVERNシリーズ最新作の登場だ! ついに復活を遂げて、新発売となったSHOEI「ワイバーンØ」。歴代ワイバーンシリーズを愛用してきた筆者としては、どんな進化を遂げたのが期待しかない。そこで、[…]
コンパクトで取り付けが簡単なスマートモニター タナックス(TANAX)の「スマートライドモニター AIO‑5 Play (SRS‑015)」は、本体サイズ78.8(H)×136.2(W)×26.8(D[…]
様々な日本の峠を網羅! ワインディングロードを抜け、視界いっぱいに広がる紅葉の絶景を走り抜ける。そんな瞬間こそ、秋のツーリングの醍醐味のひとつではないでしょうか。 ここで紹介する書籍「全国2954峠を[…]
ライダー本人のサイン入り限定ヘルメットも附属 ホンダUKが発表した「CBR1000RR-RファイアーブレードSP ディーン・ハリソン レプリカ」は、2025年のマン島TT・スーパーストッククラスでディ[…]
1,000ドルを謳い文句に全米で大ヒット! カワサキは1972年のZ1以来、Z650RSにZ750TWINと念願だったビッグバイクの領域で世界のリーダーへと君臨することに成功。 またそのいっぽうで、ホ[…]
最新の投稿記事(全体)
「MOUNT SYSTEM Second」 10月22日(水)発売 「MOUNT SYSTEM Second」は、力強さと美しさを両立させた新デザインの「model 01 ETHEREAL[…]
奈良県からスタート! 北海道から九州まで全国で増加中の「カブの駅」 突然ですが、皆さん、『カブの駅』ってご存知ですか?現在、1200カ所以上登録されている『道の駅』はツーリングの集合場所や休憩スポット[…]
8月後半から9月末の日本GP、10月の全日本へ怒涛のレースシーズン アッという間に10月も半ばが過ぎてしまいました。全日本ロードレース選手権を中心に取材活動をしているボクにとっては、8月23日・24日[…]
過激な初代からフレンドリーな後継モデルへ カワサキのビッグバイクと言えば、優れた資質を備える初期型をベースにして、2代目以降で徐々に動力性能を高めていくのが通例だ。だがマッハシリーズの場合は、初期型が[…]
ヤマハ・ハンドリングのこだわりを400レプリカ路線へ融合! 1980年にRZ250をリリース、レプリカの時代に先鞭をつけたヤマハも、4ストのスポーツバイクXJ400系ではツーリングユースを前提とした、[…]