ホンダは去る3月29日、既製の自転車を電動アシスト化&コネクテッド化する新サービス「スマチャリ(SmaChari)」を発表。その搭載第1号となるクロスバイクが、4月15~16日に開催された日本最大のスポーツサイクルイベント「サイクルモードTOKYO 2023」に早くも展示され、ローラー台による試乗も行われた。ブースには既製のグラベルバイクや折り畳み式小径車、ロードバイクをスマチャリ化したモデルも参考出品。9月の発売に向けて着々と進行しているプロジェクトの内容をお伝えしよう。
●文:ヤングマシン編集部(大屋雄一) ●写真:大屋雄一 ●外部リンク:スマチャリ公式サイト
パスを創造したヤマハとは異なる路線で自転車ライフを豊かに
1993年、ヤマハは世界新商品として電動アシスト自転車の「パス(PAS)」を発売。今年は記念すべき30周年にあたり、限定モデルをリリースしたり、購入キャンペーンを実施するなど、さまざまな企画を催している。
実はホンダも、ヤマハ・パスに遅れること2年後の1995年に、独自開発の電動アシスト自転車「ラクーン(RACOON)」をリリースしている。後発となるホンダは、全国にラクーン専門取扱店を設けるなど大々的な攻勢をかけたが、この電アシ版HY戦争はヤマハの圧勝をもって終結している。
今回発表されたスマチャリは、こうした歴史的背景もあり、ホンダが完成車を用意するのではなく、後付けの電動アシストユニットおよびコネクテッドプラットフォームのみを開発し、それをアセンブルした自転車をサイクルショップが販売するという方式を採る。
ところで何が新しいの? コネクテッド化によるメリットは?
日本では、電動アシスト自転車と言えばママチャリタイプがまだまだ主流だが、欧米ではMTBやロードバイクなどスポーツタイプが圧倒的に売れており、e-バイクという名称で市場が成熟している。そのため、スマチャリのような後付けタイプの電動アシストユニットも豊富にあり、これ自体は決して珍しくないのだ。また、スマホとの連携機能についても、大手自転車ブランドであれば専用アプリを用意しており、速度や走行距離、消費カロリーだけでなく、二酸化炭素排出量をどれだけ削減できたのかすら知ることができる。
果たしてこのスマチャリ、いったい何が新しいのだろうか。まず電動アシストユニットについて説明すると、日本交通管理技術協会から型式認定制度にも対応した技術であるとお墨付きを得ていることだ。電動アシストに関する法律は国によって大きく異なり、日本よりもEUやアメリカの方がアシストできる速度域が広い。そして、そうした海外市場向けのユニットが大手通販サイトで販売されている現状を踏まえると、日本で初めて国内法規に準拠した後付けユニットである点は画期的と言えるだろう。
次に、スマホとの連携機能やコネクテッド化については、オンラインアカウントで自転車の所有者情報を管理したり、NFCタグを利用してスマホをシステム起動のワンタッチキーとしている点が新しいだろう。また、ホンダ4輪車から集められる注意ポイント(急ブレーキ地点など)をマップ上に表示して注意喚起を促すだけでなく、将来的にはスマチャリユーザーのデータも加える予定など、自転車事故の低減にも注力している点はホンダならではと言える。
アシストユニットは、ギヤクランクにモーターの力を伝えるクランク合力タイプ。クランク軸を支えるボトムブラケットが一般的な規格(JISなど)であれば、たいていの自転車に取り付け可能という。ちなみにクランク合力ユニットの主力メーカーはボッシュ、シマノ、ヤマハ、バーファンなどで、スマチャリはそうしたサプライヤーの製品を使用しているとのことだ。出力は250Wで、重量は約3kg。
アシストパワーとレスポンスが4段階に調整可、AIモードが秀逸だ
サイクルモードTOKYOのホンダ×ワイズロードのブースでは、スマチャリ搭載第1号車をローラー台で試すことができた。アシスト設定はスマホのアプリから行い、パワーとレスポンスをそれぞれ4段階から選択できる。急発進抑制をオンにすると、レスポンスをレベル4にしてもアシストの立ち上がりが優しく、これならどんなシーンでも慌てることはないだろう。また、AIモードをオンにすると、ユーザーの走行特性に応じてパワーとレスポンスが自動的に切り替わり、画面を見ているとクランク1回転の間でもレベル1~4まで細かく変化することが分かる。それでいてアシストの変化はシームレスであり、全く違和感がない。
アシストユニットとバッテリーはそれらを得意とするサプライヤー製だが、制御に関してはホンダがプログラミングしており、その完成度は非常に高いことを実感できた。なお、スマチャリ搭載第1号車を販売するワイ・インターナショナルでは、段階的に車種を増やす予定とのことで、ブースには3台の参考出品車が展示されていた。汎用性の高い電動アシストユニットだけに、今後の展開が非常に楽しみだ。
※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
プロテクター対応や肘・肩パッドの装備で“バイク用”本格化へ ワークウエア/ギアの人気メーカーで、リーズナブルな価格と機能性の高さを両立するモノ作りを他ジャンルに持ち込んで勢いの止まらないワークマン。バ[…]
【〇】ホンダセンシングが安全運転をサポート 2018年7月の発売以来、販売計画を5倍近く(2018年11月現在)上回る勢いで売れているホンダのN-VAN。先月号でCBR1000RRやCB1300SFな[…]
独自開発素材の横展開が加速! 透湿防水生地のテントも登場 作業服メーカーのワークマンが、キャンプギアの本格展開をスタートしたのは昨年2月のこと。テントやタープなど主力となる大型商品は、WEB注文後に実[…]
スコマディ テクニカ125:キャブのような加速感。操安性はクイックだ ランブレッタの修復やカスタマイズを専門とするイギリスのスクーターイノベーション社が、同じくスクーターのレーサー化を得意とするPMチ[…]
最新の関連記事(ホンダ [HONDA])
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
1位:ホンダ新型「CB1000」8月時点最新情報まとめ ホンダがCB1000ホーネットをベースに、CB1300の後継機として開発を進めているというウワサの新型CB1000。その8月時点のスクープ情報ま[…]
大型二輪免許は18歳から取得可能! バイクの免許は原付(~50cc)、小型限定普通二輪(~125cc)、普通二輪(~400cc)、大型二輪(排気量無制限)があり、原付以外には“AT限定”免許も存在する[…]
しっかりとした防寒対策をすれば冬ならではの魅力が楽しめる! じっとしているだけでも寒い季節…さらに走行風を浴びるバイクって何が楽しいの? と思われる方も多いかもしれません。たしかに寒さの感じ方は、人そ[…]
6速MT仕様に加えEクラッチ仕様を設定、SエディションはEクラッチ仕様のみに 2017年4月に発売され、翌年から2024年まで7年連続で軽二輪クラスの販売台数で断トツの1位を記録し続けているレブル25[…]
最新の関連記事(自転車)
クルマと比べると遅れはあるものの、徐々に電動マシンも姿を現してきているバイク市場。ですが、同じ2輪でも、電動化がクルマよりもはるかに進んでいる領域があります。それが電動アシスト自転車。 2022年の電[…]
ヤマハYPJ-MTプロ 概要 [◯] オフロードを駆け抜けるアシストならではの快感 最初に、電動アシストどころか自転車に乗ること自体が久々だったことを白状しておこう。今回試乗したモデルはヤマハのハイエ[…]
電動アシスト自転車×2機種、フル電動自転車×1機種をラインナップ カワサキは、新種の電動3輪ビークル「ノスリス」シリーズを順次発売する。2021年にはクラウドファンディングで電動アシスト自転車版とフル[…]
この4月1日から自転車に乗る際のヘルメット着用が努力義務化され、もうすぐ1カ月が経ちますが、ヘルメット購入はまだこれからという方も少なくないのでは? 一見、帽子と見分けが付かないようなカジュアルなモデ[…]
人気記事ランキング(全体)
アッパーカウルはフランスで882.5ユーロ 1980年代のGSX1100S KATANAをモチーフにしたスペシャルモデルを製作することは、S2コンセプトのスタッフが何年も温めていたアイデアだった。それ[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
ライトグレーのボディにライトブルーのホイールが新鮮! ヤマハが「MT-25」の2025年モデルをインドネシアで世界初公開した。欧州で発表済みの兄弟モデル・MT-03に準じたモデルチェンジ内容で、現地価[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
欧州&北米で昨秋登場した新型YZF-R3の250cc版 ヤマハはインドネシアで新型「YZF-R25」を発表した。2024年10月に欧州&北米で登場した新型YZF-R3と同様のモデルチェンジ内容とした2[…]
最新の投稿記事(全体)
レーシングマシン「R90S」を彷彿とさせるシルエットとオレンジカラー BMWは、BMWモトラッドのヘリテイジカフェレーサー「BMW R12S」を国内200台限定で発売すると発表。1月22日より200台[…]
126~250ccスクーターは16歳から取得可能な“AT限定普通二輪免許”で運転できる 250ccクラス(軽二輪)のスクーターを運転できるのは「AT限定普通二輪免許」もしくは「普通二輪免許」以上だ。 […]
先日、バイク好きな友人と車でドライブしているときに(私は助手席だけれど…)ライダー同士がすれ違う際に、ピースをしあっている光景を見た。なんだか楽しそうなことしてるなーと思い、「あれって、車に乗ってる俺[…]
スパナプライヤー:刻みのないジョーが平行にスライド。スパナのように使えるプライヤー ストレートのスパナプライヤーは、細部の形状や仕上げは異なるものの、ヒンジの仕組みや特徴はクニペックスのプライヤーレン[…]
ハイパワーだけでなく、本来持つテイスティさを損なわず、より“らしさ”を強調するストロークアップ エンジンを強化する際、排気量アップが効果的なのはたやすくイメージできるだろう。ハーレーダビッドソンはエボ[…]
- 1
- 2