
衝撃のワールドプレミアを飾ったカワサキの「エリミネーター/SE」。速報に続き、大阪モーターサイクルショー現地で得た独自ネタ満載の詳報をお届けしよう。今回はモデルコンセプトをはじめ、スタイル、エンジン&車体、ライポジ&足着きなどを中心に解説していく。
●文:ヤングマシン編集部(沼尾宏明) ●写真:藤村のぞみ、編集部 ●外部リンク:カワサキモータースジャパン
概要:「心高揚させるもの」を狙った走り、それゆえの400
ロング&ローフォルムを体現しながら、痛快な走りも兼備したブランニューの「エリミネーター/SE」。ニンジャ400ベースの398cc並列2気筒を搭載し、現行400ccクラス唯一のクルーザーとなる。
モデルコンセプトは「心高揚させるもの」。水平基調の優美なスタイルはもちろん、48psのハイパワー、176kg(SEは178kg)の軽さでエキサイティングな走りも体現するという。
それにしても、なぜ250ではなく400なのか。穿った見方をすると……「5年連続ベストセラーであるレブル250とのガチンコ対決を避け、ライバル不在の400ccクラスで新規ユーザーを開拓するためでは」と思えてしまうが、実は少し違う。
関係者筋によると、400ccを選択したのは「走りを重視した結果」という。街乗りでの加速性能や、高速道路でのツーリングを考えた際、当然250より400の方がパワフル。「心高揚させるもの」というコンセプトを実現するためには、余裕のある走りが不可欠だったというわけだ。
また、将来的にグローバル展開する予定があることも400を選択した理由。国内市場を重視しながら、先進国に展開することを考えた場合、ある程度、大排気量の方が需要は高いと判断したのだろう。
そして「エリミネーター」の車名に関しても、日本で知名度が高く、国内市場を考慮した結果の命名だったという。
直訳すれば「排除する者」だが、自由気ままに退屈な日常を排除する、といった意味が込められている。
スタイル:モダンさと男臭さの競演、多様なライダーに寄り添う
デザインで目指したのは、「迫力と所有感」(関係者筋)だ。
まず何と言っても特徴的なのは、初代エリミネーターと同様の水平基調ライン。上下方向に薄い燃料タンクと、ヘッドパイプからテールにかけての水平ラインがシームレスにつながる。これにローシートが加わり、流麗なロング&ローフォルムを構築している。
さらに凝縮感のあるエンジン周辺と、丸1眼ヘッドライト、リヤツインショックからはいかにもバイクらしい男臭さが漂う。その一方で灯火類をフルLED化するなど全体を現代的に洗練。クールさと重厚感、高い質感が感じられる。
往年のファンにとっては、各部に施される初代エリミネーターの意匠にニヤリとさせられる。丸型ミラーや曲線を描くテールカウル、横長のテールランプは、まさに初代エリミのオマージュ。そしてSEは、往年のエリミを色濃く意識した新設計ビキニカウルを導入。特許申請済みの独特なマウント方法でミニマム化を実現しており、フロントビューはまさに初代エリミの面影がある。
新世代エリミは、若者もオジサンライダーも魅了し、多様なライフスタイルに似合うデザインとしているのだ。
エンジン&車体:加速性能を増した心臓と専用の軽量フレームを融合
エンジンは、鋭い低中速トルクと高回転パワーに定評あるニンジャ400のダウンドラフト並列2気筒を搭載。セッティングや内部パーツなどを含めて基本的にニンジャと同じで、6速ミッションやスリッパークラッチなどの装備も踏襲している。
ただし、二次減速比を2Tショート寄りにし、より加速性能を向上。ドラッガーだった旧エリミらしいダッシュに期待できるだろう。
フレームは専用設計で、カワサキお得意の高張力鋼トレリス構造だ。1520mmのロングホイールベースと低いシート高を実現しつつ、ジオメトリーを最適化した。
中でも重視したのは軽さ。従来の旗艦ニンジャH2を皮切りに、ニンジャ400/250などに採用したスイングアームプレートマウントを採用。エンジンをストレスメンバーとして利用することで、軽さと適度な剛性を確保した。
さらに足回りも充実。フロントは大径φ41mmカートリッジフォークに、リッタークラスと同等の大径φ310mmセミフローティングディスクを組み合わせる。ホイールは前18&後16インチという珍しい組み合わせだが、迫力ある外観と走りの軽快さを狙ったものだ。
低く長いスタイルを実現するため、フレームを新設計。ニンジャH2を筆頭にニンジャ250/400らに採用された鋼管トレリスフレームの軽量化技術で、最適な剛性と軽さを両立。さらにキャスター30°/トレール121mmなどのディメンジョンで軽快かつ自然なハンドリングを狙った。 [写真タップで拡大]
’18で登場した現行ニンジャ400のパラツインを踏襲。高回転域で吸気効率に優れるダウンドラフトインテークのほか、φ32mm大径スロットルバルブ、アルミダイキャスト製オープンデッキシリンダーなどを受け継ぐ。熱気が感じにくいラジエターはカバーが新作だ。 [写真タップで拡大]
旧エリミ400のF18&R15インチ、レブルの前後16インチに対し、新型エリミは独自設定のF18&R16で軽やかなハンドリングを狙う。サス設定は自然さを重視。キャリパーは前後ともニッシン製2ポッドだ。 [写真タップで拡大]
走行性能+ライポジ:見た目に反して軽快、ライポジは実に自然だ
関係者筋によると、エリミネーターは「引き起こしが驚くほど軽い」とのこと。そして走り出せば「重厚なフォルムながらハンドリングは軽快かつ扱いやすい」という。
またエンジンはニンジャ400と同一ながら、乗り味は別物。加速性能をアップしたことに加え、ライポジも影響している。軽く前傾するニンジャに対し、エリミは上体が起きるため、体感的にも加速「感」が強調されているという。
ライディングポジションは、かなりネイキッド寄りだ。ネイキッドより上体が起きるものの、ステップ位置がやや手前で車体を操りやすい。リラックスした姿勢ながら、従来のバルカンのようなクルーザーとは異なり、スポーツモデルに近い設定だ。
さらにシート高はカワサキの250~500ccモデルで最も低い735mmとしている。
大阪MCショー会場には跨り可能な車両が1台あったので、さっそくトライしてみた。上体は直立気味で手を伸ばした自然な位置にグリップがある。ヒザの曲がりも適切で、しっかり下半身でホールドできる。確かにクルーザーと言うよりはネイキッドに近いライポジだ。
そして足着き性は優秀。車体がスリムな上に、シート前部が絞られ、サイドカバーの太ももにあたる位置がエグれており、両足がベッタリ接地してなお余裕があった。
<詳報②では日本車初の標準装備ドラレコなどディティールをお届けする!>
KAWASAKI ELIMINATOR / SE[2023 model]
車名 | ELIMINATOR | ELIMINATOR SE |
型式 | 8BL-EL400A | ← |
全長×全幅×全高 | 2250×785×1100mm | 2250×785×1140mm |
軸距 | 1520mm | ← |
最低地上高 | 150mm | ← |
シート高 | 735mm | ← |
キャスター/トレール | 30°/121mm | ← |
装備重量 | 176kg | 178kg |
エンジン型式 | 水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ | ← |
総排気量 | 398cc | ← |
内径×行程 | 70.0×51.8mm | ← |
圧縮比 | 11.5:1 | ← |
最高出力 | 48ps/10000rpm | ← |
最大トルク | 3.8kg-m/8000rpm | ← |
変速機 | 常時噛合式6段リターン | ← |
燃料タンク容量 | 12L | ← |
WMTCモード燃費 | 25.7km/L(クラス3-2、1名乗車時) | ← |
タイヤサイズ前 | 130/70-18 | ← |
タイヤサイズ後 | 150/80-16 | ← |
ブレーキ前 | φ310mmディスク+2ポットキャリパー | ← |
ブレーキ後 | φ240mmディスク+2ポットキャリパー | ← |
乗車定員 | 2名 | ← |
価格 | 75万9000円 | 85万8000円 |
発売日 | 未発表 | ← |
※本記事の文責は当該執筆者(もしくはメディア)に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
あなたにおすすめの関連記事
これぞヤマハのヘリテイジ=未来に残すべき遺産を有効活用したカスタム! ヤマハが大阪モーターサイクルショーに展示したXSR900カスタムが多くの来場者の目を引いている。スタンダードの黒にビキニカウルを組[…]
価格やスペックは未発表なれど、実車公開に大興奮! ホンダが誇るベストセラー、CB400スーパーフォア/スーパーボルドールが生産終了となったのは2022年10月。これを残念がる声はとても多かったが、それ[…]
キャンディエナジーオレンジ、パールヒマラヤズホワイト、パールデカットグレー! タンクパッドが貼り付けられた容量12Lのアイコニックな燃料タンク、アップライトかつワイドなハンドルバー、そして前19/後1[…]
ヤマハが本気になった! グローバルモデルの小排気量スポーツバイクが日本へ上陸 ヤマハは、「第39回 大阪モーターサイクルショー2023」、「第50回 東京モーターサイクルショー」、「第2回 名古屋モー[…]
最新の関連記事(エリミネーター/SE)
最速機の心臓を積む直4ドラッガー〈エリミネーター900/750/ZL1000〉 初代エリミネーターの登場は’85年。ドラッグレーサールックの車体に、前年に登場した世界最速機 GPZ900Rの水冷直4を[…]
’23-’24 世界の新車大図鑑[日本車編] 世は令和の時代に巻き起こったバイクブームの真っ只中。気になるバイク、あのバイク、今年は昨年よりも新車の数が増大しています。そこで2023年の下半期シーズン[…]
これはクルーザーじゃない?! 扱いやすさを基本とした“ネイキッド”の復活 扱いやすい低回転域と伸びやかな高回転域の二面性が楽しい並列2気筒エンジン、178kgの車重を感じさせない軽快かつ自由自在なハン[…]
5年連続ベストセラーに充実のパッケージで挑む〈エリミネーター VS レブル250〉 250クラスのクルーザーでは’17年の登場以来、5年連続でホンダのレブル250がベストセラー街道をバク進している。ま[…]
加速性能を増した心臓と専用の軽量フレームを融合〈カワサキ エリミネーター 車体解説〉 エリミネーターのエンジンは、鋭い低中速トルクと高回転パワーに定評あるニンジャ400のダウンドラフト並列2気筒を搭載[…]
最新の関連記事(カワサキ [KAWASAKI])
電動アシスト自転車×2機種、フル電動自転車×1機種をラインナップ カワサキは、新種の電動3輪ビークル「ノスリス」シリーズを順次発売する。2021年にはクラウドファンディングで電動アシスト自転車版とフル[…]
最速機の心臓を積む直4ドラッガー〈エリミネーター900/750/ZL1000〉 初代エリミネーターの登場は’85年。ドラッグレーサールックの車体に、前年に登場した世界最速機 GPZ900Rの水冷直4を[…]
マーヴェリック号、最大の特徴! 外装ステッカーには どんな意味が? ※映画用のステッカーのため、実在の部隊章とは異なる場合があります。 まずは燃料タンク右側から! 次は燃料タンクの左側! 燃料タンクの[…]
現行モデルよりもシャープなデザインに? 新型ZX-6Rのヘッドライトと思われるデザインが明らかになった! 日本国特許庁が令和5年4月に公開した意匠登録は、『自動二輪車用前照灯』と書かれており、それだけ[…]
“Ninja”の伝説はここから始まった 滑走路で戦闘機と加速競争する姿、美人教官とのタンデム、苦悩を抱えて丘の上に佇む夕暮れ──。数々の印象的なシーンに初代ニンジャ=GPZ900Rがいた。 ’86年に[…]
人気記事ランキング(全体)
’80年代、80ccであることのメリットに、金欠ライダーは着目した 高校生が自動二輪中型免許(当時)を取ったはいいけれど、愛車をすぐ手に入れられるかは別問題。資金の問題が立ちはだかるのだ。2年ごとの車[…]
WEBで検索すると洗車の裏技と称するものが色々と出てきます。 「カーシャンプーの代わりに○○を使おう」「こんな汚れには○○が効く」など、身の回りのものを使ったお手軽な洗車指南記事が溢れています。しかし[…]
世界最速機としてデビュー、特に日本で人気絶大だった 空冷直4のZ1系に代わる次世代の旗艦として、カワサキが総力を結集したマシンこそGPZ900Rだ。 同社初のDOHC4バルブ水冷直4とダイヤモンドフレ[…]
少し前にアストンの実勢価格8800円のフルフェイスヘルメットをご紹介しました。 海外から安価なヘルメットが入ってくるようになり選択肢が広がったのは良い事だと思っています。 筆者ががバイクの免許を取得し[…]
ライトは8Sを転用?! カウルはハーフかフルか 新開発の775cc並列2気筒エンジンを搭載し、3つのモード切替でビギナーからベテランまで幅広く対応する走りを実現した、スズキ入魂の新作ミドルネイキッド・[…]
最新の投稿記事(全体)
頑張ってね、オトーサン! ●我家はごく平凡な4人家族です。自分は、オートバイに跨って生まれ出たと思い込んでるような亭主1人と、良くも悪くもそんな父親の影響を受けて育ちつつある男児2人、そんな3人を持て[…]
現在、日本を含む多くの国で“2050年カーボンニュートラル達成”という目標が掲げられており、活動の一助として、走行時に二酸化炭素を排出しない電気自動車の普及が世界的に進んでいます。2輪業界もその影響を[…]
時代とブームを象徴する3台が上位ゲット ネイキッドブームが最盛期を迎えた’90年代。このブームを代表し、現代まで続くロングセラーとなったCB400SFが見事1位に輝いた。また’90年代後半は最高速競争[…]
オーストラリアから復元プロジェクトのため空輸 このバイクは、1970年代にチームスズキに加入し、バリー・シーンのメカニックも務めたMartyn Ogborne氏によってレストアされた。ちなみにOgbo[…]
アライヘルメット アストロGX ロック アライヘルメット RX-7Xオグラ ヨシムラジャパン CT125(20-22/23)機械曲Tacticalサイクロン 政府認証 フリュガン ジェットD3O 青島[…]
- 1
- 2