人気のカワサキZ900RSが、’23モデルで令和2年度排出ガス規制に対応するモデルチェンジを実施。一見すると外観はまったく同じようだが、実はマフラー形状がしっかり変わっている。そして気になる走りはどうなのか? 新旧モデルをヤングマシンメインテスター丸山浩が徹底チェックだ!
●文:ヤングマシン編集部(宮田健一) ●写真:長谷川徹 ●外部リンク:カワサキ
【テスター:丸山浩】ヤングマシンメインテスターにしてYouTubeチャンネルの「MOTOR STATION TV」でも精力的に情報発信中の丸山浩が、新旧Zを初比較!
’23 カワサキ Z900RS:外見的な違いはマフラー前半の形状のみ
’23モデルでユーロ5相当の令和2年度排出ガス規制に対応したというカワサキZ900RS。新しくなったというが、外観を一見したところではさっぱり分からない。比較対象に持ってきた火の玉カラーの’22Z50周年記念車とは、車体色が違うくらい?
…って、’23モデルは車体色も’22STDと同じじゃないか。では、どこが…? とマフラーをよく見てみると、集合部から触媒にかけてが大きくなって変わっている。世間的には排ガス規制のために触媒をより詰まったものにすると、よく「牙を抜かれた」なんて言われてしまうが、はたしてその走りは? それではテストに行ってこよう。
’23 カワサキ Z900RS:残念な規制対応にはならず! 音もパワー感も初期型超え
パッと走ってみた感じでは、「牙を抜かれた」感はない。むしろ良くなっているとさえ思える部分のある仕上がりだ。さすが売れているマシン、単に排ガス規制に対応したというわけではなく、しっかり予算をかけることができたんじゃないかなというのが率直な印象。きちっとECUを見直し、スロットルセンサーおよびO2センサーの精度を向上させるなどして、これまで以上に走りを良くしようという方向のセッティングがなされているのが分かる。
乗り出しから、まず音が違う。普通は規制対応すると音を小さくされてしまいそうだが、そんなことはまったくない。Z900RSは、もともとなんでノーマルなのにこんないい音がするのと思うくらいだった。アクセルを煽ったときに結構迫力ある4気筒サウンドがして素晴らしかったのだが、今回の新しいマフラーは、もうちょっと野太くて歯切れのいい感じに変化。これこそが求めていた音といった感じで十分に楽しませてくれるはずだ。
’23 カワサキ Z900RS:エンジン特性がよりスムーズに、コーナリングが気持ちいい!
ワインディングを走ってみると、やっぱりここでも向上している部分が感じ取れた。旧モデルとはコーナリングにおけるドライバビリティがより正確なものへと進化している。
旧モデルではコーナーに入っていって、さあ立ち上がろうとスロットルを開け始めたとき(Z900RSは中間トルクが分厚いのが魅力ではあるのだけど)ちょっとツキが良すぎる傾向があった。これが解消されていたのだ。具体的には旧モデルではコーナリング中にたまにドンと来て走行ラインが「あ、ズレた」という感じで一瞬外側に逸れてしまうことがあり、それを気にならないようにするには、丁寧にスロットルを開け締めする必要があったのだ。
その点、新型だと開け始めのツキが結構スムーズなものになっていた。スロットル操作にシビアにならなくてもラインを外さなくて良くなるようになるので、コーナリングがすこぶる気持ちいい。
そうは言っても、スロットルに神経を使うのはホントに開け始めのごくわずかな部分。多くの人は何も言われないと気付かないかも。しかし、念入りに乗り比べてみると気付く人は気付くはず。スロットル開度が0から100まであるとすると、最初の開け始めで0から1に行くのが旧モデルとすれば、0→0.2→0.4→0.6といった感じでキメ細かくなったのが新モデルだ。
細かく言うと回転数でも違っている。4000rpm以下だと変化は分かりづらいかもしれないが、5000→6000rpm→それ以上とだんだんレスポンスが良くなっていくところ、要はコーナーを速く走るため高い回転数で立ち上がろうとしたときにドンと来やすいのが旧モデル。一方、6000rpmからでもジワっとついてきて走りやすいのが新モデルだ。
’23 カワサキ Z900RS:レブリミッター調整も嬉しい。制御面が確実に進化だ
さらに乗り比べていくと、回転数の上の方での制御も変化しているのが分かった。例えばオーバーレブ特性。新旧どちらもレッドゾーンは1万rpmからだが、そこを超えた部分が違っている。
旧モデルでは1万rpmを超えてもそのままの雰囲気で回り続け、1万500rpmまで行ったところでレブリミッターが入りバババッと急に失速する感じとなっていた。そこまで回す前にシフトアップすればいい話だが、その気になって攻めているとメーターもつい見落としがち。シフトタイミングを見誤ってのいきなり失速は、せっかくコーナーを攻めているのに残念と言えば残念だ。
そこが新モデルだと1万rpmを超えたところから緩やかなパワーダウンを見せ始めてレッドゾーンに入ったことを体感的に知らせてくれるようになっている。だからシフトタイミングを見落としにくい。しっかり回し切ったところでシフトアップさせてくれるようECU制御を煮詰めてくれたことで、より走りの実力は上がっていた。しかも、それを各ギヤごとにも綿密にセッティングされているような雰囲気まで感じさせているから流石だ。
カタログ上では最高出力/最大トルクともに新旧で同一だが、実測値では新型が上回っている場面も。レブリミットもしっかり制御されている。「牙を抜かれた」どころか全く逆なのだ。
旧モデルでも完成度の高かったZ900RS。それと比べると新モデルが新排ガス規制で足かせをはめられた雰囲気は感じられなかった。
※本記事は“ヤングマシン”が提供したものであり、文責は提供元に属します。※掲載内容は公開日時点のものであり、将来にわたってその真正性を保証するものでないこと、公開後の時間経過等に伴って内容に不備が生じる可能性があることをご了承ください。※掲載されている製品等について、当サイトがその品質等を十全に保証するものではありません。よって、その購入/利用にあたっては自己責任にてお願いします。※特別な表記がないかぎり、価格情報は税込です。
人気記事ランキング(全体)
アッパーカウルはフランスで882.5ユーロ 1980年代のGSX1100S KATANAをモチーフにしたスペシャルモデルを製作することは、S2コンセプトのスタッフが何年も温めていたアイデアだった。それ[…]
【’09VMAX開発秘話】2リッター「音魂(オトダマ)」は失敗だった 新VMAXの開発には実に十数年の歳月が費やされた。このプロジェクトを長い間推し進めてきた中心人物は開発の経緯をおよそ次のように語る[…]
ライトグレーのボディにライトブルーのホイールが新鮮! ヤマハが「MT-25」の2025年モデルをインドネシアで世界初公開した。欧州で発表済みの兄弟モデル・MT-03に準じたモデルチェンジ内容で、現地価[…]
従来は縦2連だったメーターが横2連配置に ヤマハは、2004年に欧州で誕生し、2017年より日本を含むアジア市場へ(250として)導入されたスポーツスクーター「XMAX」の2025年モデルを欧州および[…]
欧州&北米で昨秋登場した新型YZF-R3の250cc版 ヤマハはインドネシアで新型「YZF-R25」を発表した。2024年10月に欧州&北米で登場した新型YZF-R3と同様のモデルチェンジ内容とした2[…]
最新の記事
- 【2025年1月版】150~250cc軽二輪スクーター 国内メーカーおすすめ7選! 125ccの双子モデルからフルサイズまで
- 「やってみると気持ちがいい!」ライダー同士の楽しい挨拶「ヤエー」について調べてみた
- 「13Lしか入らないタンク」が角Zを象徴 1978年カワサキ『Z1-R』【柏 秀樹の昭和~平成 カタログ蔵出しコラム Vol.13】
- 「発売が待ち遠しい!」CB1000/750ホーネット関連記事ランキングTOP5【2025年最新版】
- 【エンジンの気筒の数でなにがちがう?】バイクの乗り味ざっくり解説[単・2・3・4・6気筒]
- 1
- 2